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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

支援条件の改善課題を明らかに

 障害者支援施設の神奈川県立中井やまゆり園で、拘束の虐待事案が明るみに出ました。

 「自閉症で強度行動障害のある」一部の利用者を、1日20時間以上個室の外側から施錠して閉じ込めてきた虐待事案です(https://nordot.app/814416950959013888)。




 中井やまゆり園の菅野大史園長は、共同通信の取材に対し、「行動障害がある入所者の安全のため、やむを得ない。短くするように取り組んでいる」と話しています。障害者支援施設で発生する虐待事案が明らかになるたびに、施設側の説明に出てくる「決まり文句」です。

 拘束は、切迫性・非代替性・一時性の3つの要件を満たした上で、拘束中の観察記録を残すことが制度上の決まりです。したがって、日常化した長時間の監禁というこの虐待事案に弁解の余地はありません。

 ところが、この施設の園長は「安全のため、やむを得ない」と虐待を正当化しています。

 虐待が日常化しているにも拘らず、本心では反省しないのです。表向きの謝罪はするものの、内部的には「やむを得ない」と正当化し続ける犯罪的な姿勢は、障害者虐待防止法の施行から、全国各地の施設従事者等による虐待で繰り返されてきました。

 このような虐待ストーリーの共通点は、「異食や強度行動障害のある知的障害と自閉症スペクトラムを併せもつ人」が被虐待者で、処遇困難度の高い利用者を支援する諸条件も専門性もない施設とその職員が虐待者となり、日常化した虐待を根本的に改善する管理能力のない管理職のいることが、定番のキャスティングとなってきました。

 現場の支援者にとって、「拘束もやむを得ない」と感じてしまうほどの処遇困難に直面することがあるのは事実だと思います。でも、「やむを得ない」と正当化して拘束を日常化するのは、支援の放棄です。

 それ以上に問題であるのは、障害のある人の中には「監禁するしか方法のない人がいる」と支援に責任を持つべき施設の長が公言することによって、障害のある人に対する誤ったイメージや偏見差別を社会的に拡大してしまう点です。

 「やむを得ない」と感じてしまうほどの事態を改善するためは、どのような専門的支援が新たに必要なのか、感覚過敏への刺激を低減するための環境改善について構造化・静謐化の観点からどのような課題があるのかについて、このような施設が真摯に追究しているという話を耳にしたことはありません。

 障害特性にふさわしい支援の専門的スキルは多くの職員に欠如したまま、施設環境についても建設当初から基本的にはそのまま、そして、ありきたりな経験則に基づく支援を続けてきて、異食や行動障害が拡大した挙句の果てに、虐待防止の取り組みへの方向づけを怠ってきた管理職が「利用者の安全のため、やむを得ない」と開き直る。これでは、構造的な「虐待犯罪」と言って差し支えない、極めつけの人権侵害事案です。

 それでも、この施設のホームページは次のように謳います。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/a4b/cnt/f5889/p1204898.html

「基本理念
1.人としての尊厳を重んじ、利用者本位のサービスの提供に努めます。
2.一人ひとりの個性に応じた豊かな地域生活を目指します。
3.専門的、広域的、先駆的な県立施設の役割を推進します。強度行動障害、発達障害への適切な相談・支援が受けられる体制を構築します。」

「基本方針
1.強度行動障害を支援する中核機能の強化【強度行動障害への取り組み】
2.虐待防止と質の高いサービス提供
3.豊かな地域生活の推進
4.発達障害児者への支援体制整備の強化【かながわA(エース)の取組み】」

 前回のブログで指摘したとおり、理念と実態が著しく乖離する施設の虐待事案です。できもしないことをホームページで宣伝するのは、誇大広告または詐欺ではないのですか。

 このようなひどい虐待事案が各地で繰り返し発生している事実は、虐待の発生するそれぞれの施設や虐待者である職員個人に虐待の発生の問題を還元できない、社会的で構造的な性格のあることを明白に示すものです。

 県立施設を存続するための方便として、選りすぐりの「処遇困難ケース」を集めて発達障害のある人への支援体制を整備しているかのようにいいながら、実態は長時間の施錠監禁をしてしまう。この事実は、現行の職員体制、職員の専門性と支援スキル、施設環境及び管理運営の体制の下では、「基本理念」や「基本方針」に書いていることは実現できないことを証明していると考えます。




 そこで、強度行動障害のある人たちへの必要十分な支援を実施するためには、どのような職員の専門性が必要なのか、どのような環境条件を整備すべきなのかについて、粘り強く明らかにしていく点にこそ、支援者、支援事業者及び国・自治体の社会的責任があるのではありませんか。

 施設長が虐待の事実を前に開き直るのであれば、神奈川県が責任をもって懲戒処分を行うか、ご本人が自主的に退職するべきです。


 昨今、街の街路樹や駅ターミナルのロータリーなどに大群の群れでねぐらを作り、迷惑がられているムクドリです。このムクドリを追い払うために、鷹匠にワシタカ類を飛ばすような試みをテレビが取り上げますが、テレビの「報道もどき」にある典型的な無責任「報道」です。

 ムクドリの名称は、椋の実を食べることに由来しますが、昆虫類を最もよく食すために、畑や芝の害虫を抑制してグランドキーパーの役割を果たしてくれる野鳥です。耕運機で耕した直後の畑に群がって、昆虫を食べるムクドリの姿はまことに頼もしい。「めいわくな鳥だ」とする人間の決めつけをひたすら正当化して基準にするのではなく、野鳥との共存のあり方を追究すべきでしょう。