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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

言葉のチカラ

 いまから46年前の1976年、プロレスラーのアントニオ猪木さんは、当時のボクシング世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリと異種格闘技戦で対決し、15ラウンド戦った結果、引き分けとなりました。数々のプロレス技を禁止されたルールでの対戦では、猪木さんはスライディングしながらのキックしか攻撃する術がなく、翌日の新聞紙面には、「世紀の凡戦」と酷評されました。対戦前、世界中から注目を集めた試合だっただけに、試合後の批判も相当なもので、猪木さんは翌日、マンションから出たくなかったと言います。しかし、その日もプロレスの試合がある…。マンション前に待ち構えたマスコミの間を抜け、待たせていたタクシーに乗りました。そのとき、タクシー運転手さんが「昨日はお疲れさま!」と言ってくれた。その言葉の温かさに、猪木さんは救われたと言います。

 何げない言葉に、救われることってあるものです。ただし、経験上思うのは、それは「心のこもった言葉」です。心からの労いの言葉、心から相手のことを思った言葉。その言葉が、傷ついた心、疲れ果てた心を救ってくれることがあります。しかし、逆に心無い残酷な言葉は、人の心を傷つけます。言葉とは、良くも悪くもチカラがあるものです。
 また、言葉は不思議なもので、何を言うか、よりも、誰が言うか、によって、そのチカラは変わってきます。
 たとえば、「大丈夫だよ」という言葉。自分が悩んでいるときに、「大丈夫だよ」と言われても、「大丈夫じゃないから悩んでるんだよ」と思うことがありませんか。ただ、逆に自分の尊敬する人などから「大丈夫だよ」と言われると、不思議と大丈夫な気がしてきたり、安心できたりすることがあります。
 私は、ご利用者や職員にとって、「この人に“大丈夫”と言われると、本当に大丈夫な気がしてくる」。そう思われる存在になりたいです。

 そして私は、自らを奮い立たせる、心を強くするために、「どうってことねえよ」「どうだっていいじゃねえか」という言葉を自分自身に言い聞かせるように、よく使います。
 冒頭に書いた猪木さんの影響でしょう。自分のまわりで起こる問題、悩みごとに対して、「どうってことねえよ」「どうだっていいじゃねえか」という言葉を発してみると、「あれ? 何をそんなに悩んでいたのか?」を思うことが意外とあるものです。

 言葉のチカラ。
 人の心を救い、自分を奮い立たせる。そんなチカラのある言葉を発することのできる人になりたいです。

著書のご案内

山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。

現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!

介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8

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