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イラストでわかりやすい ベッドと車いす間の移乗介助

ベッドと車いす間を持ち上げないで移乗するコツ

移乗介助をするとき、つい力任せに利用者を持ち上げてしまっていませんか。
そうした介助は、利用者に恐怖感を与えるとともに、利用者・介護者双方の身体に負担がかかってしまいます。

おはよう21 2023年4月増刊号(イラストでやさしく理解する介護技術のキホン これだけは押さえたいポイント100)、お互いの身体の負担を減らす「持ち上げない移乗介助」を行うためのポイントをご紹介します。

【監修】

小野寺祐

介護福祉士、介護教員。第10 回、第12 回オールジャパンケアコンクール審査員。2002年、社会福祉法人中心会・中心荘第一老人ホームで勤務を始め、通所介護、養護老人ホーム、介護老人保健施設を経て、2016 年より地域密着型通所介護で介護に従事。2013年からフリーランスとして介護職員初任者研修・実務者研修講師、介護技能実習評価試験の試験評価者、介護事業所や介護施設への介護技術研修講師として活動中。

Point1 利用者は、浅く腰かけているか

ベッドと車いす間の移乗を介助するときは、まず利用者の座っている位置を確認しましょう。
もし深く座っているときは、声かけして浅く座り直してもらうか、介助して浅く座ってもらうようにしましょう

浅く座ることで、立ち上がりやすくなり、移乗しやすくなります。
ただし、浅く座ると座位が不安定になる場合など、利用者の状態や環境によっては深く座った状態から移乗する方がよいときもあります。
介助を始める前に、利用者の状態や環境を確認しましょう。

Point2 利用者のあごは引けているか

利用者のあごが引けているかどうかを確認します。
自分であごを引ける方であれば、声かけをしてあごを引いてもらいましょう

自分であごを引けない利用者に対しては介助します。
ポイントは、
①利用者がリラックスできるように声かけをしてから行う
②肩甲骨が外転している
③両腕が足の上にある

です。

また、介護者が急に触れたり、動かしたりすると、利用者は筋緊張を起こしてしまうので、注意が必要です。

Point3 利用者は、前かがみの姿勢になっているか

大切なポイントは、利用者に前かがみの姿勢をとってもらうことです。
前かがみになっていない状態では、無理に引っ張り上げる介助になってしまいます(図右)。

立ち上がるためには、前にかがんで、重心をゆっくり移動させることが必要です。
前かがみの姿勢をとるためには、利用者の腕が前方斜め下にある必要があります。
利用者が前にかがんだときに腕も下がっているか確認しましょう(図左)。

Point4 利用者の膝が折れていないか

移乗介助を行う途中で、膝が折れてしまうと、利用者は転倒する不安を感じてしまいます。

膝が折れないようにするためには、
①膝がつま先よりも前方に出すぎていないか
②利用者に膝関節を伸ばす力があるか
③介護者が膝を保護できているか

を確認することが大切です。

移乗介助では、介護者は利用者を前方に動かし、重心を支持基底面にのせるようにするため、膝が折れると移乗が難しくなります。
膝折れを防ぐ方法としては、両側の膝をはさむ方法(図右や、手を使って膝が折れないように支える方法(図左もあります。

Point5 介護者は手のひら全体で、利用者の大きな骨(骨盤や肩甲骨)を支えているか

移乗介助の際には、肩甲骨(図左)や骨盤(図右)等の大きな骨の部分を支えるようにします。

それによって、利用者の転倒やふらつきを防ぐことができ、介護者の負担も減ります。

このとき、つかんだり、握ったりするのではなく、手のひら全体で支えるようにしましょう。それによって、内出血やけがを防ぐことができます。

Point6 介護者は、できる限り前かがみにならずに介助を行っているか

前かがみの姿勢を続けると、腰痛の原因になります。
介護者はできるだけ前かがみになるのを避けながら介助しましょう。

そのために介護者が注意するポイントは、
①自分から利用者に近づくのではなく、利用者が動きやすい姿勢(前かがみ)をつくる、
②頭を上げる(頭を下げると肩が下がり、前かがみ姿勢になるため)、
③できるだけ前にかがまないように姿勢を保つ

です。

介護者が利用者に近づきすぎて、前にかがんでしまったときは(図左)、介護者がいす等に座る等して(図右)、身体をまっすぐにした姿勢に戻すようにします。

Point7 利用者の膝より頭部が前方に出て、お尻が浮くようにしているか

身体を密着させた後は、負担をかけないために利用者の肩甲骨を支え、頭を下げていき、骨
盤を水平に前方に動かしていきます。

頭とお尻がシーソーの両端で足が支点になっているとイメージしてください。
頭が下がりお尻が浮くことで、動きやすくなります。

Point8 介護者と利用者の身体は、密着しているか

ボディメカニクスの原則に、「重心はできるだけ近づける」という項目があります。
みなさんも重い荷物を持つときは、そのものを身体に近づけていると思います。
利用者を移乗する際に負担を軽減するためには、介護者と利用者の重心を近づける必要があります。

このとき、利用者が動きづらくならないように、注意しましょう。

Point9 介護者の重心移動によって、利用者を動かしているか

介護者の重心移動で介助を行うと、利用者、介護者双方の負担を少なくすることがで
きます。

重心移動のポイントは、
①利用者と密着していること(図右)、
②右足、左足と重心を移し替えること(図右図左)、
③介護者は重心移動を自分の支えている面積内で行うこと(図右図左)、
④一方の足に体重をのせてから行うこと(図右)、
⑤重心を移動したい方向に足のつま先を向けること(図右

です。

Point10 利用者を水平方向に移動させているか

介護者と利用者が一緒に動くときは、水平方向に移動しましょう。
ボディメカニクスの原則に、「水平移動で行う」という項目があります。
上下の動きは重力の影響で、利用者・介護者双方の身体に負担がかかります。
介護者は、水平に手前に引く(図左利用者の上半身を手前に引く(図右、移乗介助をしてみましょう。

いかがでしょうか。ご紹介したのは移乗介護で注意したいポイントの一部です。
本記事の元になった「イラストでやさしく理解する介護技術のキホン これだけは押さえたいポイント100」(おはよう21 2023年4月増刊号)では、より詳しい移乗のポイントやそのほかの介護技術の解説が掲載されています。

介助技術をもっと学びたい人には、コチラの本がおすすめ!

『イラストでやさしく理解する介護技術のキホン これだけは押さえたいポイント100』(おはよう21 2023年4月増刊号)

『おはよう21』