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ルポ・いのちの糧となる「食事」

下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

食べること、好きですか? 食いしん坊な私は、食べることが辛く、苦しい場合があるなんて考えたことがありませんでした。けれどそれは自分や身近な人が病気になったり、老い衰えたりしたとき、誰にも、ふいに起こり得ることでした。そこで「介護食」と「終末期の食事」にまつわる取り組みをルポすることにしました。

プロフィール下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

出版社勤務を経て、1994年より公衆衛生並びに健康・美容分野の書籍、雑誌の企画編集を行うチームSAMOA主宰。構成した近著は「疲れない身体の作り方」(小笠原清基著)、「精神科医が教える『うつ』を自分で治す本」(宮島賢也著)、ほか。書籍外では、企業広報誌、ウェブサイト等に健康情報連載。

第110回 HOPE! Series.1 糟谷明範さん(後編)

はじめに

 これからの食支援のホープになると思う人に会い、希望のある話を聞き、話して、考えたことを、いま医療や介護の現場で働きながら、今後の働き方について考えている方に伝えることをめざして、前回から新しいシリーズを始めました。
 初回は株式会社シンクハピネス代表の糟谷明範さん。お話ししてとくに2つのことを考え、前後編の2回でお伝えしています。
 自薦他薦は問いませんので、「我こそ(彼こそ)近未来の食支援のホープ」という人物・団体等に心当たりがありましたら、ぜひ取材先として教えてください!

輝いている人の共通項!?
数え切れない、いくつもの顔

 糟谷明範さんは理学療法士として勤務していた頃から、主に西東京地域の多職種との交流に積極的で、人脈を広げてきました。食支援に関係するところでは日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックで開催されていた「胃ろうレストラン」の実行委員の1人でしたし、現在も「たまケアLive」のキャプテン(リーダー)として、多職種の若手をつなげ、次世代リーダー育成に取り組んでいます。
 株式会社シンクハピネスのスタッフも、20代後半~30代前半の若手が中心。30余名のほとんどが以前からの知り合いで、糟谷さんが掲げた企業理念や展望に共感して集まったメンバーということです。

「よく事業に不可欠なのは『人・もの・金』といいますが、僕には『人・人・人』だという信念があります。
 そして展望をもっていなければ、事業は進まない。展望が共有できないメンバーと目標は達成できない。そんな風に考えているんです。
 若く、経験が少なくても、『家族や友人が医療・介護を必要としたとき、胸を張ってサービスできるようになろう』という信条で努力し、実績を積んでいけば、信頼を得ていくことはできます。
 理念や展望に共感して集まった『人・人・人』だから共に、医療・介護事業のほか、地域創生事業というトライ&エラーをやっていける」(糟谷さん)

 なるほど。やはり「人」が集まる地域は動き、新しいシステムがつくり出される。これは他の食支援の取材でも聞いてきたことです。では、そのベースとなる人脈はどうやったら広がるでしょう!?
 よく、人脈をもっている人のことを“顔が広い”と言いますが、筆者は比較的ラクに、確実に人脈を広げるには、いくつもの顔をもつことが得策ではないかと思います。

 “顔”は、立場・役職・役割・場面などで数えることができます。
 糟谷さんはいくつの顔をもっているでしょうか? 数えてみました。
 理学療法士、経営者、コーヒー屋さん、フラット座談会(カフェ&スペースFLAT STANDにて月1回開催)主催者、農家、商店街の新人、地元っ子、たまケアLiveキャプテン。そして個人としていくつかの生活の顔(子であり、夫であるなど)もあり、筆者の知らない別の顔もあることでしょう。とても数え切れません。
 これほどの顔があれば、多くの人と出会い、自ずとつながって、いつしか人脈に広がりができて不思議はありません。多くの人との現実的な関わりが、人間的な魅力を高めて、さらに人と出会う機会をもたらし、新しい顔を増やすでしょう。

 社会(職場)の顔だけというより、社会(職場)の顔、個人の顔、地域の顔の3つ、トリプルフェイスぐらい、くっきりとしているほうが、何か問題があったとき一時避難・発想転換の場があって自分がラクということもあるかもしれません。ひとつの顔で、同じ問題に向き合い続けるのはくたびれるでしょう!?

 おそらく年齢を重ねたからといって、顔が増えたり、人脈が増えることはないでしょう。自分から求めなければ、因縁は生じません。人と関わりがあっても、“顔なし”の関わりもあります。そして一概にはいえないけれど、歳をとるほど新しい顔をもつのをおっくうに感じたり、機会が減るかも。老婆心ながら、1歳でも若いうちに動き出すことをおすすめします。
 職場のスキルをもって、地域に顔をつくる。個人的な問題や共感をもって、専門職間や地域に顔をつくる。いまがどんな顔でも、そのまま、縁があった場所に出ていき、人と関わることで、ものや金に代えられない宝物が得られる。
 糟谷さんとの対話から、いきいき輝いている人の共通項のひとつだと確かめました。

 なお、糟谷さんの事業展開の根底にある思いや、経緯は、2016年10月16日に開催された「MEDプレゼン2016 社会医療人たれ!」のプレセッションで語られているので、ぜひ、リンクの動画をご覧ください(映像は約9分)。


イベント案内
一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会
設立2周年シンポジウム
ここからはじまるエンドオブライフ・ケア
~超高齢少子化多死時代における”つながり”を考える~
Beginning of End-of-Life Care
4月22日(土曜日) 13:00-17:00(12:30開場)
 総合司会として長尾和宏先生(同協会理事、長尾クリニック院長)が登壇し、小澤竹俊先生(同協会理事、めぐみ在宅クリニック院長)の活動報告のほか、小野沢滋先生(同協会理事、みその生活支援クリニック院長)、西川満則先生(同協会相談役、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 医師)、戸松義晴氏(増上寺塔頭 心光院住職)、金子稚子氏(ライフ・ターミナル・ネットワーク 代表)の講演が予定されています。
 超高齢少子化多死時代において、途切れているさまざまな“つながり”について考える機会としたい、とのこと。介護職の方々が地域づくりを推める中で、大いに参考になるテーマと考えられます。終了後は、会場にて1時間ほど情報交換の時間も設けられるそう。ぜひ足をお運びになり、貴重なディスカッションに参加すると共に、登壇される先生方と直接お話しする機会をもっていただきたく、ご紹介しました。
  • ◆場所:笹川平和財団ビル11階国際会議場
    〒105-8524 東京都港区虎ノ門1-15-16
  • ◆費用:一般:3,000円/会員:2,000円

  • * この連載では第89回に設立1周年記念シンポジウムについてお伝えし、第100回に同協会が運営するエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座についてご紹介しました。ご興味がある方は併せてご一読ください。