メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

【毎週木曜日更新】

第22回② 太田恵理子「おやこ支援室ゆずりは」代表
デイに預けている間にママさんにはリフレッシュ
してもらったり、ママさん同士で交流してもらいたい

「おやこ支援室ゆずりは」代表
太田恵理子(おおた  えりこ)
1986年徳島県生まれ。大学卒業後、機械メーカーに就職。息子さんに障害があり、保育園に入れなかったことを機に、「おやこ支援室ゆずりは」立ち上げを決意。2019年4月に開設。現在、「重症心身障害児・医療的ケア児支援事業所」「起業家支援型放課後等デイサービス」も開設準備中。


取材・文:石川未紀


──前回は、「おやこ支援室ゆずりは」立ち上げの経緯と具体的な起業の方法について伺いました。

──「おやこ支援室ゆずりは」はいつ開所されたのでしょう。

 2019年4月に開所しました。開所当時は2名スタートでした。開所前からSNSで発信したり、地域の保健センターなどにチラシを置いてもらったり、保健師さんと面談させてもらったりして、認知に努めました。通ってきている方の口コミなどでも広まりどんどん増えていっています。

──子どものリハビリデイというのは、具体的にどんな活動をしているのでしょうか?

 一言でいえば集団療育です。OTやPTが常駐していて、歩行など移動介助を含む日常生活に必要な動きを療育していきます。集団の中で遊びなどを通して、行っていくのが、個別のリハビリと大きく違うところです。
 集団の療育にすることで同世代の子どもたちと触れ合う機会が増え、刺激をたくさん受けることができます。障害のある子どもは保育園などに入れないと周囲はみんな大人という環境の中で育つことになります。でも、同世代の子どもたちとのふれあいは、思わぬ効果がたくさんあって、そこが集団療育の長所だと思います。0歳から6歳のお子さんが対象ですので、年齢差も少しあります。お姉さんやお兄さんの口真似や動作もよく真似しています。そういうことも自然と身に着けていけるところが強みでもあります。
 集団療育だと、遊びを通して専門の職員がさりげなく介助するので、楽しみながら生活に必要な動きを獲得していくことができます。
 例えば遊びに行きたい(移動したい)というときはPTが介助する。食事の時はOTが指導するといった具合です。専門家からの指導ではありますが、それはあくまでも遊びや日常の中で行われます。子どものやりたい、こうしたいという欲求に合わせられるので、伸びるんですね。息子もここに通うようになってから、できることがとても増えました。
 もちろん、個別の療育も大切にしています。両方をうまく組み合わせています。

──子どもにとって、集団と個別の長所を組み合わせて利用できるというのはよいですね。

 もう一つの大きな目的は、親の負担を減らすことです。特に、母親は常に子供と一緒。保育園などに入れないとママ友も作れない。仕事を持つことができない障がい児の母親はまだすごく多いんです。社会的に孤立した中で子育てしているんです。
 母親が笑顔で子育てできる環境は必要不可欠です。そのためには、母親も子どもと離れる時間も必要なんです。
 「おやこ支援室ゆずりは」の開所時間は10時から15時。働いている方や事情のある方は9時から17時までお預かりしています。慣らし期間が過ぎれば、基本的には親子分離です。親子分離にするわけは、一つには子どもの甘えを断ち切るため、もう一つは、お母さん自身の時間も確保してもらうためです。「ここで知り合ったお母さんたちとママ友ランチします」というママさんたちもいます。子育ての情報や悩みを共有して、リフレッシュすることはとても大事なことだと考えています。ママさん自身がママさんの時間、人生を大切にすることが、子育てには必要なことなんです。
 月に1回、親子通園という日がありまして、その日は、親子で過ごす時間と親だけで集まって話し合いをしてもらう時間を設けています。この日を楽しみにしているといる方もたくさんいらっしゃいます。ここで、いろんな悩みを打ちあけて共感したり、アドバイスをもらったりすることで、リフレッシュできる。私自身も、今後のデイの在り方やみんながどんなことに悩んでいるのか、困っているのかを知る大切な勉強の機会でもあります。
 また、地域にも開かれた場所であることも大事だと考えています。利用者以外の方も気軽に参加できる「おやこサロン」という機会を設けて、地域の中で共生できる仕組みにも取り組んでいます。

──ありがとうございました。

ママさん自身の時間も大切にしてほしい


●インタビュー大募集
「このコーナーに出てみたい(自薦)、出してみたい(他薦)」と思われる方がいらっしゃいましたら、terada@chuohoki.co.jp までご連絡ください。折り返し連絡させていただきます。

花げし舎ロゴ
100歳時代の新しい介護哲学

「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます

本サイト : 介護職に就いた私の理由(わけ)が一冊の本になりました。

花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館