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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

ロボット


 介護にロボットってどう思いますか。
 時代なんでしょうか、ここ最近よく聞かれる質問です。先日も高校福祉科の教師に聞かれました。

 僕はロボットについて質問を受けると必ず「質問者の考えるロボットって?」と聞き返します。
 というのも昭和30年生まれの僕にとってのロボットは「鉄腕アトム」なので、人そのものにまで進化したアトムをロボットに描くと「ロボットで生活支援(介護)も悪くないかな」と思ってしまうからです。

 ただ、それでも「ロボットで介護」には疑問で「自助具としてのロボット」であれば「それはありかな」と思っています。
 というのもメガネと同じで、目の機能が低下して日常生活に支障をきたしてもメガネという自助具があることで、不自由さを解消でき、他人の力を借りなくても「自力」を維持できている人がたくさんいます。
 同じように、ロボットを使うことで、立ち上がれる、歩ける、食事を食べられる、トイレに行って排せつできる、買物にいける、居酒屋に飲みに行ける、料理を作れるなど「自力」を取り戻せるのはステキなことだからです。

 以前にブログで書いたことがありますが、ロボット開発者が「ロボットはサポーター、あくまでも本人が主で、主にとって代わるものではない。それを大事に開発に取り組んでいる」と語っていたものを読み、ロボット開発に大いに期待をもちました。

 本来介護は「とって代わるもの=代行屋」ではないので「ロボットで介護」はおかしくはないのですが、現在の「介護」はまだまだ「とって代わるもの=代行屋」になってしまっているので疑問だということです。

 そう遠くない未来に「ロボット自助具」が出回るようになると「自力」を維持できる・取り戻せて、他人の手を借りなくても済むようになるのでしょうが、それでも「介護職が不要になるハズがない」と思うのは、人は自力だけで生きているわけではなく、人と人の関係性の中で生きているからです。

 「自力支援=人として生きること支援」ではなく、ましてや脳に起因する原因疾患によって引き起こされる認知症の状態は、「脳の自助具」ができない限り、僕らの仕事は失くせないでしょうね。

 質問をよく頂くようになった今、改めて「ロボットにとって代わられない介護の仕事とは」を考察してみたいと思います。

写真

 おばぁラッパーズ
 沖縄県那覇市に栄市場というところがあります。僕の大好きなところです。
 4000坪の敷地に120店がひしめくアーケード市場ですが、ご多分にもれずシャッター街となった時期があったそうです。
 近隣住民は、日常生活に必要なものを、そこよりも遠いスーパーに買いに行かざるを得なくなり、高齢者はそれもおぼつかず、生活に支障を生じるようになったそうです。

 そんな現状に心を痛めた市場のお店の人たちが、「どうやったら賑わいを取り戻せるか」を考えた末「おばぁラッパーズ」を結成。

 すると「栄に面白いグループがいる」と口伝えに広がり、あちこちで紹介されるようになり、人が足を運ぶようになり、若者の出店も含めシャッターが開き、近隣の高齢者たちはもちろんのこと、スーパーに行っていた人まで「栄町市場の方がいい」となり、現在の賑わいを取り戻したそうです。

 先日「第八回沖縄県高・大・地域連携福祉研究会」という取り組みに参加した際、高校生120名の前で披露されていたステージを見させていただきましたが、軽やかでキレが良く、ほんとステキでした。半世紀ほどの年齢差がある高校生たちもノリノリでした。
 ただ、沖縄の言葉でラップを歌っていたので、僕にはチンプンカンプンでしたがね。

 「歌えマチグヮー」というDVDも出ているようです。
 地域住民が知恵を出し合って街の復興を成した好事例なんでしょうが、DVDにヒントがいっぱい詰まっているかもしれないですよ。

 それにしても三人のうちお二人はバイクで会場まで来られたそうです。素晴らしいですよね。

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神の島