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ケアマネジャーの実践に活かすヒント集

 本連載は、2007年に『ケアマネジメント実践ノート』として連載した内容をリニューアルして再掲するものです。あれから15年がたち私たちの実践には、変わったこともあれば、変わらずに大事なこともあります。
 コロナ禍もあって、大変さが増すばかりのケアマネジャーの仕事ですが、大変さ以上の魅力がつまった仕事でもあります。「難しい……」を少しでも「面白い!」に変えていけるヒントをお伝えしていきたいと思いますので、最後までお付き合いくださいませ。


第9回 相談援助の心構え(5)自分を知る、自分を磨く

吉田光子

郡山ソーシャルワーカーズオフィス代表。ソーシャルワーカーとして病院、特養、老健、在宅介護支援センター、居宅介護支援事業所等に勤務した後、独立。個人・グループに対するスーパービジョンや各種研修の講師等を行う。

自己覚知

 皆さんこの言葉を耳にしたことは当然ありますよね。簡単に言えば、自分自身を知り理解することです。では実際にどうすればいいのか、何をわかればいいのか、となると曖昧な方も多いのではないでしょうか。
 相談援助を仕事にするということは、他人と向き合う仕事をするということです。しかし私たちケアマネジャーも人間ですから、得意なことも不得意なこともありますし、好きな人や苦手な人がいるのは当然です。そのうえで他人と向き合うためには、まず自分自身とよく向き合い、知らなければなりません。
 しかしながら、自分自身を知るということは、案外難しいことなのです。私たちは自分のことは自分が一番よく知っていると思いがちですが、本当にそうでしょうか。
 人はみな、嫌な自分、認めたくない部分を持っています。誰だってできることなら苦労したくありませんし、嫌な自分は自分にも他者にも隠しておきたいと思うでしょう。しかし、自分自身を知らないままで、苦手なことに見ないふりをしていたり、得意な事だけでプランを組もうとしていたら、それはケアマネジャーとしてきちんと仕事をしているとは言えませんよね。
 自己覚知とは、様々な機会を捉えて、しかも覚悟をもって自分と向き合わない限り、できないことなのです。

他者の言動を鏡にする

 自己覚知をする方法として、身近なこととしてはまず周囲の先輩や後輩の言うことや仕事ぶりを観察し、自分だったらどうするだろう、とか、なぜこう言ったのかなと考えてみることです。またその仕事の仕方は自分と同じか、違うとすればどこが違うのか、そうしたことを一つ一つ点検してみましょう。他者(=先輩や後輩)の言動と、自分のそれを比較検討するのです。
 それを繰り返すことで、同じ場面であっても人はいろいろな反応をすることや、自分はどういう言動をしがちなのかが、はっきりしてきます。自分自身を映し出してくれるので、他者は「鏡」というわけです。
 これを繰り返して、自分自身を振り返り見つめることができたら、自己覚知はかなり進んでいくことでしょう。繰り返し陥ってしまう苦手な場面や、どうしてかわからないのに、なぜか気になることなどもはっきりしてくると思います。

スーパービジョンの活用

 さらに、自分自身を仕事の道具としなくてはならないケアマネジャーは、自己覚知しただけでは十分ではないのです。そんな自分を理解し、認めたうえで、ケアマネジャーとしてきちんと仕事ができるようにならなければいけません。この専門職としての自分を磨く手段がスーパービジョンだと、私は考えています。
 前段で触れたように、繰り返している望ましくない場面や、よくわからないことを明らかにし、その原因を探ったり、対処方法を見つける手段がスーパービジョンなのです。スーパービジョンの具体的なやり方などに関しては、この連載のなかでは詳しく解説しませんが、ケアマネジャーとしての専門性を磨き、より成熟するためのよい方法ですので、機会があればぜひ活用してみてください。

〔吉田光子先生の著作〕

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