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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第35回 家族との意識のズレを感じながら意欲の低下している利用者にどうかかわるか
(2001年12月号(2001年11月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Sさん(訪問看護ステーション・看護婦)

事例の概要

Mさん、74歳、女性
診断名:変形性膝関節症・白内障
既往歴:昭和41年、子宮筋腫手術。平成9年、腸の病気で入院。平成10年、ブドウ網膜症手術。左目失明。平成12年11月、痔出血入院。
現病歴:平成12年8月、マンションの階段で転倒。以降、膝関節の痛みを訴え、ベッド上の生活となった(両膝関節拘縮が始まり、伸ばすと痛い)。拘縮が始まったばかりなので、リハビリをして膝の回復を図る。
要介護度:4

ADL
・食事:朝食は食べない習慣。昼食は出前をベッド上で食べる。3時に間食、6時に夕食。
・排泄:おむつ使用。尿意はあるが、失禁状態。
・移動:関節拘縮により運動時疼痛があり、移動困難にて全介助。起き上がりは、自力で端座位保持可能。
・更衣:一部介助及び全介助。
・入浴:一部介助及び全介助。
社会資源
 ホームヘルパー:週16回。訪問看護:週2回。入浴サービス:週1回。訪問リハビリ(PT):月1回。紙おむつ、シャワーチェアー、車いす、介護ベッド等レンタル。
アセスメント
 両膝関節屈曲拘縮(両側ともに伸展60度ほど)著明であり、自立立位困難。数カ月立っていないこともあり、立位に対して不安感が非常に強い。立位時疼痛の訴えあり。トランスファーも下肢に力が入っている感じではなく、前方からの介助が必要。できる範囲での立位訓練と、自主的に下肢運動を行い、日中の離床を促すことが必要。自立でのトランスファーは困難と思われる。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。