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ケアマネジャーの実践に活かすヒント集

 本連載は、2007年に『ケアマネジメント実践ノート』として連載した内容をリニューアルして再掲するものです。あれから15年がたち私たちの実践には、変わったこともあれば、変わらずに大事なこともあります。
 コロナ禍もあって、大変さが増すばかりのケアマネジャーの仕事ですが、大変さ以上の魅力がつまった仕事でもあります。「難しい……」を少しでも「面白い!」に変えていけるヒントをお伝えしていきたいと思いますので、最後までお付き合いくださいませ。


第5回 相談援助の心構え(1)ケアマネは御用聞きではない!

吉田光子

郡山ソーシャルワーカーズオフィス代表。ソーシャルワーカーとして病院、特養、老健、在宅介護支援センター、居宅介護支援事業所等に勤務した後、独立。個人・グループに対するスーパービジョンや各種研修の講師等を行う。

何を利用するかは利用者が決める?

 この連載の第3回でも少し触れましたが、利用者の望むことをかなえたいという気持ちがケアマネジャーにはあります。それ自体は悪いことではありませんが、専門職としては、「いいなり」だったり「御用聞き」ではまずいのです。つまり、ケアマネジャーはケアプランを作るプロですから、利用者が具体的なサービスの希望を訴えたからといって、それをそのままプランに反映させてはだめなのです。
 なぜなら、利用者が望んでいるからとその希望通りにサービス調整をする(ケアプランを作成する)だけなら、ケアマネジャーじゃなくてもできることで、それでは専門職の仕事とはいえないからです。

なぜ具体的なサービスを希望するのかを考えよう

 初めて介護保険を利用する人が、例えばデイサービスに行きたいとか、ヘルパーさんを頼みたいと、具体的な希望を述べたとします。希望の通りに申し出のあったサービスを組むのは、少し待ってください。「なぜ、そのサービスを希望するのか」「本人のニーズに合っているのか」について考えましたか?
 利用者のなかには、友達が利用していて誘われたからとか、そのサービスのことしか知らずに口にしている人もいます。ケアマネジャーから見ても、そのサービスが妥当性の高いものだと考えたのであれば、もちろんそれで構いませんが、この段階を踏まずにサービス調整を始めてはいけないのです。

相手の話を聞くとはどういうことだろう?

 ケアマネジャーは利用者・家族から話を聞いて、その意向をつかみ、援助方針を立ててケアプランを作る仕事をしています。その最初にすること=「話を聴く」ということですが、単に「聞く」のではないのです。つまり相手の言葉を「聞く」、表面的な内容を受け止めることと同時に、その発言の意図や背景を理解しようと考えながら「聴く」ことが必要なのです。
 加えて、多くの場合、人は常に本音を話すとは限りません。むしろその場にふさわしいかどうか、相手が理解してくれるかどうかなどを考えながら、話す内容や表現を変えているはずです。まして、初対面であればなおさら本音は隠して、当たり障りのない話になりがちです。
 私たちがどんなにアセスメントのために話を聴きたいことや、それが必要な理由を熱心に伝えたとしても、まだよく知らない相手に自分のできない部分や隠しておきたい部分を話すことには抵抗があるものです。そうした気持ちを理解し、たとえ事前情報と違っていたとしてもそれを指摘するのではなく、違っていることを一つの情報として理解して聞くことが大切です。

御用聞きがだめな理由

 具体的なサービスを利用したいというのも、介護保険のことをよく知らない自分を隠すためかもしれませんし、反対に過度な期待を寄せているからかもしれません。ですから、まず相手の話をよく聞き、その背景にあるものをつかもうとしなくてはならないのです。
 「本人や家族が希望したから」と相手の望む通りのケアプランを作るのではなく、よく相手の話を聴いて、そのサービスの利用が必要なのかどうかを考え、それを相手にきちんと説明できるように、準備をしていきましょう。それが相談援助の専門職がもつべき最初の心構えです。

〔吉田光子先生の著作〕

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