メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?

高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。

プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

第511話「利用者および家族の生活への意向」はどこへ?~ありえへん!第1表の表記がいきなり変更?~」

 介護保険制度改正にともない昨年から頻繁に老健局から通知類が発出されています。そのなかでも年度末の末日の3月31日付けで「介護保険最新情報№958」が厚労省老健局から通知されました。
 すでにこの通知は全国のケアマネジャーのみなさんのなかでも話題になっています。

 「いつからこの通知通りにやらなくてはいけないの?」
 「課題分析の結果って、どう書けばよいの?」
 「そもそもこんな話はいつ進んでいたの?」

 そのタイトルは「居宅介護サービス計画書の様式と課題分析標準項目の提示についての一部改正について」というもの。ケアプランの様式変更とは聞き捨てならないです。

 それには次のように書かれています。
 それが第1表「利用者(家族)の生活への意向」欄です。介護保険スタート時、この欄は「利用者(家族)の介護への意向」となっていました。だから「〇〇デイサービスを使いたい」「ヘルパーをお願いしたい」のオンパレードでした。
 ICF(国際生活機能分類)が採用されるプロセスで「介護への意向」の表記は「生活への意向」となりました。つまり人生そのものに重きを置いた変更となり、私なりにとても評価しました。
 (当時、気づいていない人も多かったのですが・・・(^^;))

 そして今回はなんと、「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」を表記することに変わったのです。
 その説明文に「どのような介護サービスをどの程度の頻度で利用しながら、どのような生活をしたいのかについて、課題分析の結果を記載する」が使われていました・・・なんと、これは介護保険開始前の「老企第29号:平成11年11月12日」の一文です。すっかり歴史のなかに埋もれていたと思い込んでいましたが、しっかりと復活しています。

 実はこれまで厚労省は2表の課題設定の文言を「介護サービス名を表記して解決するような課題設定ではいけない」という趣旨の説明もしてきました。それは介護サービスありきになるからです。
 1表の意向欄も「介護の意向」から「生活への意向」に変わったこともあり、この15年間、ほとんどのケアプランの表記例は本人および家族の意向をそれぞれに記載するようになりました。
 介護サービスの種類や頻度は「手段」であり、むしろ「どういう生活をしたいのか」の表記に重きを置いたのです。もちろん、主訴と意向の区別がつかず、課題分析前に利用者(家族)から語られる「主訴」をそのまま表記するケアマネジャーたちもいまだ多く散見されるというのも事実ですが…

 しかし、今回、「~を踏まえた課題分析の結果」となると、「課題分析した結果の利用者(家族)の生活への意向」でなく、ただの「課題分析の結果」のみを記載するものだと解釈するケアマネジャーがあらわれる懸念があります。
 さらに心配なのは、解説で「利用者が持っている問題点を明らかにする」とまで言及しています。この解説だと利用者(家族)の「できない探し」をして、その原因を分析し、「だから~~が必要だ」という上から目線での指摘的分析結果を書き連ねる人が出てくるのではないでしょうか?

 利用者および家族の「生活への意向」が無視・棄損され、ケアマネジャーの分析?の結果だけが一人歩きすることになったら・・・利用者(家族)の「切実なる思い・声・意向」がケアプランから消えることにもなりかねません。

 あるケアマネジャーが「利用者(家族)の主訴と意向がズレているときに、その分析した結果をどのように書けばよいのか、不安になります」と私のFacebookに書き込みをしてくれました。
 分析の表記の仕方で「私が話したのはこのような意味ではない」「どうして勝手な解釈をするのか」と大クレームが利用者(家族)から届くことも想定しなくてはいけないでしょう。

 正直、今回のこの通知はあまりに不意打ちです。
 介護給付費分科会の議論もまとまり「試合」が終わったと思ってるところに、まだアディショナルタイムがあって、年度末の最終日に勝手にゴールを決められたような・・・(>_<)。なぜこの日を選んだのか?なぜこの日だったのか。大いなる疑念を抱くのは私だけでしょうか?

 職能団体やケアマネジメントにかかわる学識経験者の方々がどのような反応をされるか、いま注視しています。沈黙・静観するのか。忖度して周囲を見て回っているのか、あるいは見て見ぬモードを通すのか。このままなんのアクションもとならないと合意・了承ととられかねないのではないでしょうか。

 全国のケアマネジャーのみなさん、地域包括支援センターのみなさん、以下のURLにアクセス&ダウンロードし、ご自分なりにどのように解釈するか、利用者(家族)にどのように説明するか、ケアマネジメントにどのような影響が生まれるか、を考えてみませんか?
https://bit.ly/2Q436qA

 なお、私のFacebookではこの件について複数人の方たちとのコメントが掲載されています。ちょっと深い議論もしています。よかったらアクセスしてみてください(^^)/。
https://www.facebook.com/shigeyuki.takamuro