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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

あをによし再び

 奈良市自立支援協議会の障害者虐待防止研修会に講師として参加しました。以前にもこちらの研修に参加しています(2017年2月6日ブログ参照)。

 そのとき以来、3年が経ちました。前回の2017年の研修の直後に、国の障害者虐待防止マニュアルは虐待がどのような刑法の罪に該当するのかを提示するようになっています(2017年9月19日ブログ参照)。復習になりますが、次のようです。

  • (1)身体的虐待:殺人罪、傷害罪、暴行罪、逮捕監禁罪
  • (2)性的虐待:強制わいせつ罪、強姦罪、準強制わいせつ、準強姦罪
  • (3)心理的虐待:脅迫罪、強要罪、名誉毀損罪、侮辱罪
  • (4)放棄・放置:保護責任者遺棄罪
  • (5)経済的虐待:窃盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪

 この時点で、虐待防止の取り組みは虐待防止法のスキームの中だけでは対応しきれない実態にあることを、ある意味では、国が認めたことになるのかも知れません。

 実際、この3年間に、刑事事件にしてしまう事案が目立つような気がします。施設従事者等による虐待の発生が明るみに出ると、すでに虐待者の職員は解雇されており、事業所が警察に届けて刑事事件にしてしまうのです。

 この時点で、事業所はあたかも「被害者」であるかのように振舞う。このような傾向的態度の事例の一つとして、津久井やまゆり園の事件が該当したようにも思えます。

 つまり、施設従事者等による虐待が発生する事業所・施設の組織的で構造的な問題は一切明らかにされないのです。虐待者と被虐待者の二者関係に閉じられた問題に矮小化する。

 管理者は虐待防止にかかわる職員の方向づけをどのようにしていたのか、支援スキルを向上させるための研修内容がどうであったのかについて等、組織としての問題は何一つ明らかにされないまま不問にして蓋を閉じてしまう。

 このような事業所・施設の傾向的態度を助長する自治体の問題も重大です。私が相談を受けた虐待事案の中には、通報をしても実質的には何もしないような無責任極まりない自治体が幾つもあります。自治体の不作為責任を追求する訴訟をおこす以外、現状を是正する手立てはないのではないかと思えてきます。

 たとえば、障害者支援施設の利用者の生爪が剥がされた事実があり、その写真が電子データであります。ところが、それを自治体の担当者に見せても、「施設職員がやったかどうか分からないでしょ」と言うだけで、後は何もしません。

 そして、施設は「私どもはどの職員に訊いても、そんなことはやっていないと申しております」となって、何事もなかったようにお仕舞になるのです。これは愛知県某市の事例で、市の職員はまじめに事実を確認しようとさえしませんでした。

 また、他の市では、施設利用者に痣が絶えず、特定の職員による暴言と脅迫があることを利用者本人が申し立てているにもかかわらず、「証拠がありません」で終わりにします。

 利用者のご家族が、仕方なく小型録音機をセットして虐待場面の音を拾い、自治体に持っていくと、ようやく重い腰を上げてくれます。しかし、この市の職員は「暴言は認めますが、叩いているかどうかは映像資料がないので身体的虐待は認められません」と言いました。

 このような無責任極まりない自治体が出現するのは、高齢者虐待と障害者虐待の防止法が丸投げ型の地方分権施策であることに由来します。

 国はマニュアルづくりと研修を実施するだけですから、当事者・支援者等が地域の内側から虐待防止の取り組みを作り出す努力をしない限り、自治体がサボタージュしようと思えばサボタージュできてしまう実態が出てくるのです。

 こうして、虐待防止の取り組みの自治体間格差は途方もなく拡大します。

 多くの自治体では、障害者施策推進協議会や自立支援協議会は、事務局機能を自治体が民間に丸投げするなどして形骸化しがちですから、当事者と支援者の参画は名目的で、虐待防止に有効な施策とネットワークの形成は一向に進んでいません。

 このような問題を点検する能力のある地方議会の議員はほんの一握りですし、点検する視点さえ持っていない議員がほとんどではありませんか。市町村における虐待防止の実務を第三者機関が点検するような仕組みもありません。

 すると、虐待被害にあった障害のある人・家族は、警察に被害届を出して刑法から問題への対処を進め、自治体に対しては不作為責任を追及する訴訟を起こすほかないところにまで追い込まれてしまうのです。

 施設従事者等による虐待の被害者の中には、結局泣き寝入りして他の事業所・施設を探すほかなかった方や、虐待に詳しい弁護士をやっとの思いで探し当てて「有効な戦略」の検討を余儀なくされる方が大勢います。

 自治体行政や事業所・施設の側には、障害のある人と家族に対する圧倒的な力の優位性があります。自治体と障害者支援の事業所・施設が虐待防止法のスキームを有効に機能させようと努力しないことは、当事者・家族への容認することのできない構造的な差別です。

 虐待防止の取り組みを進める観点から、自治体と障害者施策推進協議会や自立支援協議会等の役割を再度見つめ直す必要が、多くの地域にあると考えています。

林神社-饅頭の祖を祀る

 さて、奈良には由緒正しい「お饅頭の神社」があります。近鉄奈良駅にほど近いところにある漢国神社(かんごうじんじゃ)境内の中に、日本における饅頭づくりの祖である林浄因(りんじょういん)を祀る林神社があります(https://narakanko-enjoy.com/?p=12855)。

 林浄因は、1349年に中国の宋から日本にやってきて、本格的な饅頭を日本に伝来した人です。現在の林神社の所在地の傍に、饅頭屋を構えていたと言われています。日本における饅頭の租とくれば、全国の饅頭製造業者から厚い信仰が寄せられるのも当然です。

 毎年4月19日に饅頭製造業者の協力の下で、林神社では「饅頭祭」が開催され、饅頭とお抹茶が振舞われるそうです。このお祭りは、何かほのぼのしたものを感じさせてくれてますね。