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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

大事にされていない感 その2

 施設に親や配偶者を入居させているご家族等から見て、「自分の身内が大事にされている感がもてない」ことについて前回に続いて書きますが、前回は「利用者・入居者の姿」から書きましたが、今回は「利用者・入居者を取り巻く環境」から書いてみます(利用者・入居者は以下 利用者)。
 環境と言えば、ひとつは「居住空間」であり、ひとつは「職員」でしょうが、今回は職員に焦点を当ててみようと思います。

職員の身なり

  • ・施設が決めた、いわゆる制服であろうが、僕のところのように私服で従事しているところあろうが「清潔感」は大事ではないしょうか。服を着ているのなら何でも良いということではなく、対人援助者として「ここだけは」という線があるように思います。
    どう見ても何日も洗濯されていないように見えるヨレヨレの服や近づくと汗臭が鼻につく服を着用しているなどは典型的ですが、仕事用だから捨てる寸前のものを着ているのではないかと思える毛玉だらけの服や黄ばんだ服。ジャージやスエット系の服なども「大事にされている感」は薄くなるのではないでしょうか。
  • ・さっきトイレ介助から出てきた職員が、その時の衣服のまま台所で調理している様を目にすることがありませんか。
    トイレ介助用エプロンを付けているのに脱がない・取り換えないで食事場面に向かう様に家族等は「えっー!」ってなるでしょうし、何ら話がされていなければトイレ介助用エプロンをつけず私服のままでも「えっ!」ってなるでしょうね。
  • ・髪が長いとか、髭をはやしているとかは「個性」と捉えてもらえるでしょうが、ぼさぼさ髪に無精ひげ、束ねていないロングの髪などは不潔感をもたれることでしょう。ふけが肩について真っ白になっている人を見かけますが事情があるなら事情を話しておかないと「えーっ」ってなるでしょうね。
    こうしたことも利用者支援の中で「意識的にこうしていて、その理由はこうなんです」という話が家族等に伝わっていて「なるほど」と思ってもらえていれば、話は別ですがね。

