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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

人類はロボットに勝利できるか?

 ロボット工学などの研究と技術革新によって、人類は2020年までに500万人以上が職を失う可能性があると、世界経済フォーラム(WEF)が調査結果を示しました。
 先日は、人間対人工知能(AI)の対決で、ついに世界最高の棋士とも呼ばれる人物がAIに敗れました。
 いよいよ『ターミネーター』の世界が現実味を帯びてきたようで、ちょっと怖い気もします。

 介護業界でも、ロボット参入が言われて久しい。政府も人手不足解消のための介護ロボット導入に関して積極的な姿勢を見せています。
 いつか社会は変わるかもしれません。人に気を使ったり、相手の顔色を気にしながら介護を頼むよりも、感情をもたないロボットに介護してもらったほうが気持ちは楽…。そう考える世の中になるかもしれません。
 しかし、それが本来あるべき姿でしょうか。本来あるべき社会でしょうか。  私は今、「社会福祉法人 敬心会」に身を置いています。この法人の名前がとても好きです。「敬心」=「敬う心」。高齢者の方たちは、それまで社会を支えてきた方たちです。そういう方たちが年を重ね、介護を必要とすることになった。敬う心をもって介護にあたるのは、ある意味当然のことではないでしょうか。
 介護が必要な状態でも、生まれもって障がいを抱えていたとしても、人は皆、尊厳を持っています。すべての人に敬意をもって接すること。これも当たり前のことだと思います。
 もしかしたら、今後の介護ロボットには、敬意をもって接する言葉がプログラムされるかもしれません。それでも、真の心…「真心」だけは、プログラムできないものと思います。できないものと信じたい。

 私たち介護職は、介護を要する状態にある高齢者の方たちのお世話をしています。それだけの年齢、身体の状態にある方。体調を崩したり、病気を患ったりすることも多いです。医療が必要になった時には、迅速に医療につなぐのが私たちの仕事。だけど、それで終わりません。医療で命を救ってくれたら、私たちは介護で心を救うのです。

 私は、今までそんな場面を何度も見てきました。肺炎で入院した利用者さん。抗生剤などの治療で、肺炎は治っても、数日間の安静、寝たきり生活で気力を失ってしまうことがあります。ご飯を食べてくれない。誰が勧めても、介助しても、食べてくれない。そこへ介護職がお見舞いに行って、食事を介助すると食べてくれる。
 これは、食事介助に技術があるのではなく、真心です。真心で接し、「元気になってね」という気持ちを真心で伝える。
 心は心でしか救えない。それは、最先端の医療でも、化学でも、成しえない真心の介護だと思います。


追伸

 来る5月22日(日)、東京・大塚の林野ホールで「超高齢化日本の未来を明るく照らす、これぞ介護職のチカラ!!」というセミナーを開催します。よかったら足をお運びください。