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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

令和元年度における障害者虐待

 今年の3月末に令和元年度障害者虐待対応状況等調査結果が出そろいました。

 使用者による虐待(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172598_00005.html)は昨年の8月28日に、養護者による虐待と施設従事者等による虐待は今年の3月26日に(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000189859_00005.html?fbclid)、それぞれの担当部署から調査結果が発表されています。

 担当が旧厚生省と旧労働省に分かれている事情があるとしても、虐待者と非虐待者の内訳を男女別に明らかにすることは統一していただきたい。

 障害者権利条約第6条(障害のある女子)とILO『ディーセントワークへの障害者の権利』の「1.30障害のある女性」に明記されているように、障害のある女性に係わる差別と人権保障の課題に特別の注意を向けることは、国際的な共通認識だからです。

 まず、養護者による虐待についてです。

 都道府県別にみる虐待件数のばらつきが目に留まります。虐待判断事例件数の多い順に大阪府188、愛知県119、東京都117、千葉県110、神奈川県97、埼玉県85と続いています。少ないところでは、徳島県3、高知県・大分県・岩手県がそれぞれ4となっています。

 虐待の発生が、単純に人口に按分した件数で出てくるとは言いませんが、このばらつきの要因を明らかにすることはとても重要です。家族のあり方の違い、自治体行政と虐待対応システムに係わる地域格差などによって、実際に発生している虐待ケースの捕捉率が都道府県によって大きく異なっている事態はないのでしょうか。

 子ども虐待の都道府県別発生件数をみても、これと同様の問題構造があることが伺えます。地域によって、虐待対応支援の捕捉率が異なるとすれば、人権擁護のあり方に容認すべからざる不平等な地域間格差があることとなり、大問題であると考えます。

 養護者による虐待について、被虐待者は女性の割合が高く(女性1,036人/62.3%、男性628人/37.7%)、虐待者は男性の割合が高い(女性666人/36.3%、男性1,167人/63.6%)ことは、従来から一貫しています。

 虐待者の被虐待者からみた続柄でみると、多い順に、父(492人/26.8%)、母(426人/23.2%)、兄弟(237人/12.9%)、夫(219人/11.9%)と続いています。姉妹(107人/5.8%)と妻(37人/2.0%)の少ない割合を含めて対比すると、身内の男性からの虐待行為の際立っていることが分かります。

 次に、施設従事者等による虐待についてです。

 ここでも都道府県によるばらつきが確認されます。虐待と認められた件数を多い順にみると、大阪府76、東京都37、千葉県34、神奈川県32、北海道・宮崎県がそれぞれ27と続くのに対し、少ないところは、和歌山県0(本当?)、茨城県・岐阜県・香川県・高知県がそれぞれ1(これも本当?)となっています。

 事業所の種別でみると、多い順に、障害者支援施設(160件/29.3%)、共同生活援助(グループホームのことです。90件/16.5%)、放課後等デイサービス(64件/11.7%)と、従来から問題が指摘されてきた社会福祉法人の入所施設と並んで、異業種から参入したNPO法人・営利セクターの多いグループホームと放課後等デイサービスの虐待発生が目立ちます。

 被虐待者は男性の割合が高く(女性286人/39.0%、男性448人/61.0%)、虐待者は養護者による虐待の場合と同様に、男性の割合が高い(女性209人/32.0%、男性445人/68.0%)点は、従来から同様の傾向です。

 施設等従事者による虐待の被虐待者に男性が多い点は、障害福祉サービスの利用者の割合を男女別にみると、男性が女性の2倍近い状況にある点を反映しているとみています。

 虐待者の職種については、生活支援員(275人/42.0%)と世話人(50人/7.6%)の、直接支援に従事する職員に多いことが分かります。しかし同時に、直接支援にあたる職員と並んで、サービス管理責任者(48人/7.3%)、管理者(47人/7.2%)、設置者・経営者(27人/4.1%)の幹部職員の合計で122人/18.7%にも上るところが、まことに深刻です。

 設置者・経営者・管理者に就くことのできる法的要件に問題があると指摘せざるを得ないでしょう。少なくとも、サービス管理責任者、管理者、設置者・経営者の虐待に対する厳しい処分を法的に規定すべきだと考えます。

 養護者による虐待において、虐待者が父を筆頭に男性に多く、施設従事者等による虐待においても、幹部職員を含む男性に多い事実は、これらの虐待発生の構造に家父長制的共同体主義の問題構造のあることを伺わせます。

 最後に、使用者による虐待についてです。

 虐待が認められた件数(809件)の中では、経済的虐待が圧倒的な割合(686件/84.8%)を占めています。

 被虐待者数(771人)を就労形態別でみると、正社員241人(31.3%)に対して、パート等360人(46.7%)、期間契約社員59人(7.7%)、派遣4人(0.5%)と非正規雇用の総計は423人(54.9%)となります。

 虐待者数の割合は非正規雇用の方が多いのですが、経済的虐待の占める割合は、正社員241人の中の222人(正社員の92.1%)、非正規雇用423人の中の374人(非正規雇用の88.4%)となっています。経済的虐待の割合の高さは正規雇用で目立つのです。

 虐待者(536人)については事業主472人(88.1%)の割合が高く、事業所(535)の業種では多い順に、製造業147(27.5%)、医療・福祉109(20.4%)、卸売業・小売業69(12.9%)、事業所の規模別では50人未満の事業所の総計で438(81.7%)に上ります。

 虐待に対して労働局の取った措置(815件)については、労働基準関係法令に基づく指導等の723件(88.7%)が最多で、中でも最低賃金法関係が381件(46.7%)と著しい割合の高さを占めています。古典的な労働問題を引きずったところで虐待の発生する構造が垣間見えてくるようです。

 次回のこの統計の発表は、Covid-19禍が家族・支援現場・職場を襲った令和2年度の状況を明らかにするでしょう。その前年の虐待の状況を理解しておくことは重要だと考えています。

薄っぺらな「インスタ映え」狙い―川越大正浪漫通り

 各地の観光地では、「インスタ映え」を狙った取り組みが氾濫するようになりました。流行りはカラフルなスイーツや鯉のぼりを数多く吊るす取り組み。いやはや食傷気味です。地元住民の日常の暮らしに根差していない取り組みや光景は、空疎なオーバーツーリズムであって決して文化ではありません。