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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

寄生的金儲け

 三菱電機の社長辞任が大きなニュースになっています。鉄道用の空調設備とブレーキやドアに使う空気圧縮機で、検査の組織的な偽装があったと報じられています。

 1990年頃から適正検査を実施していると見せかける「専用プログラム」まで作成し、架空の検査データを自動的に作ることまでしていたというのですから、その悪質さはここに極まれりと言うところ。

 この会社は、2012年にも、ゴム部品の検査不正が明るみに出たほか、防衛装備品の調達をめぐる過大請求が発覚し、773億円を防衛省に返納した過去を持っています。(https://www.nikkei.com/article/DGXNASGD210AT_R21C12A2TJ0000/)。

 2019年には、技術開発部門の上司によるハラスメントで新入社員の自殺も発生しています(https://news.yahoo.co.jp/articles/217667fcc12a089a492b6b2c0ff394a83a7c6fb7)。

 このような不祥事が明らかになるたびに、時々の社長や幹部が3人ほど並んで、「深刻かつ重大な事案と受けとめ、コンプライアンスの強化に取り組んでまいります」と言い、深々と長い謝罪のお辞儀を記者会見でやっています。

 虐待事案を発生させた障害者支援施設の法人理事長や施設長が「猛省しています」と謝罪のお辞儀だけして、同族経営の維持に腐心したり、虐待した職員だけ辞めさせて終わりにするのと同じです。

三菱電機の社長さんともなると、年俸は2億円以上ですから、このような通り一遍の真実味のない会見の繰り返しは、いかにもしらじらしく、あほらしい限りです。

 しかし、岩崎弥太郎の時代以来、政商として国の公共事業や軍需に寄生しながら経営してきた財閥の体質だと見れば、何も不思議な点はありません。明治維新以来のわが国における近代化は、このような日本型寄生的経営にもとづく財閥企業を基軸に進められてきた一面を持つからです。

 江戸時代に鴻池善右衛門の築いた財閥を起源とする三和銀行に勤めていた友人が、三菱銀行と合併した当時、「行風のあまりの違いに、俺ついて行かれへんわ」とぼやきました。

「同じ都市銀行同士なんやから、仕事の基本は同じやろ」と私が反論すると、「あほっ、三菱の実務の進め方は、まるで大蔵省の役人のようやで。もしかしたら、大蔵省と合併したんとちゃうかと思えてくるぐらい、息苦しい」。つまり、業務の指示やコミュニケーションが上意下達の一方通行だと彼は訴えるのです。

 もちろん、戦後の企業の中には、ソニーやホンダのように独創的な技術によって一本立ちし、発展を続けてきたところもあります。が、明治からの流れを鳥瞰した場合、わが国の一群の大企業が「富国強兵」策にのって甘い汁を吸い続けてきたことは間違いのない事実です。

 戦後の公共事業に寄生してきた代表格は建設業界です。東日本大震災の復興事業に係わっても、鹿島建設の幹部が下請け企業から貢がせた金額は2億円以上だと報じられているように、枚挙に暇がありません。「根太の腐った建設会社」なんて、洒落にもなりません。

 そして今や、このような日本型寄生的経営の文化と伝統が福祉業界に着実に広まりつつあるように思えてなりません。

 先日、埼玉大学の卒業生が私の研究室をひょっこり訪ねてきました。私のゼミの卒業生ではないのですが、「今日は、宗澤先生に会いたくて来ました」と切り出し、「株式会社のグループホームを辞めてきました」と言います。

 彼の話を要約すると、次のようです。

(1)入居者には「障害者支援区分6」だけを集めてくるよう従業員に指示する。
(2)定員20名のグループホームを「区分6」だけで埋めると支援が成立しないからできるだけ部屋に閉じ込めておくようにする。
(3)日中活動の支援を実施する専門性も条件も丸でないため、事実上の「放し飼いタイム」になっている。
(4)行動障害を拡大するなどして施設設備の損壊や他の利用者とのトラブルを発生させた場合は、すぐに「利用契約書」を盾に出て行ってもらう。
(5)出て行ってもらった人は、系列の他のグループホームに空きがあればお客さんとして受け入れ、問題が起きるたびに系列の中でたらいまわしにする。
(6)このようなグループホームが行政から障害者支援事業所の認定を受け、虐待として認定されない範囲のギリギリの不適切な支援をして、どうどうと事業者報酬をもらっている。
(7)このような福祉ビジネスの経営手法が、今や社会福祉法人にも広がりつつある。

 日本企業の経営手法である民間活力の実態は、「利用者(消費者)主体の原則」や「競争によるサービスの向上」なんて最初から戯言のようなものです。できることなら「補助金に寄生して甘い汁を吸う」歴史的な経営文化が体質化しています。

 障害のある人の「自立」を言う前に、支援事業所の経営主体における「寄生的経営からの自立」を政策課題に据えるべきだと思います。

スポーツ興行のモニュメント

 わしは世界のあちこちでスポーツ金融やっとる抜歯金次郎いうもんですわ。

 今さら、わしのことを「鬼」呼ばわりするのは筋違いとちゃいまっか。1年間もの猶予をちゃんとわしはあんたらにやっとるのに、今さら興行を中止しろとか延期してくれと、寝ぼけたことを言うてもろたら困りまんな。

 わしはあんたらに、うちのスポーツ興行を「引き受けてくれ」と頼んだ覚えは一遍もありまへんで。あんたらの方から「うちに何とかやらせておくんなはれ」と手をもみ、頭下げて頼みに来たこと忘れたとでも言うんでっか。

 風の噂では、おたくらについとる興行の組が裏金ばらまいた話までありまんな。まっ、わしには関係あらしまへんけど。わしは広島に立ち寄って、禊を済ませてきますわ。

 わしは人の命より大事なスポーツ金融に、わしの命かけて生きてまんのや。損することはできまへん。約束を守るのが人の道でっしゃろ。持ち前の忍耐を美徳として、約束通りの期日にきっちり興行してもらいまっせ。