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ケアプランに活かす! 病気と薬の知識

【パーキンソン病】症状や種類から予後まで、ケアマネが押さえたいポイントを徹底解説! 【医師が監修】

【執筆・監修】

鶴岡浩樹

日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科(専門職大学院)教授
つるかめ診療所副所長
順天堂大学医学部を卒業後、 自治医科大附属病院総合診療部などでの勤務を経て、2007年につるかめ診療所(在宅診療)を開設。2013年より日本社会事業大学専門職大学院教授。

目次

1.パーキンソン病ってどんな病気?

手足のふるえなどが特徴的な疾患

 手足のふるえ、こわばり、動作が鈍くなる、転びやすいなどの症状を来たす疾患です。
 中脳の黒質という部位の神経細胞が減少し、体をスムーズに動かすことに関連するドパミンという神経伝達物質が減少します。それによって、脳が機能低下を起こし、「2.パーキンソン病の症状は?」に掲げるような症状が起こります。

2.パーキンソン病の症状は?

運動症状と、非運動症状がある

 パーキンソン病の症状には、運動症状と、非運動症状があります
 運動症状は、①無動、②筋強剛、③静止時振戦、④姿勢反射障害の4つが特徴的です。
 非運動症状としては、①自律神経症状、②嗅覚障害、③精神症状、④認知機能低下などが挙げられます。

運動症状

①無動

  • ・動作が緩慢になる
  • 表情の変化が乏しい(仮面用顔貌)
  • ・声が小さくなる
  • ・字が小さくなる

②筋強剛

  • ・上肢(腕や手指など)、下肢(膝や足指など)の筋肉が硬くなり、スムーズに動かせない

③静止時振戦

  • ・じっとしているときにふるえる
  • 親指と人差し指をこするようなふるえが特徴的

④姿勢反射障害

  • ・バランスがとれずに転びやすくなる
  • ・歩いているときに止まれなくなる
  • ・方向転換が難しい

⑤その他

  • すぐに歩き出せない。一歩目が出ない(すくみ足)
  • ・歩くとき、歩幅が狭くなる(小刻み歩行)
  • ・前のめりで歩き、歩いているうちに早足になる(加速歩行)

非運動症状

①自律神経症状

  • ・便秘、排尿障害
  • ・起立性低血圧
  • ・発汗障害
  • ・流延     など

②嗅覚障害

  • ・においがしない

③精神症状

  • ・うつ
  • ・身の回りのことへの関心がうすれる、着替えや洗顔などをする気力がなくなる(意欲、興味、思考の減退=アパシー)
  • ・幻覚

④認知機能の低下

  • ・物忘れ
  • ・いくつかの手順を踏む行動を計画できない(遂行機能障害)

3.パーキンソン病の予後は?

予後は約20年。生活への影響を押さえておくことが大切

ゆっくりと進行することが特徴
 パーキンソン病の予後は20年といわれ、ゆっくりと進行していきます。ホーエン・ヤールの重症度分類Ⅲ度以上かつ、生活機能障害度2度以上で難病に指定されますが、医学の進歩により、パーキンソン病の人の寿命は健康な人とほとんど変わらなくなりました。
 一方で、原因は明らかではありませんが、突然死することがあるとの報告もあります。

日常生活への影響
 麻痺は生じませんが、活動が減ることによる筋力の低下(廃用性筋力低下)を来たすため、リハビリテーションが重要となります。
 介護・医療現場では、転倒による骨折で寝たきりとなる事例が多くみられるため、注意が必要です。

パーキンソン病をきっかけに認知症へつながることも
 パーキンソン病においても、レビー小体(異常なたんぱく質)が沈着することが知られています。そのため、経過中に認知症を来たし、パーキンソン病認知症(PDD)になることもあれば、レビー小体型認知症(DLB)に進展することもあります。
 パーキンソン病認知症と、レビー小体型認知症の病理学的な違いは、レビー小体の沈着する部位です。パーキンソン病認知症ではレビー小体が中脳に沈着するのに対し、レビー小体型認知症では大脳に沈着します。

4.パーキンソン病の治療は?

薬物療法が基本

 ドパミンになる1つ前の段階の物質(前駆物質)であるレボドパを補充する薬を中心とした治療を行います。早期には、受容体に結合し、神経伝達物質やホルモンと同等の働きをする薬(ドパミンアゴニスト)が効くこともあります。
 ただし、レボドパの長期投与により、薬が効く時間が減る(効かない時間が出てくる)ウェアリングオフ現象や、舌や口をもぐもぐ、くちゃくちゃさせるような不随意運動(ジスキネジア)が現れることがある点も押さえておきましょう。

5.ケアマネジャーが押さえておきたいポイントは?

日常生活の注意点・観察ポイント日常生活の注意点・観察ポイント

  • ・仮面をかぶったように無表情で、声も小さく、感情表現も乏しいのは、病気が原因。話は伝わっていると思って、普通に接すること
  • ・転びやすいので、転倒のリスクを減らすため、自宅の環境を整える。
  • リハビリテーションが有効。デイサービスや訪問リハビリテーションにつなげるなど、ケアプランを考えるうえで気に留めておく。
  • ・摂食嚥下障害がみられることも多いため、誤嚥に注意する。
  • ・パーキンソン病の薬を急にやめると、悪性症候群を発症し、命にかかわることがある。薬を自己判断でやめてはいけない。

医療職に確認しておくこと医療職に確認しておくこと

  • ・利用者の主な症状と転倒のリスク
  • ・薬の内容と投与の仕方。経口薬だけでなく貼り薬も使われる
  • ・パーキンソン病か、それとも二次的なパーキンソン症候群か
  • ・リハビリテーションへの助言
  • ・指定難病の医療助成

使える制度使える制度

  • ・指定難病のため特定医療費支給制度
  • ・介護保険は、第2号被保険者(40~64歳)も適用。
  • ・障害者手帳(肢体不自由)
  • ・障害者総合支援法

この記事を監修した人

鶴岡浩樹

日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科(専門職大学院)教授
つるかめ診療所副所長
順天堂大学医学部を卒業後、 自治医科大附属病院総合診療部などでの勤務を経て、2007年につるかめ診療所(在宅診療)を開設。2013年より日本社会事業大学専門職大学院教授。

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