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ほじょ犬って、なあに?

橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。

プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。

著書

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著(中央法規出版)

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著
(中央法規出版)

第144回 駅における視覚障害者の転落事故死報道を受けて

 報道等でご存知の方も多いと思われますが、8月15日午後5時45分頃、東京メトロ銀座線青山一丁目駅にて、盲導犬ユーザーがホームから転落し、電車にひかれる事故がありました。残念ながら搬送先の病院にて死亡が確認されました。
 この度お亡くなりになられた盲導犬ユーザーさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。ホームに残された盲導犬は、訓練事業者により無事に保護されています。

 この春、転勤にて上京され、活き活きと仕事をされていた矢先の、本当に無念な事故でした。
 ただただ、不運が重なったとしか言いようがない事故ではありますが、この「死」を無駄にしないためにも、今後、「社会を構成する我々1人1人が何をすべきなのか?」を考えてみたいと思います。

※この写真は今回の事故とは全く無関係です。私の友人がホーム移動する様子です。
黄色い点字ブロックの左側に電車が止まっています。先頭に先導する関係者がいるので、盲導犬たちは点字ブロックの更に内側を歩いていますが、単独歩行時は、もっと盲導犬が電車よりに歩く形になります。
点字ブロックの右側に見える細長い出っ張りは、「こちら側がホーム内側である」ことの印です。
ただ、これを確認するのも視覚ではなく、白杖や足裏の感覚で初めて確認できるものとなります。

我々1人1人が何をすべきなのか? 何ができるのか?

 まずは「勝手な思い込みによる不要な躊躇をなくすこと!」です。そして、とにかく当事者の声を聞き、社会全体で「全ての人が安心できる社会作り」の具体的なイメージを共有して行くことから始めましょう。

1.勝手な思い込みによる不要な躊躇とは・・・

 多くの方が、周りにいる『サポートが必要な人』に気付いていても、声をかけるのを躊躇してしまうのが、現状の日本社会だと感じます。

 ただ、こんな経験はないでしょうか?
 ある日、勇気を出して声をかけてサポートを申し出た。すると、「結構です」とアッサリ断られた・・・

 そんな経験をしてしまうと、なおさら躊躇してしまいますよね。私自身、何度か経験があります。
 例えば、こんな経験があります。こちらとしては、親切心から「どちらまで行かれますか? お手伝いしますよ。」と視覚障害者に声をかけてみた。すると、一応「ありがとう」とは言ってくださったのですが、どう考えても、私が誘導するよりもご自身1人で移動された方が早いくらい、慣れた道だったらしく、肘を貸している私の方がついて行くのが必死だった・・・。
 その時思ったんです。「きっと彼女は、私の声かけを断りきれずに、受入れてくれたが、これは結果的に親切心の押し売りだったんだな~」と・・・。

 でも、そこで躊躇することを選ばないでほしいのです。
 サポートを断られたとしても、その方は、「その時たまたまサポートが不要」だっただけなのです。そんな時は「困ってなくてよかった~♪」と思っていただきたいです。

 こちらも『勇気を出して』声かけをするわけですが、そんな『勇気』とは比べ物にならないくらいの『勇気』を出して、様々なサポートが必要な方々は外出し、社会参加されています。私の視覚障害者の友人は言います。「障害者が外出するのは、いつも命がけ!」と・・・。そんな人たちがいること、是非知っていただきたいです。

 と同時に、もう1つ知っていただきたいのは、【障害者だっていろんな人がいる】ということです。健常者(という括りは嫌いなのですが、あえて書きますと…)にもいろんな人がいます。優しい人、喧嘩っぱやい人、文句ばかり言う人、ワガママな人、反抗期の人・・・それと同じです。障害者=全員仙人のようにいられるわけがありません。なぜならみんな同じ、人間ですから、何も変わりはありません。
 その時たまたま機嫌が悪いかもしれない、反抗期かもしれない、体調が悪いかもしれない、、、色んな理由があるのです。そう思えば、躊躇する必要もなくなるかと。

2.サポートが成功するチャンスは必ずあります!

 そんな失敗も何度か繰り返すと、実は自分の中で素晴らしい変化が生まれます!
 どんな場合が「サポート必要」で、どんな場合が「サポート不要」なのかが、わかるようになってきます。私自身の経験から、これが何より大事だと感じています。ようは、経験値=経験の積み重ねしかありません!

 サポートが必要な方への声かけや、関わりの経験があればあるほど、必要なサポートをスマートに当たり前にできるようになります♪ これって、メチャメチャカッコいいことだと思うのです。ぜひ、そんなチャンスを、積極的に増やしていただきたいと思います。
 2020年には、日本人全員が、そんなカッコいい人間になっていられたら良いな~と・・・

3.「全ての人が安心できる社会作り」の具体的なイメージ

 今回の報道を受け、当会のFacebookでも情報発信をさせていただきました。そこに、多くのコメントをいただきました。多くの方が「『お手伝い必要ですか?』と当たり前に声かけできるようになりたい。」と書いてくださいました。まさにこれこそが「全ての人が安心できる社会」なのだと思います。ここから、確実に社会は変えて行けると信じています。

 当会からは、引き続き、当事者である補助犬ユーザーの声を正しく発信し続ける努力を続けたいと思います。今回の事故に関して、とても冷静に大切なことを書いてくださっています。
【トロンボーンソリストで、2代目盲導犬アリエルと暮らす鈴木加奈子氏のブログ】

 ただ、残念なのは、当会のFacebookやブログを読んで下さる方々は、関心を持っていただいている時点で、すでにカッコいい人間になれる素質のある方々です。今後の課題は、このような問題に関心の無い、無関心層の方々にどう伝え、どう理解いただけるのかが勝負です。

 是非、皆様の周りにいられる1人でも多くの方に、『全ての人が安心できる社会作り』に参加いただけるよう、伝え続けてください。

 特に、子ども達には、そのようなことを知るチャンスを提供しない限りは、なかなかきっかけがありません。当会としても、【補助犬】を通した教育を提供することで、子ども達に素敵なチャンスを増やして行くような活動を、もっともっと広く展開していきたい! と強く思っております。
 是非とも、応援よろしくお願いいたします!

ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より

 当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
 皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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