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コミュニケーション技術に関する疑問

『介護では相手に関心をもつことがコミュニケーションの基本』よくある場面から学ぶコミュニケーション技術 著者インタビュー

 入職間もない介護職を支える実務書「ステップアップ介護」シリーズ。
 『よくある場面から学ぶ コミュニケーション技術』第5回は、本書の著者 大谷佳子先生にこの本に込めた思いを聞きました。

プロフィール

大谷佳子(おおや よしこ)
昭和大学保健医療学部講師
医療、福祉、教育の現場の援助職を対象に、コミュニケーション 研修及びコーチング研修、スーパービジョン研修などを担当。

「介護職本位」ではなく、「相手本位」の思考で

──本シリーズでは、日頃の介護現場によくある場面を取り上げています。コミュニケーション技術のステップアップの1stステップとして、まずは何からはじめればいいでしょうか?

大谷氏:日々、利用者・家族と接する介護職にとって、コミュニケーション力は重要なスキルです。しかし、介護の現場におけるコミュニケーションでは、ただ会話をすればよいのではなく、相手が何を望んでいるのかを把握して、それに応じてかかわることが求められます。

 




介護職の考えや都合を優先させてしまうと、介護職本位のかかわり方になりがちです。本書にも取り上げたように、利用者の望ましくない行動に対して、「○○しないでください」と禁止する言葉を使ってしまったり、物静かな利用者との会話を盛り上げようとして、介護職が一方的に話し続けたりするのは、介護職本位のかかわりといえるでしょう。

利用者本位のコミュニケーションにするためには、利用者が望ましくない行動をとった理由は何か、物静かな利用者はどのようなかかわり方を望んでいるのかなど、相手を基準に考えることが必要です。
本書では、「相手本位の思考」を意識することをステップアップのポイントの1つめとしました。

──なるほど。「相手本位」が基本なのですね。Part1には、利用者や家族に対して、介護職がいいと思ってついやってしまう場面も紹介されています。

Part1-3の一場面(34頁)

大谷氏:本書では、「利用者や家族を励まそうとしたのに逆効果になってしまった・・・」「喜んでもらおうと行動したことで相手を怒らせてしまった・・・」など、介護職の熱意が空回りしてしまいがちな場面を取り上げました。

「何かをしてあげなくては」という介護職の気持ちが優先されてしまうと、介護職本位の一方的なかかわり方になりがちです。一歩引いて、目の前にいる相手の気持ちに意識を向けてみましょう。介護職がその気持ちを受けとめて、寄り添ってくれたときに、利用者や家族は介護職に対して信頼を感じるのではないでしょうか。

──介護職自身を信頼してもらうことが大切なのですね。

大谷氏:そうですね。介護職は利用者の生活を支援すると同時に、心の支えとなる存在であると思っています。
一歩引いたところで、いつも温かく見守っていてくれて、自分がどのような状態にあったとしても肯定的に認めてくれる介護職の存在は、利用者・家族にとって大きな心の支えになるはずです。

──意思表出が難しい認知症や失語症の利用者への対応例もありました。
経験の浅い新人職員さんは悩んでしまう場面です。

大谷氏:「認知症のある人」「失語症のある人」といっても、一人ひとりの症状は同じではありません。認知症や失語症に関する知識をもつことも大切ですが、一人ひとりを観察して、その人の個性や特性を知ることで、その人に合わせたコミュニケーションの方法を見つけることが可能になります。ここでも「相手本位」の思考が大切になります。

Part1,4-3(58頁)

「何ができないのか」「何が困難なのか」に焦点を置くのではなく、「何ができるのか」「何が強みなのか」に注目してみましょう。

──相手の強みに心を配る必要があるのですね。

大谷氏:そうです。ただえさえ、意思の表出が難しい利用者は、コミュニケーションをとる意欲が低下してしまいがちです。利用者が伝えようとしていることがすぐに理解できなくても、わかったふりをしたり、笑ってごまかしたりするのではなく、一生懸命理解しようとする介護職の姿勢が何より大切であると思います。

