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福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

【毎週木曜日更新】

第22回① 太田恵理子「おやこ支援室ゆずりは」代表
息子の障害で保育園に入れず、復職を断念
ならば、息子のためにも世の中のためになる仕事を始めよう!

「おやこ支援室ゆずりは」代表
太田恵理子(おおた  えりこ)
1986年徳島県生まれ。大学卒業後、機械メーカーに就職。息子さんに障害があり、保育園に入れなかったことを機に、「おやこ支援室ゆずりは」立ち上げを決意。2019年4月に開設。現在、「重症心身障害児・医療的ケア児支援事業所」「起業家支援型放課後等デイサービス」も開設準備中。


取材・文:石川未紀


──「おやこ支援室ゆずりは」を始めようとしたきっかけを教えてください。

 私は大学を出てから、一生会社勤めをするのだと漠然と思っていました。それは結婚してからも変わらぬ思いでした。ところが、息子が水頭症だったために、近所の保育園はどこも入れず、復職が厳しい状況になってしまったのです。
 でも、それなら子どものためにも世の中のためにもなることをしたらいいんじゃないか、と思ったんです。
 徳島には子どものリハビリをやっているところが少なく、私も6か月の子どもを抱えながら、片道車で40分の道のりを週2回通っていました。しかもリハビリは長くて1時間。リハビリは成長に欠かせないもの、と効果を実感できるものの、親の負担が大きいとも感じていました。
 また、療育施設に通っていた当時のママ友といろいろな話をするうちに、不安や不満を抱えている母親は私だけではないということに気づいていったのです。そして、SNSなどでつながった同じような境遇のママさんたちと情報を交換すると、地域の保育園などに通えないことから、孤独を感じていたり、四六時中子どもと一緒にいて一息もつけず、精神的にも追い詰められたりしているママさんたちもたくさんいることを知りました。
 それで、自分が住んでいる地域で、できれば母子分離で、デイの時間にリハビリができるところがあったらいんじゃないかと思ったんです。それは息子のためにもなるし、世の中のためにもなる。
 息子が1歳になるころに、リハビリに特化したデイを立ち上げようと決心しました。

──それでも、小さなお子さんを抱えながら起業するというのは難しいこともたくさんあったのではありませんか?

 夫は、息子のためにもなるし、それが社会貢献にもなるのだから、やったらいいと賛成してくれました。
 私の母は慎重な性格ゆえ、大反対でしたが、父親は私と一緒でイケイケ!というタイプ(笑)だったので、賛成してくれました。
 2017年7月に息子が生まれたのですが、育児休暇は最大で2年。1歳になるころには、起業しようという思いはかたまっていたので、2018年の9月には退職しました。
 わりと思い立ったらやってみようというタイプで、起業しようと決めたころから、ネットで情報収集を始めました。

──大学では経済の勉強をされていたそうですね。そうした知識が起業に役立ったりしましたか?

 それが全く(笑)。大学時代はまじめに勉強していなかったので、そのころの知識は生かせませんでした(笑)。

──それでは具体的にはどのように情報を収集し、起業の知識や方法を入手していったのでしょう?

 起業塾のようなものは、どこの地域でもやっていると思うのですが、私もそこに通いました。自治体が主催するものと地銀や信用保証協会などが主催するものが多いと思います。私はその両方に通いました。
 地銀などは、お金を借りてほしいので、事業計画がしっかりしていれば、万全のサポートをしてくれます。経済の知識が全くなくても、ノウハウも人とのつながりも資金の集め方も、手取り足取り教えてくれます。
 事業計画書の書き方も全部教えてくれるので、思いを伝えて、書いてみる、それを添削してもらう。これを繰り返しやっていくうちにちゃんとカタチになっていくのです。
 一方で、実際に開設する場所を探していきました。ネットなどで情報を収集すると、これがかなりネックになるという声が多かったので、起業塾に通いながら並行してすすめました。法律的な基準プラス地域性ですね。うちの場合は徳島なので、車で移動する人が多い。最低でも6台分の駐車スペースが必要、など地域の事情も加味しながら探していきました。
 起業にあたっては、銀行から資金を調達し、残りは家の貯金を使い、2018年11月には会社として登記しました。会社を登録するのもフリーサイトからしました。フォーマットもあって、それに沿ってやっていけば問題なくできます。誰でもできるんですよ。

──ありがとうございました。
次回は、「おやこ支援室ゆずりは」の活動内容について伺っていきます。

息子さんもできることがたくさん増えて表情もゆたかに

●インタビュー大募集
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花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館