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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

知は力なり


想像力を発揮せよとは言うものの

 以前私は、個別の事例対応には「OODAループ」的発想が向いている、と書きました。そして、自分でもOODAループを意識するようになり、さまざまな気づきを得られています。最初の「観察」の段階からして、気づきまくりです。

 先日、「住所地と居住地が異なる高齢者の、養護者虐待の対応主体はどの市町村か」とのご質問を頂きました。確かに「居住地の市町村」(「国マニュアル」p.41~p.43)だと知らないと判断できません。

 想像力を発揮して観察するにしても、それなりの知識は必要なわけです。知識が無ければ、ループの次の段階である「状況判断・方向づけ」はおぼつきません。道理で、シャーロック・ホームズの知識は、著しく偏っていますが、犯罪に関しては飛び抜けています。

改訂された国マニュアル

 ところで、「国マニュアル」は、今年の3月に改訂されました。平成30年にも改訂されているのですが、例示などに首をかしげる部分があり、正直私は不満でした。ところが、今回の改訂により、かなりブラッシュアップされたように思います。

 長らく議論のあった部分にもちゃんと触れています。「セルフ・ネグレクト」については、1ページ以上割いて詳しく解説されていますし(「国マニュアル」p.6~p.7)、「養介護施設従事者等」の範囲外の施設についても、「養護者による虐待」として対応できる可能性を示しています(「国マニュアル」p.4)。

 実は、範囲外の施設のなかに、利用者と外部の者を、正当な理由なしに会わせない所がある、という話を時々聞きます。利用者が最重度の褥瘡になっているのに、行政による安否確認でさえ応じようとしないこともあるそうです。

 このとき、最新の国マニュアルを根拠にすれば、「養護者による虐待」として立入調査を行えそうです。立入調査の「高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められるとき」という要件は、明確な根拠を必要としないからです。

知は力なり

 そのため、これまでの経過や行った調査の範囲内で「おそれあり」と判断して良い、と知らないと大損すると言えます。ですから、国マニュアルを読めば読むほど、観察と状況判断・方向づけの整合性を高められるようになります。

 事例対応にあたっては、「何がどうしてこうなった。だから、何をどうすれば良い」というつながりを説明しないといけません。第一線でことにあたる行政や地域包括支援センターの方々ならなおさらです。

 そこで知識が不足していたら、説明の妥当性と信頼性は随分下がってしまいます。国マニュアルはまさに、事例対応における知識不足を補い、私たちに「知は力なり」を体現させてくれますので、何度も読み返す価値があるものだと思います。

「知は力なりですヨ!」
「私、知の力ない…」