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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

 今年度、全国の自治体は、来年度からの第6期障害者支援計画の策定に努力を傾注してきたはずです。

川越市のPCR検査場(手前)と保健所

 「はずです」といういささか煮え切らない言い方をするのは、今年度は多くの自治体がCovid-19の問題に振り回されてきた現実があるからです。はじめての感染がわが国で確認されてから1年が経つというのに、福祉・介護の現場における感染事案の発生はそこかしこで絶えることなく続いています。

 福祉・介護の支援現場における感染防止対策は、支援者と利用者の全員に、定期的なPCR検査を実施する以外に手立ては無いと考えてきました。今や市中感染の広がりが重大な懸念となっているにも拘らず、未だにクラスター感染が疑われる場合の検査を優先することが行政施策の基本になっています。

 そこで、個人や施設・企業が自己防衛に走り出し、¥3,500の自己負担で検査をしてくれるような民間の医療機関を頼る動きが広まっています。感染防止の手立ての基軸となる検査の体制についてさえ、現在の対策がどこまでの目標を据えているのかさっぱり理解できません。

 多くの自治体は、できるだけの対応を毎日し続けてきたというのが実情でしょうか。それでも、事例にもとづいて問題を洗い出してみると、すぐさま様々な問題が明らかになってきます。

 たとえば、先日のさいたま市地域自立支援協議会虐待防止部会の議論の中で、虐待対応における分離保護をめぐり、Covid-19禍の深刻な問題のあることが指摘されました。

 虐待を被った障害のある人を分離保護しようとしたところ、受け入れ先となる施設がPCR検査の結果が陰性であることを確認してからにして欲しいと、緊急の一時保護を拒否したのです。

 拒否した施設に非がある訳ではありません。むしろ、感染症法第2類に指定されたウイルスに感染していないことを条件に施設利用を認めるのはまったく正当な手続きです。ところが、この当たり前の原則を守って速やかに保護を実施できる体制は未だに整備されていないのです。心の底から、苛立ちを覚えます。

 Covid-19の感染拡大によって、外出自粛が叫ばれてステイホームが増えました。通所系の支援サービスや訪問介護が減少する中で、家族が長時間ステイホーム状態になると、家族全員にストレスが溜まりがちです。障害のある人も不穏や行動障害が拡大しがちとなり、不適切な方向に向けて家族関係の煮詰まる事例が数多く確認されてきました。

 そうして、仕事部屋のない自宅でテレワークをする親が障害のある子ども・若者に虐待をするケース、外に行き場を失った障害のある人がお家で行動障害を拡大したところを家族に首を絞められた事案等、虐待と不適切な関与に該当するケースはCovid-19の問題から間違いなく増加しました。

 したがって、不適切な関与から虐待への発展を防止するとともに、すでに虐待化したケースを重症化させないためにも、速やかな保護と分離が必要不可欠なのです。ここで、保護の施設入所のためのPCR検査が即応しないというのは、今日でも検査体制が十分でないのか、行政に課題の自覚がなくて放置しているのかのいずれかです。

 さいたま市では、Covid-19禍によって増加の確認されてきた虐待ケースについて、予防的なステージからの対応を始めることにします。新年度より市の単独事業である障害者緊急一時保護事業の利用を拡大することによって、不適切な関与の状態にあってこのまま放置すれば虐待に発展することが心配されるケースへの予防的対応に、分離保護が実施できることになります。

 このような対応がより有効に虐待防止のために機能するよう、すべての福祉・介護サービスの利用者と支援者のすべてに対する定期的なPCR検査を実施するとともに、緊急一時保護のような場合にはPCR検査が即応できる体制整備を、ワクチン接種の実施前だからこそ実現すべきです。

 冒頭で指摘したように、今年度は第6期障害者支援計画の策定年度でした。自治体の計画策定は自治体住民の参画にもとづく営みですから、単なる国の下請け作業でないことは言うまでもありません。実態はともかくとしてですが…。

 Covid-19禍の下で、新たに発生した障害のある人たちの様々な困難とニーズに対して、それぞれの自治体がどのような施策を具体化したのかについて点検してみたいと考えています。とくに、虐待防止の取り組みに注目しています。

雪化粧した武甲山

 南岸低気圧の通過に伴い、埼玉県ではうっすらと雪が積もりました。Covid-19禍の雪融けは、まだまだ見通せませんね。