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ケアマネジャーの実践に活かすヒント集

 本連載は、2007年に『ケアマネジメント実践ノート』として連載した内容をリニューアルして再掲するものです。あれから15年がたち私たちの実践には、変わったこともあれば、変わらずに大事なこともあります。
 コロナ禍もあって、大変さが増すばかりのケアマネジャーの仕事ですが、大変さ以上の魅力がつまった仕事でもあります。「難しい……」を少しでも「面白い!」に変えていけるヒントをお伝えしていきたいと思いますので、最後までお付き合いくださいませ。


第13回 ケアマネ実践のヒント(4)モニタリング(2)モニタリングに必要な事前準備

吉田光子

郡山ソーシャルワーカーズオフィス代表。ソーシャルワーカーとして病院、特養、老健、在宅介護支援センター、居宅介護支援事業所等に勤務した後、独立。個人・グループに対するスーパービジョンや各種研修の講師等を行う。

モニタリングの機会は突然やってくる

 モニタリングをするのは、翌月のプランの確認をするときだけだと思っていませんか?そんなことはありません。デイサービスを利用中の表情や動きが気になったときとか、サービス事業者が話した何気ない一言にピンと来たとしたら、それがまさしく「モニタリングの機会」なのです。
 しかし当然、ピンと来なければその機会に気づくこともできませんから、もっと変化が大きくなって問題として表出するまで、何もできないままになってしまいます。そうなれば、対応するのも大変になってしまいます。できるだけ小さな変化のうちに気づけるようになりたいですよね。

モニタリングに必要な事前準備とは?

 それでは、日常的なかかわりの中でモニタリングの機会を逃さないために必要なことを考えていきましょう。
 まず大切なことは、将来どんなことが起こる可能性があるかという予想を立て、現状・事実が予想通りなのかどうかを判別する目と、なぜその現状・事実が生じたのかを考える習慣をつけることです。つまり、担当する利用者のよい変化と悪い変化を想像するということです。
 簡単に言えば、よい変化とはプランの目標が達成されていることで、悪い変化とは病気の再発など悪影響を与える可能性のことです。特にこの悪い変化を予測しておかないと、いざというときに慌てることになりかねませんので、ぜひ習慣づけておきましょう。
 そして、そうした変化の原因・理由を繰り返し考えていくことは、予想を立てる力を育てていくことになるのです。まず変化に気づき、自分の立てた予測をもとに確認する、これを繰り返すことが重要で、この「確認」こそがモニタリングなのです。
 次に大切なことは、目の前にいる利用者に現に変化があるのかどうか気づく力ということになりますが、私はそのために自分なりの尺度(物差し)を持つことが重要だと考えています。

物差しは一つでは足りない

 物差しは道具です。いくら正確なものを持っていたとしても、変化のないところを測っているだけでは、全体の変化に気づけるはずはありません。例えば、歩行訓練をしている方がいるとして、その方の歩行できる距離に着目するのか、行きたいところへ行けているかに着目するかで、結果は異なってしまうでしょう。歩行距離に着目し、維持できているという結果から「変化なし」と捉えてしまうと、その距離では行きたいところへはいけないという側面を見逃してしまう可能性があるのです。歩行距離は測りやすい尺度ですが、それだけではケアプランの効果や利用者の満足度を測ることは難しいのです。
 物差しをもう少し違った捉え方をすれば、予測する力です。今挙げた例から考えれば、予測が「機能の向上を目指しており、維持できていれば満足する」なのか、「機能の向上を通して、〇〇できるようになることを目指している」なのかで、結果をどう評価するかは変わってくるというわけです。つまり、「維持できているのでOK」と評価するか「維持できていることで意欲は変化しているのではないか」と評価するか、そのどちらかがより利用者の現状にふさわしいのかを考える必要があるのです。
 このように、物差しが違うとその後の担当ケアマネジャーの行動が変わってきてしまいます。自分の持っている物差しがどんなもので、目の前の利用者に合致しているのかどうかを、常に点検していきましょう。

〔吉田光子先生の著作〕

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