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高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?

高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。

プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

連載:高室流“考えるヒント”が終わったのだ!

 先週、新連載の思いを書いたのですが、思えば「高室流“考えるヒント”の締めを書いていなかったことに気づきました。物事は順序立ててていねいにやりなさい、という母の教え(あればよかったのですが)もあるので、今回はこのことを書こうと思います。

 そもそも「なぜにこのようなテーマを取り上げたか?」。

 そもそも、この「考えるヒント」というタイトルは、敬愛する文芸評論家:小林秀雄が世に問うた書と同名を拝借したものです。

 なにも、この大家の向こうを張ろうという大胆な心づもりでなく、介護・福祉業界における「言葉」のちょっとした使い方に違和感を抱いたからです。


 とりあげた「言葉たち」は次のものです。

  •  ・違和感
  •  ・その人らしさ
  •  ・おもてなし
  •  ・支援する
  •  ・家族さん
  •  ・ありがとう
  •  ・価値観
  •  ・連携
  •  ・自立と自律
  •  ・福祉とふくし
  •  ・共感

 思えば、日常的に使われている「福祉的介護的言葉」たちを、少しタカムロ的斜め目線と一般的社会目線で読み解こうという初の試みでした。


 正直、結構、自分としては気合いのある連載でした。本音?を言い過ぎず、率直に語るのだが決めつけや罵倒(^_^;)ではなく、かつ読者に「考えるきっかけ」を作るというのは至難の技でした。

 なにしろ、ついつい筆が走ってしまうわけです。
 だから、どうしても飛躍が生まれます。

「これでは、ちょっと読者には伝わりにくいですね」
 と月刊ケアマネジャーのHさんにご指摘を受けて、そこから二度目の悩みが始まることに・・・
 書いていて、「実は俺はなにを言いたいのだろう?」とハタと立ち止まることも数回ありました。

 「家族さん」の回はひどかったですね。そもそも江戸、明治、昭和、平成の日本の家族の歴史を社会学的な視点から書き始めたのですから。ところが、これは「書き切った感」はありましたねえ(笑)。

 が、前段が長すぎて意味不明と指摘されました。

 要するに、私の思いは「家族さんという抽象的な言い方がどれほど現場を混乱をさせているか。言われる家族さんたちがどれほど傷ついているのか」ということ。そしてついでに「息子さん、娘さんという言い方で子どもたちはムッとしているか」を伝えたかったわけです。


 「おもてなし」の号も緊張しましたねぇ。「おもてなし」は世界発信の日本国の国是といっていいほどの立ち位置にある言葉。福祉・介護業界のみなさんも使うようになって、違和感を感じていたので、いずれはとりあげようと・・・

 ここで本音を申し上げると、自分なりの意見や解釈を表明することは「言い訳ができない」立場になるということでもあります。さらに読んでいただけるとわかりますが、かなりのウイット、わかる人が読めばギリギリの皮肉的な表現をつかっているのです。

 批判的な書き方は敵を作るだけの野蛮な方法。自分はそれほどの勇気があるわけではないので(笑)、せいぜい皮肉か問いかけが精一杯という・・・(^_^;)

 ところが、「おもてなし」はがんばりました。だって「ケア」とは相容れない部分があまりにも多いのですから・・・

 ※ただし、おもてなし文化を否定はしていません。すばらしい日本文化であり、人間関係の潤滑油的行為だと思っております。


 この「ありがとう」もがんばりました。以前から・・・

「利用者からありがとうと言われると、私、とても励みなるんです」
「ありがとうの感謝の言葉が私を支えてくれています」

 これをしみじみと語る現場の方々の「心の言葉」には、とても共感をしていました、かつては。しかし、ある時、あまりに多すぎるので「オヤッ?」と思う自分の虫がウヅキはじめ・・・

 よくよく考えると、これって言われる方の気持ちばかりで、その「ありがとう」を言わねばならない相手の気持ちを考えると、そうそう単純に喜んでいいのでしょうか?という疑問が湧いてきたのです。

 この号の反響はなかなかでした。
「このように考えたことはなかくて、本当に目からウロコでした」
「そうですね、ありがとうの言葉に依存しているかもしれませんね」
 どうやら私の真意は伝わったようで、ホッと胸をなでおろしました。



 このようにずっと書いてきた「考えるヒント」。

 この連載の原動力であり、普段の私の「考えること」を動機づけてくれているのが前述したように「違和感」なのです。

 素直な心は大切です。でもそれが従順となったとき、なにも考えない人間が生まれます。

 あの経済学者としてファンの多いドラッカーが、なぜ「マネジメント」をテーマに(主に企業経営が多いが、非営利法人のマネジメントにも造詣が深い)、多くの著作をものにしたのか・・・

 それはドイツのアドルフ・ヒトラーの「ファシズム」への恐怖からでした。暴力と恐怖は人と組織に「考えない」ことを求め、そして「部品と装置」と化することになることを洞察したからです。

 そして、そこには「マネジメント」がなかったと喝破したのです。

 過去の実践から学ぶことは大切です。

 歴史から未来を読み解くことも必要でしょう。

 しかし、世界のどこも体験したことない高齢社会、多死社会を迎える私たちに必要なのは、分析や解析だけでなく、未来を描く「考える力」「創造と想像する力」ではないかと考えます。

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    |日 時|4月19日(日)10:30~17:00(残席あり)
    |詳 細|HPにて→http://caretown.com/tokyo/handle2704.shtml
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    |日 時|5月17日(日)10:00~17:30
    |詳 細|HPにて→http://caretown.com/tokyo/present2705.shtml
 全国研修の様子は、ケアタウン総合研究所の公式FBをご覧ください。