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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

ちょっとした「お遊び」


 食事の場面を想定して、ちょっとお遊びをしてみよう。

 Aさん 介助でしか食べられない
 Bさん 自力で食べられる。自立度が高い方
 Cさん 隣の人の分まで手をつけてしまう
 Dさん Cさんが他人のものに手をつけることに怒りをもった言動がある

 食事を共にするこの婆さんたちを想定して「食事時の着座位置支援」について考えてみることにする。

 AさんBさんCさんDさんが同席して一緒に食べることを重視すれば、右利きの僕は必ずAさんの隣に座ることが条件となる。

 婆さんの情報はあるので情報に基づいて予測し、テーブルが長方形なら、単純にCさん・Aさん・職員1・Bさん・Dさんと横並びになるようにする。
 こうすれば僕はAさんの食事介助をしながら、その向こう側にいるCさんの行動まで見渡すことができ、しかもBさんの隣にはAさんしかいないし、Aさんならトラブルになる確率は低く僕との距離も近いので、何か起こりそうになっても防ぎやすく、Dさんに対してCさんの行動を目にする機会・接点を減らせる。

 これは食事場面における「着座策その1案」であるが、では「丸テーブルならどうする和田」と続けていく。

 丸テーブルは長方形テーブルより、着座する者同士が、どこに座っても長方形よりも接近する。
 Aさんの右隣に僕というのは変えないで、Aさん・僕・多めの皿を置いて隣人と距離をとる・Cさん・多めの皿を置いて隣人と距離をとる・Bさん・Dさんとする案を描く。その上で僕は、Dさんにたくさん話しかける。
 そうすればCさんが他人の食物に手をつけることを和らげることができ、かつDさんの気を僕にひきつけられるからだ。
 多めの皿は、用途を果たせるなら生け花を差した花瓶等も検討するかもしれない。

 基本的なキーワードはCさんとDさんの「行動把握」と「距離」と「気の分散」ではないかと思考するので、こんな感じの着座策で試行することになるかと思うが、皆さんは?

 これは単なる「頭の中のお遊び」でお遊びの中でシュミレーションしているだけなのだが、こうしたことが複数の婆さんがいる介護現場では日常茶飯事に展開されていくはずだ。

 つまり僕らの仕事には「共に過ごす」ことに「多様な策」を講じることが求められるって話で、それもこれも「予測する」ことによって講じられるわけで、この予測こそ「策」を講じる上でとても重要だということだ。

 にもかかわらず「職員側が予測をもたない→事前の策がない→事が起こる→CさんとDさんを問題視する」ということになっていたとしたらとんでもないことだ。

 一度目の事は婆さん・婆さん同士のことがわからないから「情報がない→予測がない→策がない→事が起こる」は致し方ないとしても、一度起これば「事が起こった→情報を得た→予測できる→策が打てる」となるはず。
 仮にうまくいかなくたって「策を練り直す→別の策を試行する」ことを繰り返していけば「妙手」にたどり着ける確率は高まるはずだ。

 違う角度でいえば「情報が入口」ってことで、そのために記録や記憶による話し合いが必要なのだ。

 情報の共有化もなく、予測も策を見出すことなくCさんDさんを問題視するだけでは、専門職の名が泣くというもの。

 僕はいつもこんな「お遊び」を頭の中で繰り返している。

追伸

 僕は車が大好き。
 しかも小さな昔の車が好きで、中でも「ミニ」は大好物です。
 その「昔のミニ」が久々に我が家にやってきました。僕にとっては五代目の「昔のミニ」なのですが、雨の日は乗りません。
 雨の日に乗らない車なんて車って言えるの?
 周りに何と言われようが、僕にとっては宝者であり、雨に弱い宝者ということもあって乗らないのですが、我が家にやってきたミニを納車した今日は、昨日までの晴天がウソのような雨でした。
 納車を受けに車屋に向かう往路は曇り空、午後遅めからは雨と聞いてはいましたが、雨足が速まり車に乗っての復路は春の嵐となり、名古屋では久しぶりの土砂降り雨でした。(トホホ)
 自分で「さすが、嵐男の和田さん!!」って感心しました。ハハハ
 また見てやってください。

写真

 ある時僕があるスーパーで買物中、「どこかで見たことがある人たちだな」と思ったら、何ともまぁ、うちの小規模多機能型居宅介護事業所(以下、小規模)の職員と利用者さんたち。
 認知症があっても高齢でも一人暮らしを続けているとめさん(仮名)の食物の買い物中でした。
 小規模「通いサービス」の帰り道、自宅に到着する前に必ずこのスーパーに寄って買い物をしてからお送りするのですが、これも支援がなければ、あるいは24時間型入居系の介護施設等に移ってしまえば「なくなる姿」です。
 一緒に歩いているのは、職員と送迎車に同乗している利用者ですね。
 全国各地で小規模多機能型居宅介護という介護保険事業が、その「丸ごとパッケージ支援」という特徴を活かして、こうして自宅生活を継続できる支援を行っているかと思うと、今までとそう変わらない姿で暮らしていけるように支援しているのかと思うと嬉しい限りです。
 ちなみに職員はポケットに手を突っ込んでいるかのように見えますが、それは誤解ですからね。

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