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ケアマネジャーの実践に活かすヒント集

 本連載は、2007年に『ケアマネジメント実践ノート』として連載した内容をリニューアルして再掲するものです。あれから15年がたち私たちの実践には、変わったこともあれば、変わらずに大事なこともあります。
 コロナ禍もあって、大変さが増すばかりのケアマネジャーの仕事ですが、大変さ以上の魅力がつまった仕事でもあります。「難しい……」を少しでも「面白い!」に変えていけるヒントをお伝えしていきたいと思いますので、最後までお付き合いくださいませ。


第21回 困難事例への具体的なアプローチ(2)キーパーソンの不在

吉田光子

郡山ソーシャルワーカーズオフィス代表。ソーシャルワーカーとして病院、特養、老健、在宅介護支援センター、居宅介護支援事業所等に勤務した後、独立。個人・グループに対するスーパービジョンや各種研修の講師等を行う。

キーパーソンがいない!?

 現代社会では、一人暮らしや高齢夫婦だけの世帯が増えてきています。あるいは、今は介護を担っている子供がいても、その方が独身で高齢になった際に、介護や支援をしてくれる人がいないと考えられるケースも増えてきてはいないでしょうか。
 ケアマネジャーは、キーパーソンとして一人の家族・親族を定めて、その方を中心として支援を展開していく傾向があります。では今キーパーソンとして機能している独身の子供が要介護状態になった際に、キーパーソンはどなたになるのでしょうか。ほとんど交流もないまま、血縁というだけで引き受けてくれるような方が見つかるでしょうか。

キーパーソンのとらえ方と不在の影響とは

 もしケアマネジャーが自分の仕事を進めやすくするためにキーパーソンを定めたがっているのであれば、それはあきらめるしかありません。しかし、さまざまな課題に対し利用者を支え、ともに解決を図る存在としてのキーパーソンであれば、十分に見つかる可能性があるのではないでしょうか。
 社会人として生活してきた歴史の中で、仕事仲間や趣味を通じて知り合った友人、住み慣れた町で出会った知人などが、その意味でのキーパーソンとして考えられます。ご本人が好きだったこと・大切にしてきたことをよく知っている方であれば、もし本人自身の意思決定をする力が衰えたとしても、「〇〇さんならきっと~すると思う」といった形で情報提供をしてくださったり、「□□よりも△△を大事にしてきた」と教えてくださるかもしれません。
 また、そうした情報が得られなかったとしても、ケアマネジャーとしてはご本人に向き合って支援をしていけばよいのです。その方を知ろうとし、その方の望む暮らし、自立を一緒に見つけていけばよいのです。考えようによっては、立場や価値観が必ずしも一致しない家族に余計な気を遣わなくて済む分だけ、よりシンプルに本人と関わることができるとも言えます。

それって「困難事例」なの?

 「キーパーソンがいない」と聞いてとっさに困難事例だと考えてしまうとき、「困難」なのは一体どういう点でしょうか。ケアマネが一人で決めなければいけないことでしょうか? 相談相手がいないことでしょうか? 実は「困難」ではなく、「不安」なだけかもしれません。
 利用者の生活を支えるケアマネジャーの仕事に、唯一絶対の正解はありません。その時々によって利用者の考えも思いも変化しますし、訴えも変わります。話し合って決めたはずのことが覆されることもあることでしょう。
 そのため、一人で向き合うことに「困難」を感じることがあることも当然ですが、それは支援そのものが困難なのではなく、その変化に気付き対応していくことが難しい場合があるだけです。例えば、アセスメントしたことをうまくケアプランにできて落ち着いたと思った矢先に、急に体調が変化してしまい入院という事態になるとか、急に方針転換を訴えてきて対応に振り回されるといったケースです。
 でも冷静になって考えてみると、こうしたことはいろいろな方で起きていますし、その対応の経験ももっているはずです。ちょっと苦労することはあっても、何もできずにどうしていいかわからないような「困難」は、実はそうそう起きないのです。
 ぜひとも、困難なときに手助けしてくれたり相談に乗ったりしてくれる人を、たくさん見つけておきましょう。互いにサポートしあえる仲間を作りましょう。どうでしょう。少しは心が楽になりましたか。

〔吉田光子先生の著作〕

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