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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第26回 入院を断り続ける夫婦を他機関のコーディネーターとチームで支える
(2001年3月号(2001年2月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Uさん(訪問看護ステーション、看護婦)

事例の概要

 S氏 84歳 女性 気管支喘息・腰椎圧迫骨折・脳梗塞(後遺症なし)

現病歴

 昭和37年に喘息発症、昭和59年に公害認定される。自宅近くのクリニックに通院していたが、平成11年3月、喘息の重積発作でA大学病院に入院。一時は挿管され重体に陥ったが回復。入院中に脳梗塞・腰椎圧迫骨折を併発し、8月5日に退院となる(医師より「在宅生活は困難」と転院を勧められたが拒否)。退院直後はA大学病院の訪問看護を週2回受け、同月30日に当ステーションに移行した。同年12月、A大学病院に再入院、平成12年1月中旬にB病院へ転院。5月、在宅復帰を希望しB病院を退院、現在に至る。

医療体制

 A大学病院には入院費の未納分があるため、かかわりを拒否され、B病院退院後は、B病院が遠いため、自宅近くの病院に通院するようになった。以後、月1回介助にて通院。

内服薬

 プレドニン(5㎎)、ダイアート、パナルジン、ロカルトール、テオドール、ムコソルバン、ムコスタ、アルデシン吸入

生活歴

 若い頃は和服の仕立てをしていた。40歳を過ぎてからバーを経営、その頃店でピアノの弾き語りをしていた12歳下の夫と知り合い、夫の家族の反対を押し切り結婚。65歳頃、経営不振のため店を閉めた。その後、夫はたばこの自動販売機の交換の仕事をしている。

経済状況

 本人の公害補償手当・障害年金、夫のスモン病による補償手当、たばこ自販機の収入。
 かかわり始めた頃は、入院費用の滞納があり、毎月17万円ずつ返済していた(その後完済)。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。