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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

見せかけ・思い込み先進国

 2月10日厚労省アドバイザリーボードの脇田隆字座長は、「感染者数の報告の遅れや検査のひっ迫などによって、公表データが実態と乖離している可能性が指摘されている」と発表しました。

 多くのメディアは、実態との乖離の原因について、保健所業務のひっ迫やFAX報告を続ける医療機関に起因する問題に偏った報道をしています。検査ひっ迫の問題を取り上げない傾きには、意図的な偏向が透けて見えます。

 日本のメディアは、ヨーロッパ各国でCovid-19に係わる市民生活への機制を緩和または撤廃する動きを大きく取り上げる中で、検査のひっ迫がヨーロッパにおいて全く生じていないことは十分に報じません。

 イギリスでは、子どもたちが毎朝自宅で検査を実施し、陰性確認のできた児童だけが登校する仕組みを構築しています。その他のヨーロッパ各国もほぼ同様で、通学する児童に対しては学校から無償で検査キットを配布し、それ以外の人たちは薬局で無償の検査を受けることができます。これらの検査体制にひっ迫した事態はありません。

 ところが、日本では検査を受けようとしても受けることのできない事態が、2年余り前のCovid-19感染の初期段階からずっと継続してきたのではありませんか。検査の実施は、国民一人一人が感染から身を守るためには必要不可欠です。それがずっと不十分なままです。

 東京都や埼玉県で無償の検査を実施することになったという自治体の発表を受けて、発表の2日後に、私は自治体の指定する薬局に出向いたことがあります。すると、どうでしょう。

 「検査キットが切れたので明日以降になります。しかし、どれくらいの数の入荷があるのか分からないので、こちらに来られる前に、検査キットがあるかどうかお電話で確認してもらった方がいいと思います。」

 あくまでも川越市のケースに過ぎませんが、これが無償検査の実態です。

 猛烈な勢いで感染者数が増大してくると、医師の判断で「みなし陽性」まで登場することになりました。ブースター接種が遅れた訳と検査体制のひっ迫が改善できないことの説明はどこにもありません。オミクロン株は風邪と変わらない症状の人がいるという特徴を公表しながら、検査せずに「みなし陽性」を感染者数に含めるのは、全く理解不能です。

 これって、立派な「統計不正」ではないのですか。

 さらに、「みなし陽性」は、とんでもない混乱を招いているのです。ある障害者支援施設で、一人の利用者の感染が確認されたところに保健所がやってきて、施設利用者全員を「みなし陽性」と判断し、施設丸ごと隔離したというのです。つまり、利用者が全員施設に閉じ込められることになりました。

 この事案が「医師の判断」によるものであるのかどうかは、この施設の職員も分からないと言います。

 そして、一週間後になって多くの利用者に症状が出たため、ここで何故か検査が実施されて、全員の陽性が確認されたというのです。どうして、このような人権侵害行為が許されるのでしょうか。社会福祉施設が「Covid-19収容所」になっているではありませんか。

 本当に検査キットは払底しているのかについて疑問に思った私は、インターネットで調べてみました。複数のサイトで「明日に配達」の保証付きで普通に販売しています。

 検査キットの在庫は国内にあるのです。要するに、ヨーロッパのような検査の体制整備をしてこなかっただけなのです。

 施設に利用者が閉じ込められた事態を連絡してくれた施設職員は、「日本は果たして先進国と言えるのか」と絶句して締めくくりました。

 わが国の現状にある問題を指摘するとき、「先進国であるにも拘らず」という言葉のつくことがしばしばあります。「日本」にくっついて使われる見苦しい枕詞のようです。

 日本は先進国であるにも拘らず、幸福度56位、自由度 64位、寛容さ 92位、腐敗のなさ 39位、報道自由度67位(国境なき記者団による)と並びますが、健康寿命 は2位(74.8歳)です(とくに断りがない限り、OECDのデータ)。

 旅行会社のエクスペディアが先進国19か国で実施した有給休暇に係わる調査結果によると、日本は有給休暇取得率の最下位を続けています。また、2018年の初等教育から高等教育の公的支出が国内総生産(GDP)に占める割合は、OECD主要先進国の中で最下位から8番目。GDPでみると、総額では世界3位ですが、一人当たりでみると24位です。

 このようにみてくると、GDPの総額と健康寿命の二つだけは「いい線」なのかも知れませんが、それ以外で先進国に該当するところは軒並みありません。つまり、日本人が日本のことを先進国だと勝手に思い込んでいるところに、議論の出発点としての誤りがあるのです。

 日本の文化には実に優れたところがありますから、決して自虐的に日本を捉えようとしているのではありません。ものづくり、芸術、食文化、景観など、素晴らしいところは山のようにあります。

 でも、間違いのない統計をつくるという近代国家の初歩的な実務さえ成立しなくなった非先進国的な事態を正視する必要はあります。国際比較の中で日本を表現するときには、「後進国」や「発展途上国」ではなく、「見せかけ先進国」「思い込み先進国」とか「跛行的発展停止国」あたりが的確な表現であるように思えます。

埼玉県南部ワクチン接種センター

 ブースター接種でモデルナが敬遠されていると報じられています。ファイザーのワクチン接種のできる医療機関の予約状況を調べてみると、確かにかなり先まで予約が埋まっていました。モデルナを打つことになる埼玉県の大規模接種会場は、翌日分の予約がとれるため、さっそくワクチン接種を受けてきました。

 接種センターの職員の皆さんは、会場でのソーシャル・ディスタンスを確保に注意を払いながら、来場者に混乱や間違いが起きないよう、適切で落ち着いた案内に心がけていました。おかげで安心してワクチン接種を受けることができました。

 2回目までファイザーで3回目がモデルナでした。ファイザーの2回目では1日寝込みましたが、3回目のモデルナについては、副反応はほとんどありませんでした。私と同様のワクチン選択の組み合わせとなった周囲の人たちにも、モデルナだから特別の副反応で苦しんだという人は見当たりません。何も問題のないことの参考にお伝えしておきます。