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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

研修の実効性をあげましょう(その2)


参加者の学習段階に合わせてなんぼ

 今回は前回の続きで、米国のガイドラインの2つ目の柱「研修の設定とテクニック」と3つ目の柱「学習の段階」をみていきます。確かに、講義、実演、演習、視聴覚教材、レポート、テストなどのテクニックも重要ですが、最大のポイントは、参加者の学習段階に合わせた調整にあると思います。

 第1段階の参加者は、「何を知らないかさえ分からない」状態です。ですから、乾いた大地が水を吸うように新しいことをよく吸収できる状態です。これに対して第2段階の参加者は、知っていることを意識的に実践しようとしても、上手くできない状態にあります。

 たとえば、何回か研修を受けてある程度の知識はあるため、初耳のことであっても、既存の知識をたよりに類推することができます。しかし、実践となると上手くできない、いわば「耳学問」に留まっている、とも言えます。

 第3段階の参加者は、第2段階の一足先を歩んでいます。定期的に研修を受けたり、トレーニングを積んだりして、意識すれば獲得した知識や技術を実践に活かせるからです。そして、知識や技術を獲得する大変さを経験済なため、後進の教育係として適任です。

 第4段階の参加者は、必要な知識と技術を体得していて、意識しなくても実践できます。いわば「免許皆伝」であって、スーパーバイザーの補佐役も担うことができます。もっとも、この段階に達するまでに要する時間は人によってかなり異なりますし、到達できない人もいます。

学習の効果

 「学習の効果」については、多角的な視点から評価することが求められます。1つは「参加者の成長」を評価する視点です。実践に必要な、事例検討、面接とアセスメント、虐待防止の支援計画立案、正確かつ適切な文章化などの項目に関して、どれだけ成長したかを評価します。

 2つは「クライエントに最善の利益をもたらせるか」を評価する視点です。クライエントの安全性の確保、クライエントの自主性の尊重、法令遵守などに関する能力を評価します。そして、3つ目は、1つ目と2つ目の項目に関する、参加者自身の自己評価です。

 むろんこれらの結果次第で、追加の研修や前回の「学習と大人の脳」で述べた諸点の再点検を検討することになりますが、対症療法的な方法もあります。オススメは、研修参加の前提となる知識の不足や、研修が詰め込み過ぎになっていないかチェックすることです。

 さらには、参加者との関係をコーチングの循環プロセスで捉えてみると見晴らしは良くなると思います。第1に、研修目的を明確に伝え、その人にとっての重要性を認識してもらいます。第2に、参加者のおかれた現状について情報を提供してもらい、問題や懸念を共有します。

 第3に、問題や懸念の解決策を一緒に模索しますが、必要なリソースはこちらから提供します。第4に、行動計画を立案してそれを定期的に見直し、第5に、行動計画の結果を評価して上手くいったなら称賛し労い、さらなる発展のために、循環の二巡目へと進んで行きます。

「学習段階に合わせないと?」
「このような仕上がりに…」