ケアプランに活かす！ 病気と薬の知識
【ケアプラン記入例】すぐ使える！関節リウマチの利用者のケアプランの書き方＆文例【ケアプラン点検者監修】
【監修】
阿部充宏（合同会社介護の未来代表）
社会福祉法人に25年勤務し法人事業部長や特別養護老人ホームの施設長を経て、2015年に合同会社介護の未来を興し、以降現職。2016年よりケアプラン点検事業を受託し、2022年度は15保険者（神奈川県・岩手県・福島県・山形県）で、年間約600人のケアプラン点検を実施。また、指定市町村受託事務法人として、5保険者から委託され、年間100事業所の運営指導を行っている。
高齢者に多い関節リウマチのある人のケアプランの書き方・文例を解説します！
1 関節リウマチってどんな病気？
関節リウマチは、関節の中にある膜の炎症によって、関節軟骨や骨の破壊が進行し、関節機能に障害をきたすものです。
関節リウマチの症状として、関節症状では、朝（起床時）のこわばり、関節の腫れ（左右対称、あちこちに移動する）、腱鞘炎、関節炎が現れます。肩・肘・股関節・膝・足首・手首・手の第2関節・手足指の付け根などに生じることが多いです。
全身症状では、微熱、体重減少、倦怠感、易疲労感、リンパ節の腫れ、貧血などが現れることがあります。
2 関節リウマチの治療は？
| セルフケア | 適度な運動と安静、規則正しい食生活 |
| 薬物療法 | 抗リウマチ薬、生物学的製剤、JAK阻害薬、ステロイド製剤 |
| リハビリテーション | 関節の動く範囲と筋力を保持する |
| 手術療法 | 人工関節置換術、滑膜切除術、関節固定術 |
3 関節リウマチの利用者のケアプランの書き方のポイント
生活の維持をサポートする
関節リウマチによる痺れや痛みなどから、生活への意欲が下がり、それまでできていたことができなくなってしまう利用者は少なくありません。適度に身体を動かし、生活を維持するサポートが求められます。
ケアプランには、関節にやさしい環境づくりとして、「手すりの設置」「洋室トイレへの変更」など、住環境のアセスメントを詳細に行い、必要に応じて住宅改修を検討することもよいでしょう。
また、利用者の現状を受け止めつつ、少しでも前向きに生活に取り組めるよう意向を引き出します。「膝が痛いですが、孫に駄菓子屋さんでお菓子を買ってあげたい」「右手首に痺れがありますが、息子の好物をつくってあげたい」など、自分以外の「誰かのため」という視点や「〇〇にはなりたくない」という否定的な感情についても、よりモチベーションにつながる場合もあります。
医療職も含めたケアチームで共通の指針を設定
関節リウマチは、多職種との連携が欠かせません。医療職と情報共有し、服薬状況や合併症の有無など確認する必要がありますし、関節の変形などがあれば、介護職と介護の方法について検討する必要があるかもしれません。
それぞれが専門性をもって利用者にかかわりますが、「総合的な援助の方針」では利用者のニーズを解決するために、全職種が共通して確認・観察するポイントを記入します。「食事の有無・食事の量・内容を確認します」「残薬の確認と服薬の声かけを行います」など実施内容が具体的になるようにします。
4 関節リウマチの利用者のケアプランの文例
4－1 利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
- ・（本人）左手が痺れていて、食事づくりのやる気が出ませんが、娘のために夕食づくりを続けたいと思っています。
- ・（長女）母は元々料理好きですが、関節リウマチになってから料理する回数が減っています。以前のように、毎日料理ができるようになってほしいです。
- ・（今後の方向性）硬い食材を切る際には助けを借り、調理や味付けは自分で行っていきましょう。包丁などの器具も、扱いやすいものに変更するなど環境を見直しながら、夕食の料理ができることを目指しましょう。
- ・（本人）関節の痛みで長く立っているのがつらいですが、スーパーでの買い物は好きなので、自分でできるようになりたいです。
- ・（次男）父は昔から頑張りすぎるところがあり、少し心配ですが、父の好きな買い物を一緒にできるようにしたいです。
- ・（今後の方向性）日々の関節の痛みを確認しながら、近所のスーパーでの買い物を目標にリハビリテーションを継続して行きましょう。
4－2 総合的な援助の方針
- ・関節の痛み度合いと足の運び（引きずり度合いや足の上り方等）を観察し、「頑張りすぎていないか」「無理していないか」を確認します。
- ・2023年12月に〇〇スーパーマーケットで転び、骨折されました。リハビリテーションを経て、自宅に戻りましたが、自分自身も歩行に不安のある状況です。支援チームは、歩行時の姿勢や歩幅（狭幅になっていないこと）を確認します。
- ・早朝に関節のこわばり、右手の痺れ、全身の倦怠感（だるさ）があります。薬を飲み忘れることがあるため、「服薬の確認、声かけ」を行います。
4－3 生活全般の解決すべき課題
- ・歩行に不安がありますが、歩行訓練を続けることで、スーパー（自宅より150ｍ）まで歩いていくことを継続したい。
- ・体重が増加し、関節に負担がかかっている状況です（70㎏、BMI25）。
- ・右足首にしびれがありますが、一人で買い物に行けるようになりたい。
- ・関節のこわばりや全身の倦怠感がありますが、服薬忘れをなくし、症状を軽くしたい。
- ・自宅内でふらつくことがありますが、ふらつくことなく移動できるようになりたい。
- ・関節の痛みで長く立っていられないですが、自分で調理を続けたい。
4－4 長期目標・短期目標
- ・（長期目標）長女のために夕食を一人でつくることができること。
（短期目標）①柔らかい食材のカットができる。
②好みの味付けができる。 - ・（長期目標）服薬忘れがなくなり、リウマチの症状が軽くなっていること。
（短期目標）声かけを受けて、服薬できていること。 - ・（長期目標）自宅から約150ｍ先の☆☆スーパーまで歩いて行けること。
（短期目標）自宅から約80ｍ先の〇〇公園まで歩いて行けること。 - ・（長期目標）2か月に1回、美容室に行くことができていること。
（短期目標） 次女に付き添ってもらい、2か月に1回美容室に行くことができること。 - ・（長期目標）ふらつくことなく、自宅内を移動できること。
（短期目標）ふらつくことなく、廊下（8m）を歩くことができること。
5 ケアプラン作成におすすめの書籍
もっとケアプランの書き方・文例を知りたい人は以下の書籍を参考にするのもおすすめです。文例・事例が豊富に掲載してあり、ケアプラン作成に悩んだときにヒントとなる情報が満載です。
改訂 文例・事例でわかる 居宅ケアプランの書き方
文例・事例でわかる 施設ケアプランの書き方
この記事を監修した人
阿部充宏氏（合同会社介護の未来代表）
社会福祉法人に25年勤務し法人事業部長や特別養護老人ホームの施設長を経て、2015年に合同会社介護の未来を興し、以降現職。2016年よりケアプラン点検事業を受託し、2022年度は11保険者（神奈川県・岩手県・福島県・山形県）で、年間約500人のケアプラン点検を実施。また、指定市町村受託事務法人として、5保険者から委託され、年間100事業所の運営指導を行っている。
介護の未来ホームページ：https://kaigonomirai.net/
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