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ケアマネジャーの実践に活かすヒント集

 本連載は、2007年に『ケアマネジメント実践ノート』として連載した内容をリニューアルして再掲するものです。あれから15年がたち私たちの実践には、変わったこともあれば、変わらずに大事なこともあります。
 コロナ禍もあって、大変さが増すばかりのケアマネジャーの仕事ですが、大変さ以上の魅力がつまった仕事でもあります。「難しい……」を少しでも「面白い!」に変えていけるヒントをお伝えしていきたいと思いますので、最後までお付き合いくださいませ。


第17回 ケアマネ実践のヒント(8) サービス担当者会議
何のために、誰のために

吉田光子

郡山ソーシャルワーカーズオフィス代表。ソーシャルワーカーとして病院、特養、老健、在宅介護支援センター、居宅介護支援事業所等に勤務した後、独立。個人・グループに対するスーパービジョンや各種研修の講師等を行う。

サービス担当者会議と聞いて何を連想するか

 ケアマネジャーである皆さんにとって、サービス担当者会議とは耳慣れた言葉だと思います。しかし、改めて説明するとなると少々難しいのではないでしょうか。
 誰が参加するのか、いつ開催するのかについては説明できそうですが、何のために集まり誰のために開催しているのかを、はっきりと言葉にして説明することができるでしょうか。今回は、それを考えることを通して、サービス担当者会議の真髄に迫ります。
 会議を開いているところの情景を想像するのは簡単ですね。そこに誰が座っているか、すなわち参加者が誰かはすぐに答えが出てきます。しかし誰が話しているか、その一人ひとりの表情についてはどうでしょう。それは会議ごとに違うわけですから、イメージするのは簡単ではないでしょう。
 つまり、まず確認しておきたいのは、何のための、誰のための会議かは、実はそのたびに異なっているということです。

開催の目的は変化する

 例えば、初めて介護保険サービスを利用することになった方の初回のサービス担当者会議を考えてみましょう。
 開催の目的は、これからチームを組むことになる関係者の顔合わせであり、利用者のアセスメントを共有し、ともにケアプランの目標を理解し、そこでそれぞれが果たすべき役割を確認することです。
 利用者も家族も、もちろんケアマネジャーはじめ介護保険サービスの提供側も、まだお互いのことをよく知りません。ですから、まずはケアマネジャーの作ったケアプラン原案に沿って理解を深めようとしているはずです。ですからこの場は、参加者全員のために開催され、互いの顔と役割を確認しあうために開催されているといってよいでしょう。
 では次に、利用者の暮らしが落ち着いてサービス内容も変化がなく、認定の更新時期になったため開催されるサービス担当者会議を考えてみましょう。
 参加者は互いのことを知っていますし、大きな変化がないのですから、直接参加せず書面で済ませるという方もいるかもしれません。極端な言い方をすると、「法に定めがあるから開催しなければならない」会議ともいえます。
 ではこんな場合、ケアマネに都合のよいように開催すればよいのでしょうか。そうではありません。そもそもなぜ法に定められているのかを考えれば、答えは導き出されてきます。
 落ち着いている時期にこそ、丁寧なアセスメントとプランの見直しが必要なのです。漫然と現サービスを継続するだけでなく、サービス利用の目的と効果をアセスメントし、利用者の新しい課題や目標の有無を確認し、適切なプランへと修正をする機会にするのです。そのタイミングを逃さないように、わざわざ法に定められているのです。
 実は、状態が比較的安定している時期は、変化を見逃す可能性が高い時期でもあります。例えば,毎日関わっているヘルパーであれば当然把握しているADLの変化について、月に一度のモニタリングで座って話をしているだけのケアマネジャーは気づかなかったということが起こり得ます。ケアマネジャーが「お変わりないですか」と尋ねても、変化が少しずつ進行していった場合、当人にとっては「変化」した実感がないこともありますから、当然「変化はない」と答えるはずです。
 落ち着いている時期に開催するサービス担当者会議を、見逃している点がないか、気づかずにいることがないか、いつの時点に比べての変化を知りたいのか、自分に問いかける機会にしたいものです。

成果を確認する場にしよう

 サービス担当者会議の、その時々の目的がはっきりしていれば、事前に参加者に照会をかける内容も具体的になります。そうなれば集まる情報も精度が高くなり、会議を通して得られる結論も参加者全員にとって意味のあるものになるはずです。
 課題を見つけその対応について検討するだけではなく、互いの役割をきちんと果たした結果に関して、その評価をする機会にもしていきましょう。状況によっては、これまで利用していたサービスを終了し、別のサービスを利用する場合もあるでしょう。その時に、これまでのサービス利用を通してどんな変化があったのか、効果を実感できたのかを、利用者に話してもらうこともできます。そういった機会があれば、直接ケアにあたるチームからは外れたとしても、利用者のサポーターとしてつながりを感じてもらうことができるかもしれません。

〔吉田光子先生の著作〕

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