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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

何のために


 NHK大河ドラマで吉田松陰という人が登場する。
 僕は吉田松陰という人の名前は知っていたが、どういう人か、どんなことを言っていた人なのか、恥ずかしながらまったく知らなかった。

 あるシーンでこんなことがあった。  江戸に学びに出たいという若者(吉田松陰も若者だが、もっと若者)が松陰に申し出ると、「何のために江戸に行くのか」と問いかけた。
 若者は「学びに」と答えると「何のために」とさらに問い、さらに答えた言葉にさらに「何のために」を投げかける。

 結局若者は答えきれず、松下村塾から離れて江戸に向かうことを準備し出すのだが、あるときあることをきっかけに、江戸の人々の暮らしぶりに興味関心を抱き、日本という国を変えねばと思い始める。

 つまり、松陰が投げかけた「何のために=志」を描き語れるようになったということだが、その「志」を背景にした言葉は、身近にいた仲間だけでなく、はるか遠くにいた藩の大幹部の心をも動かし、江戸に藩を代表して行けることになった。

 吉田松陰が松下村塾を開いたのが27歳。29歳で亡くなるまで、十代の塾生たちに「志」を説き、十代の若者たちが応えたってことだ。

 何のために
 そう投げかけられる者がどれほどいて、応えられる者がどれほどいるか。それさえも「何のために」かで、うちの枠でいえば、僕のボスや僕自身にまずは問わねばである。

 足を骨折したらどうしますか?
 病院に行きます

 なんで病院に行くんですか?
 治療してもらいに行きます

 何のために治療をするんですか?
 治したいからです

 何のために治すんですか?
 痛みもあるし歩けないと困るからです

 何のために痛みをとり歩けるようになりたいんですか?
 歩けないと不自由じゃないですか

 聞いているのは何のために歩けるようになりたいかです
 元のように暮らせるようになるためです

 では治すためになにをしますか?
 医師の指示に基づいて治療します

 どんな治療をしますか?
 必要な治療をします

 例えば?
 手術するとかリハビリするとか

 そうですよね。まず大事なことは歩くことを取り戻したんじゃなく、元のような暮らしを取り戻したいってことですよね。元のように暮らせるために必要なら手術もするし理学療法も受けるし日常動作訓練もするんですよね。では

 そのもとのような暮らしを取り戻すことをなんていいますか?
 …

 リハビリテーションって言わないんでしょうか?
 …

 僕が間違っていなければ、リハビリテーションのために「リハビリをする」「リハビリに行く」というのはおかしくないですか?
 …

 あるリハビリ研究会という名称の療法士や介護職たちの集まりで、「何のために」という一番大事なことを見失っている「介護」や「療法」について投げかけたことを思い出した。
 そんなご縁で吉田松陰という人の言葉に少しだけ触れてみたくなりネットで調べると、こんな言葉があった。

 過ちがないことではなく、過ちを改めることを重んじよ

 介護職員Aさんは、自分の失敗を隠す人だが、隠しきれない人でもあるので周りにばれてしまう。
 現場を統括する人から「どうしましょうか。ウソをつく人はきついですよね」と相談がきた。
 まずは本人に「話を聞いてやってはどうか」と助言すると話したようで、本人は「ミスをすると自分の評価が低くなると思ったので隠しました」と正直に答えたそうだ。
 そこで統括者は「ミスをしたことを明かす者と隠す者では、明かす者のほうが評価されるのでは」と話したところ、それは理解したようで、出直ししやすい場として別の事業所を準備したそうだ。

 まだまだ可能性がいっぱいある人材を失わずに済んだのは、統括者が「改めへの可能性」に自分の覚悟を重ねたから。

 どんなことでも、「何のために」「なぜ」はとても大事なことで、それを追求してきた先人たちに学ぶべきことがいっぱいある。
 ともすると「何のために」から出発したはずのこともそれが薄れて、「会社のやり方だからやっている」「和田さんが言っているからやっている」になりかねない。よくいう「風化」である。

 皆さんのところでも、「何のために」がないのなら見直し、風化しているかどうかのチェックと風化対策を講じてはどうか。
 僕は、今回の介護報酬マイナス改定を活かしてプラスにできるかどうかは、そこにかかっているような気がしてならない。

 ちなみに僕からの助言につながった情報は「隠しきれずばれた」ってことだ。

 もうひとつ大事なことは、厳しい掟を定めないで家中の秩序を保たせた戦国武将細川忠興の「同じ過ちを二度まで犯してもそれは認めてやれ。しかし、同じことを三度も繰り返すような場合は、厳罰の処せ」の言葉ではあるが。

写真

 たくさん方からお祝いされている「円華(まどか)ちゃん」です。
 最初で最後のご披露目をさせていただきます。
 子どもは社会の子。
 皆さんに育まれ、きっと社会の子として社会に恩返ししてくれることでしょう。
 えっ?すでにしてるって。ハハハ
 よろしくお願いします。