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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

物は者次第

 事業所の運営を長くやっていると、どういうわけか物が増えてきます。職員の数も利用者の数も変わらないのに、物だけは種類も量も増えてきます。自宅も同じで、積み上げる時間数に比例するかのように物が増えてきます。

 なぜ増えるのか。
 それは明確で「新しい物を手に入れる+時間の経った物を手放さない=物が増える」という構図しかなく、常に量を一定に決めて処理しておけば増えないはずなんですよね。

 例えば、水分を摂取する道具としてグラス、湯のみ茶碗、マグカップ、コーヒーカップというような物がありますが、「水分を摂取する道具」が必要なら、冷・温の両使いできるマグカップ一個あれば用を足せるのですが、「コーヒーはコーヒーカップ」で「今日はこのコーヒーカップで」と思考しだすと、種類も形も増えますね。

 僕は基本「捨てられないタイプ」&「新たな物を欲しがるタイプ」なので、何もなければ溜まるばっかりですが、(幸い)離婚・引っ越しの度に(やむなくおのずと)整理・量調整ができていますので、何とか物が収納する器を越えることなく済んでいます。この僕が、同じ箱の中にずっと暮らし続けていたら、きっと物の間・上で寝起きし食事する状態になっていたことでしょう。
 一時、そういう時期もありましたね。家中に鉄道関係の物がたっぷり置いてありました(当時はマニアのみ知る我楽多でしたが今持っていたら超お宝でした)。僕の知り合いには、一度乗った車には愛着がわくので手放せなく且つ、違う車に乗りたがるため相当数の車を所有していると話していらっしゃる方もいます(置き場も維持費も大変だろうね)。

 事業所も面白いもんで、管理者が変わると事業所の景色が変わるんですよね。
 例えば、デイサービス(通所介護)なんか典型のように思えますが、「クリスマス用に制作した〇〇の出来映えが良かったので来年以降も使うためにストックしておく」と考える管理者のタイプはやがて「物の置き場がない」と嘆くようになりますが「出来栄えの問題ではなくその時々の利用者が一緒に制作することに意味があるので終われば廃棄」と考える管理者だと置き場問題は全く起きませんもんね。

 限りある資源ともいえる「箱の大きさ」に「必要な物を選択して収める器量」が「物を管理する者には必要」です。
 年末大掃除に向けて、まずは我が思考を整理することが肝要ではないでしょうか。わが事業所活動室の整理をしながら思った次第です。

写真

 どの業界にも「業師」がいらっしゃいますが、月に一度は尋ねさせていただく蕎麦屋のマスターも業師のひとりです。
 僕が、マスターに「名古屋に昔からやっている麺屋があり、そこのきしめんはゲゲゲの鬼太郎の塗り壁のように平べったい麺。そういや蕎麦で平たいのは見たことないね」と振ると「蕎麦でもできますよ」と答えが返ってき、次に行ったときに、何やらごそごそしているなと思ったら、平たい蕎麦に挑んでくれてました。

 ところが、マスター自身が飲酒で挑んだせいもあってその時は失敗に終わり心の底から己を責め悔やんでいましたが、その後訪ねた際、追い打ちをかけるように「沖縄に行って初めてヒラ琉球そば(下の写真)を食べたわ」と嫌味球を投げておいたら、その次に訪ねた際に出してくれたのが写真の「平たい蕎麦」です。

 素人の僕が言うのもなんですが、めちゃくちゃ美しい仕上がりでしたよ。もちろん、もともと蕎麦の味は抜群に美味しいマスターなので、メニューに加えてもらいたいわ。

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