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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

落ちこぼれを生まない社会こそ生産的

 このところ、社会福祉法人からご依頼頂いた虐待防止研修が続きました。空いた時間には決まってスタッフの方々と雑談するのですが、大抵は介護現場の話です。そのためでしょうか、今、これまでも言及してきた生産性の向上に思案を巡らせています。

 わが国の企業は生産性の低いところが多いと言われます。介護の現場もご多分に漏れずでしょう。私は言うまでもなく経済や経営に疎いため、あるいは見当違いかもしれませんが、多くの経営母体は規模が小さ過ぎるのではないでしょうか。

 虐待防止の取組みについては、規模の大きな自治体ほど進んでいると言われます。これは、規模の大きい自治体ほど生産性を向上しやすいからであり、介護現場の経営母体の規模にもあてはまるのではないかと思います。

 女性の活躍を狙って保育園を増やしても、育児休暇や介護休暇を取りやすい制度を作っても、小規模なところではそう簡単には事が運びません。それなりに大きな法人の経営する福祉施設の事務長である知人でさえ、「人手不足が深刻だから休暇なんて増やすどころか減らしたいくらいだ」と嘆きます。実際、有給休暇の取得率が高いのは大企業ばかりです。

 誰に聞いたか定かではありませんが、米国の勤め人の半数は大企業勤めであるのに対し、日本で大企業に勤める人は10数パーセントに過ぎないそうです。だとすると、同じ業種で10の事業所があるとしたら、日本では10の会社が経営し、米国なら2、3社が経営しているようなイメージでしょうか。

 もしこれが事実なら、経営母体にはある程度以上の規模を持つように求めないことには、生産性はあげられないと思います。その昔の日本でも、田を分けて相続するとそれぞれ零細化して水呑百姓になる恐れがあるため、田分けをする者を「戯け」と呼びました。

 介護の分野で田分けが進まぬよう願わずにはいられませんが、そのためには、零細化した小さな経営母体同士の競争の果ての共倒れを防がねばなりません。10の事業所があるとしたら、これらを10の経営母体が経営するカタチで零細化するのではなく、2つ、3つの経営母体が経営するような産業構造にしていく他ないのではないでしょうか。

 この点で、「1人の落ちこぼれも出さない」ことを目指した教育により、子どもの学力を世界一にのしあげた北欧の国のエピソードを思い出します。というのも、1つの経営母体も落ちこぼれない(経営不振に陥らない)ような産業構造にしていくのに等しいからです。

 私たちは、何であれ「駄目なもの」は切り捨てがちです。しかし、手間暇かけて一定のレベルに引き上げ、駄目ではなくするよう努めると、全体として底上げされますから、より生産的だと言えるかもしれません。

「搾取してこその経営者!」
「落ちこぼれる訳だ…」

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