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介護リーダーの悩み解決

介護リーダーになったけど、何をしたらいいかわからない!

 上長から「リーダーになってほしい」と昇進の話があると、「今のままがいいのに……」と憂鬱になってしまう方も多いのではないでしょうか? その気持ちの根本には、置き去りにされがちな3つの課題があります。これらの課題をはっきりと浮き彫りにして、その解決策を解説していきます

目次

悩みの背景にある3つの問題

ロールモデルがいない!

 ロールモデルとは「あんな人になりたい!」と思える、お手本となる人物のこと。介護リーダーになることにネガティブな気持ちを抱いてしまうとすれば、それは現場にロールモデルになる先輩がいないからかもしれません。毎日、リーダーの疲弊した姿を目にしたり、仕事の愚痴を耳にしていれば、「今のままでいい」と思ってしまうのも無理のないことでしょう。
 「職場に憧れる人なんていない!」と嘆く声が聞こえてきそうですが、ロールモデルは身近にいる人だけに限りません。たとえば好きなアイドルや歴史上の偉人など、自分が「あんなふうになりたい」と思える人物を選んでみてください。
 そして、ロールモデルは1人である必要もありません。複数のロールモデルがいれば、自分でも真似できそうな選択肢が増えるので、実践するハードルが下がります。
 ロールモデルを選んだら、その人をしっかりと観察して、言動の特性を把握してください。たとえば、「自分からあいさつする」「笑顔でスタッフに声をかける」「注意すべきことはハッキリ言う」など、真似ることができる言動を洗い出します。
 面識のない人物をロールモデルにする場合、その人の好きなポイントを明確にしてみましょう。たとえば「努力家なところ」「礼儀正しいところ」「謙虚なところ」など、その人に惹かれ、真似したい部分があるはずです。初めて訪れる土地で地図やナビが目的地まで最短で導いてくれるように、ロールモデルが「なりたい自分」の道標になるのです。

将来像が見えない!

 慢性的な人手不足が続く介護業界では、課題解決のためにキャリアパス制度が導入されている事業所も多いと思います。制度の導入により、年数に応じたキャリアアップの段階やプロセスを明確にする取り組みが浸透しつつあります。
 しかし、それが処遇改善加算のための形式的なものになってしまっているかもしれません。目的や目標が曖昧なまま、目標管理シートをつくってはいないでしょうか? たとえば、「研修に積極的に参加する」とだけ設定して、何のために研修に参加するのかという目的が示されていない、「利用者の状態を把握できるようになる」と記したものの、具体的な行動が明確になっていない、などです。
 目的は「なりたい姿」の最終形、目標は進むべき道標です。「介護職を続けるなかで、どんな自分になりたいか?」という問いへの答えは人によって異なるはずです。
 たとえば、「現場でずっと働き続けたい」と考える人や「現場の知識と共感力を活かして相談職を目指したい」「経験を積んでマネジメント職に就きたい」という人もいらっしゃるはずです。「どんな自分になりたいのか?」という目的を明確にすることで、目標も見えてきます。そして、積みたいスキルや取得したい資格にも幅が出てきます。

