メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第24回 退院後3カ月間の空白期があった老夫婦の在宅生活を援助する
(2001年1月号(2000年12月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Hさん(居宅介護支援事業所・看護婦)

事例の概要

プロフィール
 利用者は75歳の女性で、76歳の夫と2人暮らし。会話のなかで、「いちばん困っているのはお金です」という言葉が聞かれるように、裕福な生活ではない。家屋は人が生活しているとは思えないほど散乱しているが、本人と夫は生活環境に対してそれほど不安や不満を感じている様子はない。リハビリに対する意欲はあり、「早く動けるようになりたい」と本人からの訴えがある。

家族構成、介護力の実際
 主介護者の夫は無職。アルコール依存症。かつて自分で営んでいた青果市場の店は、現在長女にまかせている。毎日、午前中に市場に行って、長女から弁当を受け取っている。
 介護は夫が行っているが、家事については十分にできていない状況である。
 長女は、市場の店のほかにも仕事をしている。
 次女は、両親の生活を心配しているものの、自分の生活に追われており、市内に住んではいるがあまり行き来はない。長男は市内在住だが、音信不通である。

利用者・娘の希望
 利用者は家族の協力に期待しているが、娘や息子にはそれぞれ家族があり、引き取って介護する意思はない。長女・次女の同じ意見として、「施設入所はお金がかかるので入れたくない」「父を一人にさせたくない」などの言葉も聞かれた。

家屋の状況
 田園が広がる山のふもとにあり、民家も少なく交通の便も悪い。一軒家の平屋。老朽化しており、シミだらけの畳、カビだらけの壁、ブカブカした床、はりめぐらされたベルトコンベアーの紐がある。

既往症
 脳梗塞後左片麻痺、糖尿病、末端肥大症、高血圧症

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。