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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

リモート事例検討

 このところ、新型コロナウイルス問題に引きずられたような記事ばかり書いていて気が引けていました。しかし、様々なテレビ番組に、出演者がリモート出演する姿を見かけるようになり、「リモート」は事例検討のキーワードであることを思い出しました。

 というのも、10数年前、インターネットを使った事例検討の方法について研究した経験があるからです。きっかけは、当時、虐待の事例対応ではチーム対応が前提となることは理解できるものの、別々の機関に所属する関係者を集めて会議をするのは一苦労だ、と言われていたことです。

 ICT(情報通信技術)の1つ「ウェブ会議」のサービスを使えば、場所の確保やメンバーの(移動時間も計算に入れた)日程調整、資料の作成、印刷、配布などにかかる手間暇をカットできる、と考えたわけです。

 当時でも手応えはありましたが、最近身近な大学が遠隔授業を行い始めたのを期に無料のサービスを試してみたら、あらビックリ。パソコンやタブレット端末の性能が格段に向上したこともあるのでしょう、遥かに使い勝手が良くなっています。

 会議の開催予定は、メンバー同士でカレンダーを同期すれば事足ります。予定された日時になれば、自動配信された招待状にあるアドレスにアクセスし、パスワードを入力すればあっけなく“ご出席”です。

 そして会議が始まると、参加者全員の顔が映るようにも、発言者のみが映るよう自動で切り替わるようにもできますから、対面の会議とあまり変わりません。それに、パソコン画面やファイルも共有できますから、資料の配布も印刷も保存も簡単です。

 また、実際のホワイトボードのように、参加者が1枚のボードに書き込める機能やチャットの機能もありますし、会議の様子を録画・録音もできるので、議事録を作成するうえで大助かりです。

 さらには、何人かメンバーを選んでブレイクアウトルーム(小部屋)を割り当てる機能により、グループワークにも使えると分かりました。研修、会議の延期や中止が続く私は、「こんなに便利なのになぜ普及していない!」の思いひとしおです。

 確かに、ハードとソフトのトラブルに備えて、対処法を身につけておく必要はあります。また、生産性をあげようとすれば、かなりの創意工夫も必要でしょう。1コマの対面授業に代えるなら、教育番組を1本作るくらいのノウハウは要るかもしれません。

 しかし、事例検討のような会議なら、導入のメリットはデメリットを大きく上回ると思います。セキュリティーなども気になりますが、サービスの普及に伴い解消されていく問題も多く、現に、ネット・バンキングのビジネスは成立し、オンライン診療も可能な世の中です。感染症の与えた「人類進化の機会」くらいに捉え、積極的に促進していきたいものです。

 1時間の会議なのに、何倍もの時間を費やして行って帰って、除菌のためにシャワーを浴びた後このブログを書いている私は、痛切にそう思います。

右下「そろそろ検討しない?」
その他「楽しくて忘れてたぁ!」