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福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

【毎週木曜日更新】

第7回③ 園 吉洋 デイサービスセンターめぐみ(株式会社ライフパートナー)
最期まで、
看取りができる施設をつくりたい。

デイサービスセンターめぐみ(株式会社ライフパートナー)
園 吉洋(その よしひろ)
1982年生まれ
人間らしいあたりまえの生活を支えたい、よいケアを届けたいとの思いから2008年25歳で起業し、定員10人のデイサービス「デイサービスめぐみ」を開所。その後「デイサービスめぐみ東大町」、2015年には、有料老人ホーム「アルカディア」を開所した。今年12期目を迎える、株式会社ライフパートナーの代表取締役。現在はアンガーマネジメントやコーチングを学んだ経験を活かし、メンタルコーチとしてセミナー等でも活躍中。


取材・文:原口美香

──第2回では、「デイサービスめぐみ」を開所されてからのことについて、お話いただきました。今回は、有料老人ホーム「アルカディア」を開所した経緯などを教えてください。

 4軒借りて移転した頃はもう軌道に乗っていたので、人材を増やすこともできました。事務所用にアパートを2つ借りられるくらい順調でした。

 ところが、法改正で小規模通所の地域密着型通所への移行が決まり、その地域の方の受け入れしかできなくなるとういうことになりました。当時は、駆け込み寺状態で、隣の市からの受け入れも多かったんです。それに加え、消防法も変わり、スプリンクラーを取り付けなければいけないということも決まって。そもそも、今の貸家に取り付けることができるのか? どうしよう、どうしようと悩みました。それで銀行の支店長さんとそんな話をしていたら、ひょんな話に発展したんです。

 ある会社の社長さんで、今度、介護事業をやりたいという方がいらして、だけど介護のノウハウはないから、誰かやりたい人はいないか? と探していると。銀行の支店長さんは、様々な企業さんに接しているので、あちらの話とこちらの話を繋げてくださった。それで実際にお会いして「僕は最期まで看取りができる施設をつくりたいんです」と話しました。僕の考えに共感してもらったんだと思います。助けてくれる人は、助けてくれるんだな、ぶれちゃいけないなと感じました。余っているという土地を見せてもらったら、すごくいい土地なんです。そこにあった建物を壊して、「ここでやってみないか?」と。あと20年働く覚悟を決めて、その契約書にサインした時は、手が震えましたね。

 2015年に、有料老人ホーム「アルカディア」を開所。同時に10人、10人の小規模通所だったデイを、25人定員の通常規模型通所介護に変えました。

──若くして事業を広げていくことに恐ろしさはありませんでしたか?

 ありましたね。だけど自分で建てるのは無理だと思ったので、建物を建ててもらって借りるという選択をしたんです。

 今年12期目になりますが、今でも、どこにいても、心の中で、現場のこと、スタッフのこと、考えない瞬間は一切ないですね。起業してから3年くらいは、常に緊張している状態でした。寝ていても仕事している夢を見て、夢の中で職員に指示をしたと思い込んで、現実ではしていないのに「なんでやってないの? 言ったじゃん」でも夢だった、みたいなことが、本当に日常的にあって。

 先頭に立ってやっていたというのは、自分にとってよかったんでしょうね。言い訳できないし、何かあっても「社長、決断してください」って常に自分が決めなければならない。責任がつきまとうし、逃げられない。だけど、決められる自由があるんだと考えられた時から、経営者らしくなり、経営もより安定していきました。

──今年で12期目なんですね。心に残る利用者さんは、いらっしゃいますか?

 たくさんいすぎて、選べないくらい。この十何年かで、自分の目の前で亡くなった方が、4、50人はいらっしゃったんです。自分の施設で関わって亡くなった方と、自分が死んだ時に、あっちの世界で会うかも知れないじゃないですか。例えば僕が今から金儲けに走ったり、おかしな方向にぶれたりしたら、あの世に行った時に「おまえ、何年か前からだいぶ変わったな」と言われるような気がするんです。「園くん、変わったね」って。だから今までの関わり方のまま、いきたいなと思っています。

──ありがとうございました。
最終回は、人材育成や今後のことなどについてお話ししていただきます。

後悔しない介護がしたい
看取りが近いお年寄りと最後の桜

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「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます

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花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館