メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑にて人材育成担当。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

本当の死とは、忘れられること

 18年以上前、私が特養で出逢った女性入居者Yさんは、とにかくよく怒るお婆ちゃんでした。気に入らないと職員の髪を掴んで引っ張ったり、お茶をかけたり。でも、なぜか私のことは気に入ってくれて、「山ちゃん、山ちゃん」と可愛がってくれました。

 そんなYさんが、ある日を境におとなしくなってしまいました。急に優しくなって、職員にやたら物をあげたがったり、やたら気を遣ったり……。
 私が「らしくないなぁ。最近どうしちゃったの?」と聞くと、Yさんは「あたし、いつかあっちの世界に行くでしょ。その後みんなに思い出してももらえないような人になりたくないと思ったの。山ちゃん……たまにでいいから、あたしのこと思い出してね」と寂しそうに言いました。

 「馬鹿だなぁ。思い出すことなんかねえよ。忘れないんだから」

 私がそう言うと「山ちゃん……」と言って声を出して泣いていました。

 先日、現在勤務する特養千歳敬心苑で、合同慰霊祭を行いました。
 遺族の方たちと故人を偲び、慰霊祭終了後は「ちとせメモリーズ」と題して遺族と職員との昼食会をしました。
 故人が生前、施設でどんな暮らしをしていたのか。遺族からは「お爺ちゃん・お婆ちゃん」ではない「お父さん・お母さん」だった頃の思い出を話してもらいました。私はその会の中で、Yさんとの思い出を話しました。

 「人は死んでも、みんなの心の中で生きている」

 よくドラマなどで聞くセリフです。私は別にきれいごとだと思いません。本当にそうだと思うし、私の心の中で生きている人はたくさんいます。

 人が本当に死ぬのは、忘れられた時だと思います。私は出逢った人、お世話になった人、大好きな人たちを忘れません。

 慰霊祭でご家族が「親父の物は簡単に捨てられたのに、今日は涙が出てきました。物は捨てられても、心は捨てられない。みなさんの暖かさに触れて分かりました」とおっしゃっていました。

 人は愛する人たちの心の中で生きていきます。


【前の記事】

「情報の非対称性」

【次の記事はありません】

ホームへ戻る