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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

ワクチン難民

 「ワクチン接種の予約を手伝ってくれ」と、友人から電話連絡が入りました。まず、どういう事情なのかを尋ねました。

 彼の居住する自治体では、これまで、70歳以上の高齢者の優先接種に取り組んできましたが、来週から65歳以上の予約が始まります。そこで、彼は予約の手順について、自治体の設置するコールセンターに電話をかけて訊ねてみたそうです。

 予約の方法は、電話とWebサイトによる2つの方法があります。ところが、午前9時からの予約がスタートすると、電話は即パンク状態となって、初日につながるのはかなり難しく、Webサイトの方もサーバーが重くなってつながらない状態が続くと言うのです。

 これが、自治体のコールセンターのオフィシャルな説明です。

 そこで、不安になった彼は更に訊ねました。予約できない状態でまごまごしていると、近所の医療機関の予約人数が一杯になって遠方の医療機関に行くしかなくなることもあるのか、また、ワクチン接種を受けることのできる日も遅くなってしまうのか、と。

 コールセンター氏のたまわく、「その通りです。単純に早い者勝ちの受付方法ですから、手続きに難しさのある方が後回しになる点では、まことに不合理です」。予約システムの問題点を明らかに話す正直な説明には、拍子抜けするほどあっけにとられたと言います。

 予約手続きの難しさからワクチン難民の発生する深刻な問題は、すでに指摘されています。新聞が報道の中心で、「おわコンのテレビ」はあまり取り上げないようです。インターネットで検索すれば、ワクチン難民の深刻な実態がざくざく出てきます。

 各地のコールセンターには、すでに、ワクチン接種の予約手続きに係わる苦情が山のように寄せられてきたことは間違いありません。そのため、予約システムに問題のあることをむしろ最初に「あっさり認めてガス抜きしてしまう回答マニュアル」を、自治体から業務委託されている民間企業が作り上げたのではないでしょうか。

 その上でコールセンター氏は、「早い段階での予約をお望みでしたら、電話とWebサイトの両方を同時進行で臨むことが『当たる確率』を高くします」と言います。まるで人気グループのコンサートチケットを購入するようです。

 「それでも、初日はアクセスがかなり難しいのが実情です。が、電話予約とWebサイトの予約は、実は一つの予約システムで運用されていますから、17時にその日の電話予約が終了すると、24時間受付をしているWebサイトの方はつながりやすくなる仕組みになっています」とのご教示でした。どこまでも正直な説明には感心します。

 で、「朝の9時からの予約チャレンジを電話とパソコンの二刀流でするから、お前にどちらか一つを手伝ってもらえないか」と友人は依頼してきたのです。ここは「情けは人の為ならず」と引き受けた…。いいえっ、悪友の予約なんてものは正直どうでもよくて、ワクチン接種に係わる予約手続きの実情を知りたくて話に乗ることにしました。

 友人と分担して予約にチャレンジしてみると、なるほど電話もインターネットも全くつながる気配がありません。電話は「リダイヤル」を、Webサイトは「再読み込み」をそれぞれ果てしなく繰り返します。

 すると、Webサイトは運よく予約サイトにつながることもあるのですが、画面の指示に従って手続きを進めて次のページに進むボタンをクリックすると「現在アクセスが集中しているため、時間を置いてお試しください」と突然アクセスが中断して途切れてしまう。

 Webサイト上の予約手続きが途中まで進んでいるところを「寸止め状態」にされて、ふり出しに戻されるのですから、もうガックリ。これは、「インターネット型心理的虐待」と言っていい。この「寸止めふり出し」状態を少なくとも20回は喰らいました。

 このような状態が1時間以上は続きました。友人と私が二人掛かりで挑む予約の戦闘状態は、手に汗握る攻防を続けているのです。

 そうして、リダイヤルと再読み込みをやり続けた10時過ぎになって、ようやく、Webサイト上で予約の完了ページまで到達することができました。この瞬間、トランペットのファンファーレが鳴って、くす玉でも割りたい心境でした。

 せめてクラッカーとシャンパンくらいは用意しておけばよかったと感じましたから、これから予約手続きに挑む方には、これらのご用意をお薦めします(笑)。 そうでもしないと、煮えくり返った腸が静まらないからです。

 予約は取れたのですが、友人と私は夕方まで、電話予約のチャレンジを試し続けてみました。どの程度つながらないのかを確かめておきたかったからです。二人とも、電話予約の終了時刻である17時まで1度もつながることはありませんでした。

 その日の夜に友人から電話があり、「22時頃の段階で、Webサイトはつながりやすくなっていて、自分の予約状況を確認することができた」と報告してきました。

 これでは、固定電話と携帯電話しか通信手段のない人や手指の操作に不自由のある人は、予約の仕組みに特別の困難が設けられていると言っていい。Covid-19に係わる「安心と安全」の確保をめぐって、容認すべからざる不平等・差別が放置されています。

 その一方で、モビリティに何の問題もない若者や高齢者は、大量に空きの出た大規模接種会場にまで足を運んでワクチン接種を受けるし、現役の労働者には職域接種の準備が進められています。

 ワクチン接種を速やかに進めようとする施策の背後で、通信手段の貧しさと通信機器の操作に困難のある人たちがワクチン難民に追いやられている実態があるのです。この現実を正視し、速やかに支援の手立てを講じることが必要だと考えます。

 実際、都内の公的病院でワクチン接種をしている医師に話しを聞くと、真っ先にワクチンを受けに来る人は「高齢者でも、行動力のある元気な人」である点がもっとも気がかりだと言います。つまり、重症化リスクの高い高齢者ほど、予約のアプローチに高い敷居ができているのではないかと言うことです。

 さて、小学校の運動会では、子どもたちの競技だけでなく、父母などが参加する「パン食い競争」が余興の出し物に出てきます。この発想を今回のオリンピックにも活用してはいかがでしょう。

 IOCやJOCの関係者が参加する「ワクチン接種予約競争」を新しい「eスポーツ競技」として、開会日辺りに設けるのです。パンデミックのさ中に開催するオリンピックの余興には打ってつけです。

路上呑みはダメで、路上飲み食いはいいらしい川越

 東京の緊急事態宣言が解除される20日の日曜日まで、川越の「食べ歩きロード」はマスクを外した大勢の観光客が、スイーツにクラフトビールに焼き鳥と、路上で騒いで飲み食いしています。クラフトビールを路上で飲んでいる若者のグループに尋ねてみると、「東京だと路上呑みに厳しい視線があるけれど、川越は大っぴらに飲めるところがいい」とはっきり言います。

 都心では駅前広場や公園での路上呑みを批判して、警備員まで動員して排除してきた地域がある一方で、埼玉のまん延防止措置の実態は、少なくとも川越では、路上飲み食いを野放しのまま放置してきました。