メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第25回 初回面接で信頼関係を結べなかったケースを振り返る
(2001年2月号(2001年1月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Sさん(在宅介護支援センター、看護婦)

事例の概要

クライアント
T氏 男性 83歳 要介護3
既往歴 脳梗塞(平成2年) 左片麻痺
現病歴 前立腺肥大手術後筋力低下

家族構成
本人、妻(80歳)、孫(16歳)の3人暮らし。
長男(55歳)は東京、長女(53歳)は隣市に在住。長男は週末に来るが、介護はしない。主に長女が援助している。

本人のADL
食事 用意されれば自立、フォークスプーン使用。
排泄 尿取りパッドおむつ着用、尿意、便意あり。
移動 杖歩行可。
入浴 一般浴槽で介助を受けている。
痴呆はないが、頑固で怒りっぽい性格だという。

妻の身体状況
 白内障、網膜剥離、右肩腱断裂、腰痛、膝変形痛、子宮脱、膀胱脱による失禁、喘息、神経痛。これらの諸症状により、寝たり起きたりの生活。ADLは一応自立しているものの、IADLに援助が欲しいという状態であった。

孫について
 母親は出産後間もなく亡くなる。父親(T氏の長男)が東京で事業を営んでいる関係で、幼い頃から祖父母の元で育てられる。現在、高校1年生。

妻の訴え
 前立腺の手術後転院し、今後老健でのショートステイを経て在宅へ戻る予定だが、自分には持病があり虚弱なため、介護に不安を感じる。夫は頑固な性格で、言い出したら聞かない。今後の生活を考えると、帰ってくるのが怖い。

長女の訴え
 父が帰ってくることで、母の状態が悪化してしまうのが心配。自分は家業(クリーニング店)もあり、できるだけ手助けをしたいとは思っているが、一緒に住んでいるわけではないので、十分なことができない。ヘルパーの派遣は母が楽になるので賛成。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。