──本書では、介護職の性格特性タイプからその強みをいかすアドバイスがありました。
このPartを本書に入れた思いは何でしょうか。

大谷氏:利用者一人ひとりが個別の存在であるのと同様に、介護職一人ひとりにも個性がありますよね。本書のPart.1と2でコミュニケーションの基本を身につけたら、Part.3では介護職の個性を活かしたコミュニケーションを楽しんでいただきたいと思いました。

「人と話をするのが大好き!」という介護職だけが、コミュニケーション上手とは限りません。Part.3では大きく5つのタイプ(好奇心旺盛タイプ・即実行タイプ・マイペースタイプ・コツコツタイプ・人間関係優先タイプ)を取り上げました。
それぞれのタイプに「強み」があり、その「強み」を活かせるコミュニケーションがあります。苦手を克服するポイントも紹介していますので、参考にしていただけたらうれしいです。

Part3-3(158頁)

互いに承認すること、相手に関心をもつこと

──利用者や家族とのコミュニケーションに加えて、職員間のコミュニケーションにもふれています。いろいろな年代や個性が集う職場で、よいチームワークをつくるのは常に課題です。

大谷氏:職員とのコミュニケーションは、良好な人間関係をつくり、風通しのよい職場環境をつくるために大切ですね。誰もが気持ちよく働ける職場環境は、介護職のモチベーションを向上させて、援助の質を高めるでしょう。その一方で、職員間の関係がギクシャクしている職場では、意思疎通がうまく図れず、業務に支障をきたしがちです。人間関係のトラブルも生じやすくなり、質の高い援助を提供することはできません。

職員間に良好な関係を築くためには、互いに「承認すること」が大切だと思います。互いに承認するとは、褒め合うことではありません。承認とは、相手を肯定的に認めることです。例えば、「おはようございます」という挨拶は、相手の存在を承認します。挨拶がおざなりだったり、無視されたりすると、相手は「自分の存在が否定された」と感じるでしょう。笑顔で挨拶し合う、感謝や労い、共感の言葉をかけ合うなど、相手を承認するコミュニケーションの積み重ねが良好な人間関係を形成すると思います。

──最後に、「コミュニケーション」に一番大切なことを教えてください。

大谷氏:一言でいうのであれば、「相手に関心をもつこと」。
特に、介護の現場も含めて、対人援助の現場では、相手に関心をもつことがコミュニケーションの基本であると思います。その人に関心をもつと、相手のことをもっと知りたい、という気持ちが生まれます。自然と、その人の言葉に耳を傾けたくなり、その人の表情や行動にも注目するようになって、ちょっとした変化や相手が望んでいることにも気づくことができるようになるでしょう。

日々のコミュニケーションのベースに「その人のことをもっと知りたい」という気持ちがあれば、利用者や家族に寄り添う声かけやかかわり方につながると思います。

もっと詳しく知りたい方はコチラ!

このページの内容は大谷佳子『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶコミュニケーション技術』からテーマを選定し、Web掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。

著者:大谷佳子
本のサイズ:A5判、180頁
定価:本体1,980円 (税込)

ステップアップ介護 シリーズについて

 「ステップアップ介護」は、経験の浅い介護職が一人前になるまでに確実に身に付けておきたい知識と技術を、厳選して紹介する書籍シリーズです。『認知症ケア』『マナーと接遇』『疾患・症状への対応』など、知りたいテーマを7つ用意しました。全巻にわたって、新人介護職の「つぼみちゃん」と、先輩介護職の「はなこ先輩」が一緒にナビゲートしてくれます!

 このシリーズは以下のような特徴があります。

  • ●経験の浅い介護職が一人前になるまでに確実に身に付けておきたいこと
  • ●介護現場の「実践」に直結すること
  • ●すぐに知りたいこと

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