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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第37回 亡くなる直前に他機関に援助を依頼されてしまい、わだかまりが残っているケース
(2002年2月号(2002年1月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Uさん(訪問看護ステーション・看護婦)

提出理由

 5年以上にわたり訪問看護で週1回訪問していたケース。その長いかかわりのなかで、自然と孫の成長を一緒に楽しむような、遠い親戚よりも親しい身内のような関係を築いていた。
 ところが、終末期のある日、クライアントのKさん(女性、68歳)より、「Jステーションからも訪問に来てくださるそうですので、お願いしました」との言葉。JステーションはKさんが退院した当初かかわっていた事業所であるが、当時担当していた方が退職されたのにともない、当ステーションに訪問依頼がきていた。
 その頃、Kさんの状態は悪化する一方で、精神的に不安定な時期だった。娘さんに対しても機嫌が悪く、厳しい口調になっていた。だが、娘さんは「なんとか家で看たい」と言い、ご本人も「入院はしたくない」という意向が強かったため、自宅での介護を続けることにした。
 そんななか、事例提出者は「Jステーションからの援助で精神面が安定することを期待する」として、大切な最後の2週間を、その気になれば自分の訪問回数を増やすことも可能であったのに、Jステーションに任せるかたちでかかわりを減らしてしまった。事例提出者は、その2週間が今も気になっている。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。