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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

子どもの自殺

 夏休みが終わり新学期の始まる今、通学適齢期の子どもたちの自殺者がもっとも多く出る時節です。この間、新聞やテレビなどのマスコミを通じて、子どもたちの自殺予防に向けた呼びかけや取り組みが懸命に報じられています。

 自殺者数全体の減少がみられる中で、子どもたちの自殺は高止まりしています。厚労省の人口動態統計によると、2017年に初めて、10~14歳の死因は悪性新生物を抜いて自殺が最多となりました。

 2016年度における改正自殺対策基本法の施行によって発足した自殺総合対策推進センターは、『昭和48年度から平成27年度における通学適齢期の自殺者数に関する分析』を明らかにしています(https://jssc.ncnp.go.jp/file/pdf/2018-0807-report.pdf)。

 この中で直近の10年間でみると、8月下旬に自殺が最多になる事実を指摘しています。

これを学校別に多い時節順でみると、小学校段階では〈3月、9月、8月〉に、中学校段階では〈8月下旬、9月上旬、11月下旬〉に、高校段階では〈8月下旬、4月中旬、9月上旬〉にそれぞれ自殺のピークがみられます。

 これに対して政府と社会は様々な取り組みを推進してきましたが、子どもたちの自殺に歯止めをかけるまでには至っていないのです。

 全世代の中で、子どもたちの生き辛さが際立っているのでしょう。1980年代半ばから顕在化した不登校やいじめの問題は克服されることなくますます深刻になっていますし、格差の拡大と貧困児童の増大が進み、子ども虐待対応件数も年を追うごとにうなぎのぼりを続けています。

 これは大人と社会に責任があります。だから、みんなが総力をあげて的を射た取り組みを進めるべきです。

 ここで気になるのは、たとえば今年の6月に文科省が出した通知「児童生徒の自殺予防に係る取組について」で必要十分な注意喚起をしつつ、8月下旬から9月上旬の自殺発生が最も心配される時期に集中的に関係機関が連携して実施することについては、次の4点を指摘しています(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1418353.htm)。

 (1)学校における早期発見に向けた取り組み、(2)保護者に対する家庭における見守りの促進、(3)学校内外における集中的な見守り活動、(4)ネットパトロールの強化、です。

 これらはすべて取り組むべきことではありますが、この時節に子どもたちの自殺が増大する具体的な背景事情に即した内容かどうかには疑問が残ります。

 日本財団「不登校傾向にある子どもの実態調査」は、中学校の不登校は、文科省調査のいう10万人(30日以上欠席)よりもはるかに深刻である実態を明らかにしています (https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/01/new_inf_201811212_01.pdf)。

 30日未満の欠席でありながら「ぐずり登校」「部分登校」「仮面登校」に該当する実質的な不登校の数は、文科省の10万人の他に、さらに33万人いることを明らかにしました。

 文科省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/10/1410392.htm)、中学校における不登校要因は、「家庭に係る状況(30.8%)」「いじめを除く友人関係をめぐる問題(28.2%)」「学業の不振(21.8%)」が大きな要因に挙げられています。

 このようにみてくると、子どもたちの生き辛さの要因が「学校」と「家庭」そのものにあるにも拘らず、子どもたちの自殺予防の手立ては学校と家庭における「早期発見」と「見守り」を中心に組み立てるというのは間尺が合わないといっていい。

 子どもたちは学校と家庭に安心や信頼を持ち切れていないのですから、学校や家庭とは異なるところに、安心した居場所づくりと相談へのチャンネルを用意しなければならないはずです。

 今年こそ、学校と社会全体がすべての子どもたちを守り育むことのできる8月下旬~9月上旬になって欲しいと願っています。

ホンダ往年のスポーツカー

 さて、近くで本田宗一郎時代のホンダ往年のスポーツカーを発見しました。時代を超えたカッコよさを感じます。

 このスポーツカーの生まれた時代の方が子どもたちは生き生きしていたとすれば、その後の社会経済発展は、子どもたちの「健康で文化的な」暮らしと人間性を破壊する根本的な矛盾をもたらしていたのでしょう。