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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

日本は本当に子どもの権利条約の締約国なのか

 

中学受験をめぐる教育虐待の末に息子を包丁で殺傷した父親に対し、7月19日、名古屋地裁は殺人罪で懲役13年の実刑判決を言い渡しました。

 この裁判を傍聴した教育ジャーナリストのおおたとしまささんが、裁判で明らかになった親子関係の経緯を詳しく報じています(https://bunshun.jp/articles/-/12934)。

 名門中学への進学にかかわるこの家族の3世代にわたる教育虐待、被告人である父親は手元にあったカッターナイフを持ち出したところ息子が怯えて勉強をするようになったことに味を占めたこと、被告人も中学受験の時に父親(被害児童の祖父)から包丁を向けられた経験を持つこと。

 そして、この祖父は孫が受験のために包丁で刺し殺されたことについて「中学受験生の親はそれほど必死になるものだから、やむを得ないと思います」と法廷で証言しています。

 程度の差はあるとしても、このような親子の現実は、ますます深刻になっているように思えてなりません。

 先日、東京麹町の高級マンション街を歩いていた時のことです。私の歩く道に脇道から合流することになった親子がいました。土曜日の17時半頃です。母親は高級感あふれる美しい身なりをしていて、子どもはランドセルを背負った小学校5~6年生でした。

 母親は子どもに向かって、一方的にまくしたてています。
「学校が終わってから5時間も遊んでいるって何を考えてるのよ」
「この5時間に、5時間分の勉強の差がついてしまったよ」
「懸命に勉強している他の子たちにつけられた、5時間分の差を、あなたはもう埋められないのよ」

私は5分ほどこの親子と3mほど離れて歩き続けましたが、ずっとこの調子です。子どもが何か話すことはありませんでした。

 「あなたの受験合格のためを思って…」「あなたの将来の自立を心配して…」等々と、「あなたのためを思って型虐待」は、力の優位性をもつ親が自己を正当化し、子どもに反論を許さず、心理的に拘束して逃げ場を断ち切ったところで行う徹底的な心理的虐待です。

 埼玉県障害者施策推進協議会のワーキングでは、障害のある子どもに対するある種の教育虐待が問題指摘されています。

異業種からの参入組が目立つ放課後デイサービスのパンフレットを見せてもらいましたが、目が点になりました。A放課後デイサービスは「発達障害のある子どものしつけに重点的に取り組んでいます」、B放課後デイサービスは「スポーツを通じた身体能力の発達に力を入れています」、Cでは…。

 放課後デイサービスというより、塾か習い事のようなキャッチコピーと宣伝文句があふれ返っているのです。そこに記された支援内容は、高度な専門性をもつ支援経験ゆたかな支援者が複数人で取り組むことを前提しなければ、とても実現することはできません。はっきり言うと、「絵空事」をでっちあげているだけであることはすぐに分かります。

 ところが、多くの父母には、「しつけてもらうためにA放課後デーは月・水・金で、運動能力を高めるために火・木はB放課後デーに」と積極的に選択している実態があるといいます。

 もちろん、その成れの果ては悲惨です。中学生辺りから行動障害が拡大するようになるケースや、特別支援学校の高等部に入って排泄自立が逆戻りしてできないようになるなどの事例が報告されました。

 障害のあるなしにかかわらず、親が子どもと向き合って、子どものニーズや力にふさわしい家庭教育を追求する営みが消え失せています。「このような力をつけてやりたい」という「親の一方的な目標」だけが立てられて、そのために必要な子育ての営みはすっ飛ばし、外部サービスを購入してそこに丸投げする。

 「育児は育自」などという言葉はもはや死語となり、「子育てのアウトソーシング」が普遍的な広がりをみせるようになっているのです。

 簡単に要約すると、能力主義的な競争が激しくなる中で、子育てと教育の私事化と市場化が進むことは、教育虐待を産出する構造的な要因となっているということです。

 7月18日の朝日新聞朝刊は、東京都の児童相談所に付設される7か所の一時保護所を弁護士からなる第三者委員会が調査したところ、私語禁止、会話制約、目を合わせるのも禁止など、保護所が「子どもの人権侵害」の巣窟と化している実態が明らかになったことを報じました。

 第三者委員会の意見書によると、一時保護所の定員に対する入所率は、学齢男子で150%、学齢女子で138%と大幅な定員超過であることに加え、職員不足の続いている事態がこのような懲罰的管理を招いていると指摘しています。

 児童福祉法にもとづく一時保護となって、「人権侵害」に遭うという自治体は、来年巨額の費用をかけたオリンピック・パラリンピックを開催するというのですから、誰がどう見ても間尺に合う話とは言えません。

 子どもたちを大切にすることができていない国では、「スポーツの感動」だけを消費するのでしょうか。

 わが国は、果たして子どもの権利条約の締約国なのでしょうか。

乃木坂の国立新美術館

 さて、娘と特別の用事があって、乃木坂に行ってきました。六本木ヒルズがそびえ、小洒落た建物が並び、マンションの駐車場で国産車を見つけるのは難しい地域の一角に、国立新美術館があります。

 ここを覗いた後で、娘は某市の職員として夜の開票作業に駆り出されているというから、簡単に作れて抜群に旨い鶏モモの挽肉でつくる焼売の作り方を伝授しておきました。