とにかくリーダーは丸投げされて大変そう…

 たいていの場合、リーダーに就く前には、先輩や上長から「わからないことがあったら何でも聞いて」と言われるものです。その言葉を信じて、いざリーダーになってみたものの、あまりに忙しそうにしていると、やはり「教えてください」とは気軽に言いづらい雰囲気になってしまっているのではないでしょうか?
 そんなとき、先輩や上長は目の前の業務に忙殺されているのかもしれません。その結果、自力で何とかしなければならない、丸投げ状態にされてしまっているのです。
 とはいえ、先輩や上長も仕事に追われているだけで、あなたを「サポートしたい」という気持ちは必ずあります。相手がどのような状態であれ、自分の業務上で「わからないこと」「教えてほしいこと」があったら、気にせず素直に伝えましょう
 それでも「今は迷惑かも」と伝えることを躊躇したときや、口頭で伝える時間がない場合には、連絡ノートや申し送りノートに記載するなどの方法で、自分が「これでいいのかな?」と不安に感じていることを知らせてください。
 現場にいるときに「間違っていたらどうしよう……」とためらい、その後もきちんと解消できなかった不安感は、心の中にどんどん蓄積されていきます。そうすると、リーダーという立場によるプレッシャーと不安感が増幅し、結果的に「リーダーになんて、なりたくなかったのに」という不満感が募ることになります。そして、そんなあなたの心情は周囲の人たちにも影響を与えることになるのです。
 私たちは誰しも、知らず知らずのうちに他人の影響を受けており、不機嫌な人には「今は話しかけるのをやめておこう」「機嫌が悪そうだから離れていよう」と思うはずです。同じように、あなたのメンタルはスタッフに影響を与え、結果的に利用者にも伝わってしまいます。利用者や共に働くスタッフのためにも、自分のメンタルを整えることを意識してください
 対人援助者である介護職は、自分のことは二の次にしてしまう人が多くいます。相手を思いやる気持ちは、とても大切ですが、相手を優先するあまり、自分の気持ちが折れてしまっては元も子もありません。まずは自分を大切にしてください。メンタルを整えることは、介護業務全般にとって不可欠なことなのです。

明日からできるファーストステップ

 「テンション」と「モチベーション」の違いは何でしょうか?
 どちらも「やる気」だと考えている方が多いかもしれません。混同しがちですが、実はこの2つはまったく違うものです。
 テンションは、どちらかというと一時的なものです。たとえば、飲み会で一晩中盛り上がるのはテンションが高い状態です。それに対してモチベーションは、中長期的なものです。テンションと異なり、モチベーションが「一晩だけ高い」ということはありません。モチベーションとは、目的に向かって行動を促す動機──いわゆる「意欲」です。
 このモチベーションは、外発的なものと内発的なものの2種類に分類できます。仕事をするうえでの外発的なモチベーションの典型は、お金や休み、ポスト(地位・役職)です。たとえば、ゴールデンウィークに沖縄に行く予定があれば、「あと○日で沖縄に行ける!」と休暇までモチベーションを維持して意欲が湧くことがあります。
 内発的モチベーションは、自分の目的が明確になっており、それに向けてまい進しているときに高まります。内発的モチベーションを上げるためには、仕事上の目的を考えることが大切です。
 仕事をしていくうえでは、組織やチームの目的と、個人の目的があります。組織から示される目的とは、組織理念です。それに対して、個人的な目的とは「何のために働いているのか?」という問いによって得られます。
 この問いに対して「生活のため」「お金のため」と率直な答えもあると思います。それも立派な目的ですが、ぜひその答えの先を考えてみてください。お金を得た後に「何を実現したいのか?」「誰と一緒に何をしたいのか?」といったことです。それが「家族と幸せに暮らしたい」なら、それがあなたの目的です。「マイホームを購入して、温かい家庭を築きたい」「老後の資金にして、安心した老後を過ごしたい」「将来、海外留学してグローバルな仕事がしたい」といったことも、あなたの目的になります。
 どんな人であっても、組織から示される目的だけでは、主体的には動くことはできません。自分の目的を明確にするからこそ、任せられた仕事に意味を見出すことができるのです。
 自分が将来やりたいこと、そのためにやるべきことがわからないままでは、モチベーションを保つことは難しいでしょう。あなたが仕事をする目的を明確にするために、「何のために仕事をしているのか」「人生で誰と一緒に何を実現したいか」という2つの質問を自分に問いかけてみてください。

仲川麻子
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業後、印刷会社でグラフィックデザイナーとして勤務。その後、フリーの漫画家として週刊モーニングなどで連載。代表作に『ハケンの麻生さん』『飼育少女』など。イラストレーターとしても活動中。

三田村 薫
2003年に介護支援専門員の資格を取得し、介護業界に。介護スタッフ間のコミュニケーションの大切さを痛感し、コーチング研修講師としての活動を開始。現在は参加型研修が特徴の介護・医療職専門コーチとして全国でセミナーを行う。

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この記事は、介護専門職の総合情報誌「おはよう21」の連載「新しい介護リーダーのための12ステップ」第1回の内容をもとにしています。