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特集③ この時期だからこそできる! 夏の勉強法

こんにちは、けあサポ編集部です。新年度を迎えたと思っていたら早4か月!夏の暑さもこれから本番を迎えます。試験勉強は進んでいますか。
夏は、まとまったお休みをとれる方、時間はあっても諸事情あって勉強に手がつかない方、お仕事一色の方など、さまざまいらっしゃいます。
そこで、日頃受験対策を指導されている講師の方から受験生の皆さんへ、この時期ならではの「夏の勉強法」を伝授します。ぜひ、これからの勉強の参考にしてみてください。


特別講座 夏休みの勉強法

 こんにちは。「けあサポ」にて、介護福祉士国家試験にチャレンジする皆さんにアドバイス等をさせていただくことになりました、岩川です。普段は九州地区の福祉系高校で教壇に立っています。
 実務経験ルートで受験をする皆さん、専門学校や大学の養成校ルートで受験をする皆さん、そして、福祉系高校ルートで受験をする皆さん、それぞれの養成ルートの違いはありますが、皆さんが1月の国家試験で全力を出すことができるようにアドバイスをお伝えできればと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

プロフィール

岩川亮太(いわかわ・りょうた)
介護福祉士、社会福祉士、高等学校教諭免許(福祉・公民)、特別支援学校教諭免許。
 鹿児島県生まれ。鹿児島県公立高等学校教諭。高校在学中に「介護福祉士」を取得。その後、地元大学で「社会福祉士」「高等学校教諭免許(福祉・公民)」「特別支援学校教諭免許」を取得する。平成19年から14年間,特別支援学校・福祉系高等学校に勤務し、令和3年度から現職。
 現在、社会人学生として大学院で学び直しにチャレンジ中。共生社会を実現するための福祉教育の在り方について研究している。

受験生としてのスタートライン

 養成校ルート、福祉系高校ルートの皆さんの多くは、夏までに介護実習を終えていらっしゃるのではないでしょうか。介護現場で多くのことを経験したことで、国家試験の問題を解きながら現場のイメージが膨らんでくるものです。現場での経験と学校での学びの最大の成果となる国家試験合格に向けて、この夏から学習のスタートを切っていきましょう。実務経験ルートの皆さんは、日常の業務に追われることも多いと思いますが、「介護福祉職」と「受験生」という“二足の草鞋”生活に入る心の準備が必要になると思います。
 既に発表の通り、介護福祉士国家試験の受験申込が始まります(令和5年8月9日(水)から9月8日(金)まで)。「受験の手引き」についても、7月上旬から取り寄せの請求ができるようになりますので、公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページ等を確認するようにしてください。
 申し込みが完了したら、「受験生としてのスタートライン」に立ったことになります。1月28日(日)までの長丁場になりますので、どのようなペースで学習を進めればよいか、スタートラインに立つタイミングで学習計画を立てるようにしましょう。

苦手科目の克服にチャレンジするタイミング

 国家試験当日まで6か月あります。この6か月を「まだ6か月ある」と判断するか「もう6か月しかない」と判断するかで、これからの行動に変化が生じると思います。国家試験が近づいてくると、「あの問題も、この問題も理解していない」と焦りが出てくるものです。そうなってしまうと、苦手科目に向き合って取り組む気持ちがなくなってしまいます。そうならないためにも、今のうちに苦手科目の克服にチャレンジしてみましょう。
 皆さんの苦手意識のある科目は何でしょうか? 私が勤務している高校の生徒は「社会の理解」と「障害の理解」があまり得意ではないようです。社会保障の各制度については、その内容を理解する前に、基本的な「保険」の考え方や、介護保険法や障害者総合支援法の成立背景・法律の目的を確認することが有意義な学習につながると思います。まだ時間の余裕がある夏の今だからこそ、制度の基本に立ち返って学習をしてほしいと思います。
 苦手科目がないという人は、過去問題集や模擬試験を解くなかで、あまり点数の取れていない科目をチェックしてみてください。問題に出てくる基本的な用語の理解はできていますか? 問題文を読み進めているうちに、理解しているつもりになっている用語があるかもしれません。基本に立ち戻って、福祉用語辞典などで用語の意味を確認するだけでも、問題を解くヒントになることがあります。いつもより時間の余裕がある夏の今こそ、基本を大切にして確かな理解を深め、苦手意識を払拭するチャンスだと言えるでしょう


夏休みの時間があるからこそできる国家試験対策もある

 「先生! 知らない外国人の名前が出題されていて、答えられませんでした」
 現在、介護福祉士として東京都内の老人ホームに勤務する教え子が、国家試験の受験会場から出てきた直後に私に言った言葉です。国家試験の冒頭に出題される科目「人間の尊厳と自立」に関する問題でした。試験開始の合図で緊張がピークに達しているタイミングで、聞いたことのない外国人の名前が目に飛び込んできて混乱したのだと思います。福祉や介護に影響を与えた人物については、中学校・高校における歴史の授業で取り扱われる人物と比べて、そう多いわけではありません。まずは過去問に出てきた人物とその功績・主張についてまとめてみるのも有効な手段だと思います。私が担当する高校の生徒には、福祉や介護に影響を与えた人物の顔写真を配布して、ノートにまとめることを夏休みの課題にする予定です。
 「人間の尊厳と自立」は、介護福祉士が、利用者の尊厳のある生活を自立の視点を大切にしながら支援を行う専門職であることから考えても重要な科目です。しかしながら、どうやって勉強すればいいのだろうと思う人も多いと思います。もちろん、国家試験の過去問題を解いていくことも重要ですが、夏休みでいつもより少し時間的な余裕があるという方は、お住いの近くにある書店や図書館に足を運んで、人の尊厳や自立に関する書籍に手を伸ばして読んでみることをおすすめします。生活者である利用者の方の人権や自立の概念がどのような歴史的な背景、福祉実践の中で発展していったのか、現代的な課題は何かなどの考えを深めることが国家試験対策の一つになるかもしれないと考えています。
 私はこの夏、貧困のメカニズムを研究し、「潜在能力(ケイパビリティ)」の概念を提唱したインドの経済学者アマルティア・センの本を読み進めようと思っています。

「介護福祉士」になった自分を想像してみる

 国家試験の申し込みが済んだら、受験生です。まだ焦りがないという方もいらっしゃると思いますが、国家試験に向けて必死に勉強している自分、国家試験当日の緊張している自分、国家試験合格発表当日に自分の受験番号を見つける自分、「介護福祉士」として利用者の方の前に立つ自分。そんな自分を想像してみてください。きっと、今取り組むべきことが見えてくると思います。