職員の言葉や態度

  • ・職員が利用者にかける言葉や態度に「大事にされていない感」を感じる利用者本人やご家族等は多いのではないでしょうか。
    丁寧だけど子ども扱いしているかのような言葉、利用者と身近な距離感を表出しているかのように聞こえるが職員自身の感情をのせた辛辣な言葉かけなど、「大事にされているかのような言葉に潜む非専門性感」は、僕自身、自分の利用者への言葉遣いや態度、居場所(立ち位置)に対してものすごい自問をかけている方だと思うので、とても気になります。
     家族等が面会に来ているときや関係者が来ている時にはなりを潜めていても、日常的に「何度言ったらわかるのかなぁ」「何回も言わせないで」「違う」「もう」「まったく」「いやになる」など、利用者に対して辛辣な言動のある事業所では、そうした言動を直接的に見聞することはなくても、利用者にとって生活環境としての「自分=職員」を意識できていないということですから、掃除も行き届いていないでしょうし、職員の身なりもだらしなくなっているでしょうし、利用者の姿も良くないでしょうからね。
     そうしたところから何となく「大事にされていないかも」と疑念を抱くでしょうし、疑念をもてば情報収集に動きますから見えなかった・聞こえなかったことが見え・聞こえてくるようになり、やがて「大事にされていない」と確信をもったとしても不思議ではありません。
     利用者から直接聞こえてくることもあります。
     その話を聞いた同僚の中には「認知症だから」で済ませ、結果辛辣な言動を浴びせている職員をかばってしまう者もいることでしょうし逆に上司にきちんと報告する者もいるでしょうが、いずれにしても利用者の声や態度は大事な情報源であり、何らかの手立てを講じて止めねばなりません
  • ・食事介助の場面で、職員が利用者には向き合わず、食事介助する職員同士でおしゃべりしている光景や、テレビがつけっぱなしで、利用者の口に食物を運び利用者がもぐもぐ咀嚼している間職員はテレビに目を向けている光景を見かけたことがありますが、こういう場面を家族等が目にした経験をもった後に「誤嚥や誤飲「転倒」などの事故が起こると、不信を抱いてもおかしくないでしょう。
  • ・職員が職員に対して利用者の前で叱責していることに対して、「その場で言わなきゃわかんないからと上司は言うのだけど和田さんはどう思うか」と聞かれることがありますが、レストランに行った際に、僕に関わってくれた新人ウエイトレスの対応が悪いからと先輩が僕の目の前で叱責したら、僕の脳には「不快なレストラン」しか残らないでしょうね。
  • ・利用者が座っているところに職員が来て、利用者に何も告げずにその場から連れ去ることや、車いすに乗っている利用者に何ら言葉をかけることなく押している光景を見ると「人じゃなくモノ」として扱われている感じを持つでしょう。
     これってバリウム検査のとき、装置の上に寝っ転がると技師から「右を向いてください」「もう少し上を向いて」と指示してもらえないまま装置を動かされているようなもので、もう二度とそこには行きたくなくなるのではないでしょうか。
     いや、それがトラウマになって検査そのものを受けられない状態になるやもしれませんが、利用者はイヤな思いをさせられたことに対して自分の意思をどうやって表現するかを考えると、その表現を「進行した」とか「BPSD」なんて介護側の都合のいいように捉えられかねない現状を考えると、恐ろしくなってきます。 二回にわたって「大事にされている感」について利用者側から見たときについて書きましたが、いかがでしょうか。
     書ききれないほどたくさんの事例・事案がありますが、今一度自分の実践・自分たちの職場をこうした視点から見つめなおしていただき、修正できることから修正してはどうでしょうか。
     しかも、こういうことって上司や先輩より、新人職員さんの方が「おかしい」って思えていることも多々ありますので、新しく入ってきてくれた職員に聞いてみるのが効果絶大だと思います。
     逆に言えば、こうしたことにしっかり取り組めている事業所の家族等は「大事にされている感」がもて、日常的にその「感」を抱かせてもらっていると、いろいろなことが起こることが普通の介護現場にあって、起こったとしても信頼感が揺るがないから大事にはならないでしょうね。
     僕ら介護に携わる者も根は人であり、人は間違いを犯すもの、気づけないもの、他人をいじめたり無視したりするもの、ダメな時もあるものだとしたら、自分も知らず知らずのうちに「大事にされていない感」を持たれる介護職になっているかもしれません。
     突き詰めればつめるほど「より良くしていく源」は、他人の声や目にあるわけではなく、自分自身への投げかけ・問いかけにあり、ずっと自問し続けるしかないってことに行きつきます。仕事ってお金をいただくだけに厳しいネ。

追伸

昨日、新型コロナワクチン二回目を接種しました。一回目よりも痛みが少ない当日でしたが、二日目の昨日は両腕に痛みがきてきつかったですね。知人は下痢が起こったようです。
ワクチンを接種したあと、「様子をみる」ために15分ほど待機させられるのですが、待機中に排便をもよおし「トイレに行ってもいいですか」と係員に告げると「こちらです。ご案内します」と言って胸に「看護師」と書いたプレートをぶら下げた方が連れて行ってくれました。
トイレに入る前に「何かありましたら声をあげてください」と言われ中に入り排便へと向かったのですが、便が下りてくる前に「やばいな、これ。時間をかけたら何かあったと思われて行動を起こされるかもしれない」と思い始めたら気が気じゃなくなり、排便行腸内列車は急停止。
おしっこを済ませて戻った顔でトイレから出て「ありがとうございました。スッキリしました」と看護師に声をかけました。
他人様をトイレの外で待たせての排せつって辛いね。

写真

最近、昼飯を食べるところを探し回る「昼めし難民」になるときがあります。先日もブラブラ「昼飯屋探索」していると、写真にあるようなメニューが並ぶお店に巡り合えました。東京には昭和を思い起こさせる「大衆食堂」みたいなものが残っているんですよね。
こういう店に入ると「大将!ご飯・納豆・ハム玉焼き・味噌汁をお願い」って注文したくなりますもんね。
こういうのは都会ですよ。東京は特に残っている感がありますね。これも大将が辞めたらなくなるんでしょうし、後継者がいなくてなくなっていったお店もいっぱいあります。同時に、新型コロナウイルスが「文化の破壊」を加速させましたね。悔しい限りです。
このお店を目当てに名古屋から四人組のご婦人方が来ていた時もあり「四年ぶり、大将に会いにきたわよ」って賑やかしていました。僕らが知らない人気店なのかもしれませんね。