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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

Covid-19を踏まえたこれから

 今年度は、第6期障害者支援計画の策定年度です。現在、国・地方自治体はCovid-19をめぐる対策に追われる渦中にありますが、障害者計画・障害福祉計画に係る中長期的な展望を明らかにする努力も必要不可欠です。

 まず、Covid-19の感染拡大と社会の急速な変化によって、家族の抱える生活困難の構造的変化を踏まえた支援策を検討する必要があります。

 先の土曜日に、京都市左京区で特別支援学校に通う17歳の息子を母親(52歳無職)が絞殺するという事件の一報が入りました。近所の人たちは一緒に買物をする様子から「仲の良い母子」と受けとめていたにもかかわらず、母親は警察に「息子の介護に疲れた」と供述しています。

 母親が無職で息子さんが特別支援学校の卒業を目前に控えるライフステージにおいて、Covid-19の影響を受けたもろもろから(失業、休校中の養育・介護、卒業後の進路不安の拡大など)、将来を悲観する方向で母親の気持ちが煮詰まって引き起こされた究極の虐待事案であるように感じます。

 障害のある子ども・成年の養護・介護にかかわるご家族の声の多くは、Covid-19の「第一波は何とか乗り越えたが、これが第二波、第三波と押し寄せると持ちこたえることはできない」という点に切実さが共通してみられます。

 わが国における障害のある人の「自立した地域生活」の実態は、かなりの部分で家族の犠牲を強いるものでした。ご両親は自身の最期を迎えるまで障害のあるわが子の養護・介護に追われ、それをきょうだいに引き継がせていく暮らしと人生の成り立ちには、障害のある人の真の自立を阻み、家族内部の不適切な養護から虐待を発生させる諸要因を生み出してきました。

 Covid-19は、このような家族扶養の構造とそれを前提にした障害者施策の限界を白日の下に晒しています。第6期計画は、この生活現実を直視した支援策でなければならない。

 もう一つは、Covid-19の感染防止対策によるテレワークの急速な拡大が、「ディーセント・ワークへの障害のある人の権利」(ILO)の実現に向けた具体的で新たな展望を拓いている点です。

 わが国の国・自治体の行政機関のほぼすべて(全国の教育委員会を含む)と裁判所・国会が、障害者雇用促進法に基づく法定雇用率をずっと守っていない事実が明るみに出たときがありました(2018年8月27日ブログ)参照)。

 この当時、「自力通勤できない」ことを見苦しい言い訳にする機関が山のようにありました。首都圏、とりわけ東京中心部の公的機関の雇用条件に「自力通勤」を入れると、障害のある人の大部分を雇用から排除する間接差別が成立します。東京のラッシュアワーに通勤できる障害のある人は、ごく限られた人になるからです。

 ところが、障害のある人を社会的に排除する口実となってきた「自力通勤」が就労条件から消失する時代がついにやってきました。これまでも「在宅就労」の重要さは繰り返し指摘されながら、わが国が今さら反省している「デジタル化の遅れ」のために、障害者雇用の抜本的な拡充には至ってこなかった恨みがあります。

 その他、職場の合理的配慮の提供に「過重な負担」があるために実現してこなかった問題の多くについても、テレワークは解決への新しい展望をもたらすでしょう。肢体不自由だけでなく、難病や発達障害のある人の雇用についても、これまでにない就労機会の拡充につなげることができるはずです。

 全身性障害のある国会議員の議員活動から、就労中に介護サービスを利用できなかった問題が社会的に克服されるようになってきたことと相まって、テレワークは障害者雇用の新たな地平を切り開く可能性を持っています。

 テレワークの拡充には、これまでの労働安全や合理的配慮の提供義務の範囲と内容に、新たな検討課題があることに留意する必要があります。その上で、テレワークを障害者のディーセント・ワークにつなげていく施策を第6期計画で具体化することが重要です。

久しぶりの夕焼け-昨日

 さて、昨日の日曜日は、久しぶりにお日様が世の中を照らしてくれました。洗濯物の天日干しの有難さを実感できる日でした。そこで、このブログでこれまでの呼称に用いてきた「新型コロナウイルス」をCovid-19に変えることしました。

 石油製品を中心とする住宅設備総合メーカーのコロナの社長さんが、「コロナではたらくかぞくをもつ、キミへ」というメッセージを新潟日報に掲載したことを知りました。「コロナ」に係るネーミングが風評被害や従業員の子どもたちへの「いやがらせ」「いじめ」につながることを心配してのことでしょう。

 住宅設備総合メーカー「コロナ」(https://www.corona.co.jp/company/about/post-1.html)の社名由来は太陽のコロナにあります。私も太陽観測をしていた時代(最近では金環日食!! 2012年5月21日ブログ参照)があり、しかもコロナさんの石油ストーブを3台愛用しているので、この社長さんのメッセージに熱いエールを送りたいと思います。