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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

出でよ!妖怪、八百万の神々

地球は全てつながっている

 南太平洋のトンガの大規模な噴火による津波のニュースには驚きました。テレビ番組もこの件でもちきりでしたが、それにしても、約8,000kmも離れたトンガの異変が日本にこれほど大きな影響を及ぼすとは。つくづく地球は一つにつながっているのだな、と実感することになりました。

 また、「つながり」でプラゴミ問題のことも連想しました。ゴミを大量に排出する国々は、処理しきれないゴミを資源として売り、背に腹は代えられずに買う国々も処理しきれないため、排出元の国にまで及ぶような環境汚染を引き起こす。こうして、環境汚染は地球規模で循環してしまう、という問題です。

 津波は直線的連鎖、プラゴミは円環的連鎖と、違いはありますが、なるほどつながっています。そんな「つながり」に思いをはせていたせいでしょうか、子育て支援における保護者とのより良い関係づくりに関する研修内容を考えているときにも、ある「つながり」に気づきました。

 それは、マニュアルや実践例に従うのではなく、マニュアルや実践例の作り方という、いわば目には見えない「つながり」に気づくことの方が重要なのでないか、ということです。有名なトヨタ自動車の「かんばん方式」ならその方式の生みだし方、老子の格言なら魚の釣り方を学ぶことこそが重要なのですから。

見えない「つながり」こそ重要

 この、見えない「つながり」を見出すことの重要性は、業務の改善にも従事者による虐待の防止にも当てはまります。人が行うと人為的なミスが発生する危険性は高まりますし、非効率的なことも多いため、自動化やシステム化とブラックボックスの部分の増加は、いわば自然の流れだからです。

 つまり、何かを変えるとき、その影響を読み切れず、大きなトラブルを生み出す危険性は高まるわけです。したがって、仕組みや方式はシンプルでわかりやすいものにしたいですし、人がやるべきこととシステムで対応すべきことを峻別する必要が出てきます。そして、その「可視化」が有力な手段となります。

 いずれにせよ、見えないつながりを見出す力を養う必要がありますから、アクティブラーニングを進めたいところです。私の目には、研修でも大学の授業でも、事前学習では事前に資料を読み込み、研修や授業ではディスカッションをして、事後学習は論文を書くという、欧米スタイルが何だか良さげに映ります。

 もっとも、日本人には馴染みにくい、という話をよく聞きます。出る杭は打たれるため、主体性を発揮して「自分の頭で考え、判断し、行動し、結果で評価される」という経験が不足しているからでしょうか。あるいは、妖怪や八百万の神々を見出す力が、何らかの原因で封印されている、そんな目にみえない「つながり」が潜んでいるのかもしれません。

「二人の関係は秘密だよ」
「つながっていたとは!」