福祉の現場で思いをカタチに
~私が起業した理由 ・トライした理由 ~
志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!
【毎週木曜日更新】
第15回 ①大井妙子 認定NPO法人ももの会 理事長
住み慣れた地域に安心して暮らし続けるために
NPO法人化して杉並区から運営を受託
認定NPO法人ももの会 理事長
大井 妙子(おおい たえこ)
主婦の傍らさまざまなボランティア活動に参加し、1999年、地域住民とともに「ももの会」を立ち上げる。それまでの杉並区の運営から住民参加型に切り替わるのを機に2000年、NPO法人を取得し、デイサービス事業を受託。同年4月に高齢者在宅サービスセンター「桃三ふれあいの家」の運営をスタート(2006年から自主運営)、2014年まで施設長を兼任。2011年、西荻・まちふれあい「かがやき亭」をオープン。2019年、認定NPO法人の認証を受け、活動開始から20年を迎えた。
- 認定NPO法人ももの会
桃三ふれあいの家 - 西荻・まちふれあい かがやき亭
https://sugimomo.jimdo.com
取材・文:進藤美恵子
──介護保険制度スタートの前年に立ち上げられた「ももの会」の誕生のきっかけを教えてください。
実は、介護保険制度に懐疑的だったんです。当時は未だ介護保険の内容がハッキリわからなくて。先に保険のことがあっても中身が無いのではないか、要するにもう一つの税金のようになるわけでしょ。40歳以上の人はみんな保険を掛けて、介護が必要になったときに保険を利用するというのでは、サービスの内容もハッキリしていなかった。
お年寄りがものすごくたくさん増えるのはハッキリしていたわけですから、本当に大丈夫かなと。ドイツでの介護保険制度の破綻もあって、勉強会に行っても、勉強会をしても分からない。でも法律でスタートが決まってしまっていた。それなら、「反対」と言うのではなくて、決まってしまったのなら中に入って、やれることがあるのではないかと思って。
そこで介護保険制度が始まる前年の1999年、住民同士で立ち上げたのが「ももの会」でした。住み慣れた地域に安心して暮らし続けるためには、どういう仕組みが必要かを地域住民で自ら考える任意のグループで、主婦ならではの地域ネットワークから誕生したグループです。
──翌2000年に開設された、「桃三ふれあいの家」の運営を担うようになった経緯は?
「ももの会」がボランティアで福祉活動を展開する中、杉並区(東京)の行政サイドが介護保険スタートに向けて、基盤整備をするための情報収集をしたんです。その結果、デイサービスを希望される方が大勢いらした。そこで杉並区では急遽、要望の多いデイサービスを開設することが決まり、少子化で空き教室のある桃井第三小学校内にも2000年の介護保険制度スタートと同時に開設することになったのです。
デイサービスの開設にあたり、杉並区では業務の事業の主体を民間の市民に投げかけてくれました。それならやってみようかということでNPO法人(特定非営利活動法人)を取得し、「NPO法人ももの会」として杉並区と運営の委託契約を結び、2000年4月に「桃三ふれあいの家」の運営をスタートしました。
──さまざまな法人格がある中で、NPO法人だった理由は?
行政側からのNPO法人取得の要請もありましたが、NPOだからこそできる仕事があるのではないかと思ったからです。
それは何かというと、市民と一緒に協力してやるということと利益を追わなくてもいいということです。例えば利用者の方へのサービスに対して、株式会社では利益が目的です。利益を追求しなくてもいいスタイルであれば、単なるサービスの売り買いではなくて、よりよいサービスを市民として自分たちも使える介護保険を目指していけるのではないかと思ったからです。
NPOが運営を担うことで、「介護保険を豊かに使えるようにしていこう」をモットーにしています。「桃三ふれあいの家」の立地は小学校ですから、子どもたちとのふれあいもあり、その子どもたちとのふれあいと地域の人との協力や参加もあり、それをあわせて運営をしていくことでより豊かなサービスを提供する。それにより稼働率も上がって、お年寄りがより質の高いサービスを受けられ、より元気になっていけるのを目指しています。
──ありがとうございました。
次回は、「桃三ふれあいの家」の運営をスタートしてからのことについて伺っていきます。
「桃三ふれあいの家」。
左端に見える緑色は校庭のフェンス。
子どもたちの元気な声が響く校庭は、
利用者の方の散歩コースの一つ
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「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます
本サイト : 介護職に就いた私の理由(わけ)が一冊の本になりました。
花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館