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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

ヘルステックで虐待防止


アブセンティズムとプレゼンティズム

 先日、「アブセンティズム」と「プレゼンティズム」という言葉を知りました。どちらも健康問題を抱えているのですが、前者は、欠勤や休職、遅刻や早退などで、仕事ができない状態、後者は、不満足ながらも仕事をしている状態を意味します。

 私自身、ギックリ腰になって仕事をドタキャンしたり、体調不良を押して出勤はしたものの仕事にならなかったりと、多くの人に迷惑をかけた経験があります。ですから、これらが企業の生産性をみる指標の1つになっていることにも納得です。

 それに、かつては「健康管理は自己責任」という風潮でしたが、当たり前のことを当たり前には出来ないのが人間ですから、現在、多くの企業が健康経営に取り組んでいるのは必然なのだと思います。

 従業者の健康増進への投資は、企業に幾つも利益をもたらします。健康保険料の負担軽減、従業者の生産性向上、人材の確保・定着の容易化などは直ぐ思い浮かびますし、介護や保育の現場なら、人手不足に起因するトラブルだって減らせそうです。

 そこで、興味を持って調べてみたところ、「ヘルステック」という「ヘルス」と「テクノロジー」の要素を融合し、新しい価値を創造しようとする取り組みがあることを知りました。医療や創薬、介護、予防、QOLなどと、クラウド、モバイル、AI、IoT、ウェアラブルデバイスなどの要素を融合するため、実に多種多様な展開が期待されます。

ヘルステックと虐待防止

 私はとくに、行政等による、健康無関心層を健康づくりへと誘って行動変容を促す「健康ポイント」施策に注目しました。わけても、京都府精華町様の「せいか365健康ポイント」は、全体が良い循環が生まれるようにシステム化されており、とても感心しました。

 簡潔に言えば、対象となるイベントや事業、健診・検診を受けて「健康ポイント」をためると、クーポン券が貰える仕組みです。まず「365日健康づくり 365ポイントシート」に1ヶ月で歩く目標を設定し、1日当たりの歩数目標・健康目標を決めます。

 つぎに、毎日の達成状況を記録し、ポイント交付会場に1ヵ月分の記録を持っていくと、100ポイントでクーポン券1枚が貰えます。すると、協賛店での買い物や飲食に使ったり、協賛店独自のサービスを受けたりできるわけです。

 ICTにも抜かりありません。「せいか365健康ポイント」と連動した「セイカ歩数計アプリ」というスマホアプリも提供されていて、1ヶ月分の歩数に応じてポイントが付与され、6,000歩ごとに2ポイントで、最大で60ポイント付与されるのだそうです。

 虐待者や不適切ケアを繰り返す人は不健康なのですから、こうしたヘルステックの成功例を参考に、三宝一両「得」のシステムを構築できたなら、虐待の未然防止や悪化・再発防止に大いに役立ちそうです。知恵を絞らないといけない課題が、また増えました。

「健康➡幸せ➡親切➡他の人も健康…」
「きれいな水の循環みたいにネ」

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知は力なり