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高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?

高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。

プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

反省はいいことなのか?

 最近、読んだ本で、なかなかタイトルがショッキングなのが「反省させると犯罪者になります」(新潮新書)。私たちの認識では、反省とは犯した過ちを振り返り周囲や迷惑をかけた人に謝るという行為だと、学校で教えられたものです。
 と、ところが・・・反省すると悪くなるだけでなく、むしろ犯罪者にまっしぐらというのですから、気が気ではありません。
 「反省文」と「しつけ」は、まったく逆効果だというのです。

 著者は岡本茂樹さん。現在は立命館大学の教授で臨床教育学を教えている先生ですが、刑務所での累犯受刑者(つまり、何回も逮捕され刑務所に入ってくる人)の更生支援にかかわっています。これは説得力があると思い手に入れました。

 岡本先生が問題視するのは、反省のパターン化にあります。
 「悪いことをする⇒見つかる⇒すみませんと反省する⇒終了」
 累犯者は、これがパターン化してしまい、「どのように反省すれば周囲が許してくれるか」に思考が向いてしまうというのです。
 本来ならば、本人が向き合わなければいけない内面の問題(なぜ自分はそのようなことをしたのか?しなくてはいけなかったのか?)を曖昧にしてしまう危険性があると説きます。

 なんと「きびしく反省させればさせるほど、その人は後々に大きな問題を起こす可能性が高まる」といいます。

 高校の教員時代に生徒指導をまかされていたそうです。その間、実に多くの反省文を読む機会があり、どの反省文の内容も大差なかったことに気が付いたそうです。
 ある時、生徒たちが書いてきた「立派な反省文」(親も学校側もとても納得する)を累犯受刑者に読ませたそうです。その感想は・・・
 「早く謹慎を解いてもらうために書いた嘘の文章だ。うわべだけだよ」
 と、ほぼ全員が回答したそうです。
 その理由は、彼ら自身が少年期から悪いことをした時、反省の言葉を言ってきた過去があるのです。ここでのポイントは、彼ら自身は「悪いことをした」から反省をするのではなく、「悪いことが見つかった」から謝るということに何の疑問を持っていない点です。

 周囲は「立派な反省文」を書かせることで納得したい、話を納めたい心理が働くようです。つまり「それでよし」としたいわけです。

 本音を言わない態度が染みついた彼らは、似たもの同士がつるみだし、やがて過ちへのハードルが下がり、孤立感のなかでストレスが溜まり、ある日、暴発をすることになります。

 大半の累犯受刑者は「不遇な環境」に育っているといいます。親からの愛情を受けず、もっぱら暴力と暴言と育児放棄のなかで育った彼らには「愛すること」「人を大切にすること」の実感がないのです。
 「愛されたこと」「大切にされたこと」の体験が乏しい彼らが、他人に冷酷になること、暴力に麻痺・鈍感になっていること自体がわからなくなっているとも・・・
 これらのことは、最近起こった川崎の少年事件を読み解くうえでも、示唆に富んでいます。

 と、そこで思うことは・・・

 施設の虐待や介護虐待を考える際に、「倫理上許されないこと」と上から目線で決めつけても解決にはいたらないのはなぜか・・・
 それは「虐待」が起こる(起こるであろう)現実に、真の意味で向き合えていないからではないでしょうか。

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