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私はこうして合格しました!

国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。

第60回 Dさん

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動機について

 まったく別の業界からの転職組です。大学卒業後、技術職として自動車メーカーに就職し、1年ちょっと働くなか、周囲に休職者や離職者が多いことに気づかされました。職場の特性もありそうですが、多くはうつ病でした。過労だけでなく、伝わってくる話からはむしろ人間関係やその対処能力から発しているようでした。そんな折、地元で就職した友人が交通事故で亡くなったと実家から連絡を受けました。大親友でした。いてもたってもいられず帰ってみると、その交通事故には不審な点が多く、彼を知る人びとからは自殺だったと聞かされました。ありえないと思いました。熱い男で、周囲への気配りができて、スポーツができて、本人は恥ずかしがると思いますが太陽のような奴でした。しかし、交通事故へ至っていく経過を知るにつれ、彼の中でなんらかの精神面の汚染が進んでいったことがうかがわれ、私には何よりそのことがショックでした。そんなことはないはずだと思い、彼とひと言の言葉を交わすこともなかった空白の1年半を悔やみました。

 職場に戻ると、直属の上司がおかしくなっていました。気分の変調が日に日に激しくなっていて、そういえば以前は不眠だと言っていました。その上司からとんでもないひと言を浴びせられたときのこと。瞬間的に怒鳴り返した上に、手を出してしまっていました。このとき、実は当の私自身が心を病み始めているかもしれないと思い、仕事も何かつまらなくなり始めていて、あまり深くも考えもせずに退職しました。今振り返ると、この短絡的な思考そのものが本来の自分からは考えにくく、まだ目に見える形ではないにしても影響を受け始めていたのかもしれません。いや、実はそれ以上に、実家がそれなりに安定した家業を営んでいて、辞めたって困らないと思えたのが安易さに拍車をかけたことのほうが大きかったとは思います。ともかく退職をし、これと前後する時期から頭に浮かぶようになっていたのが、人の心に関係する職への好奇心でした。

精神保健福祉士について

 ひと言で人の心といっても、これに関係する分野はたくさんありました。精神科医からそれこそ占い師まで、心がターゲットになる分野はたくさんありすぎて、どこから考え始めればよいのかを考えるところから始めなくてはなりませんでした。カウンセラーなどの中には、それが資格名なのか何なのかよくわからないものもあって、怪しいのか怪しくないのかを判断するところから必要でした。そんななか、「国家資格」でインターネット検索すると、「精神保健福祉士」が出てきました。心理系の専門資格より受験要件を満たしやすかったのと、よくわからないだけに国家資格とされているお墨付きは大きかったのと、2つが決め手になりました。資格の紹介文には、相談業務とか生活の支援とかソーシャルワークとか耳慣れない言葉が出てきましたが、総じては心を病んでいる人にかかわる専門家だろうと受け取れました。最初に「精神保健」の語を見たとき、なんだか古めかしい名称だなと思ったことを憶えています。資格を取ってこんな施設で働きたいといったビジョンも特段なく、ともかく資格試験の受験をしてみようと思い立ったわけです。

試験勉強について

 それでは、試験勉強の話をします。本コーナーのバックナンバーを見ると、さすがに多くは精神保健福祉士として活動されている方の記事だけあって、資格取得を目指す当初の志がしっかりされているなと感心します。私でいいのかなと思うところはありますが、この原稿の依頼をくれた編集のYさんによると、精神保健福祉士の受験者が本格的に勉強を始めるのは試験前年の秋後半、11月や12月だから、この時期に公開する記事はできるだけしっかりした勉強法が載っているものにしたいとのこと。そんなこと言われたって私は困りますが、自分がやったことを紹介するだけですから、そう思ってお伝えしたいと思います。

 その前提として、私は勉強が好きですし、得意でした。中学受験で進学校に入り、早くに理科系を専攻と決め、学内で席次を争い、高校受験、大学受験と進みました。特別に優秀ではなかったと思いますが、試験やレポートで評価される文化の中に身を置き、落ちこぼれないための努力という点のみで、一日5時間は勉強をしていました。部活を終えて帰宅後に3時間、早朝に2時間が習慣化されていました。年数では13~14年くらいでしょうか。勉強の蓄積があると、そこから自分なりに最善と思える対策というものが自然とうまれてきます。ご紹介するのは、勉強でいろいろ試してきた人間が精神保健福祉士の資格を取得しようと考えたとき、ではこうして進めようと採った方法です。一部分になりますが、参考になるものがあればと思います。

最初に全体をみる

 まず、精神保健福祉士の資格を取得するために必要となる知識の総体を確認したいと考えました。私が入学したのは専門学校の通学2年コースで、入学手続きなどをする前に教科の構成やその内容を一通り調べ、どの程度の難度を持った試験なのか、どの程度に力を注ぐと合格できるのかなど、大きな見積もりを行いました。合格率は60%以上、共通の科目がある社会福祉士の合格率は20%程度、この差異の理由は教科を見比べるだけではよくわからず、当時は受験者の数と受験者の質によるものと考えました。福祉分野の資格の社会的な評価も考え合わせると、それほど難しい試験ではなさそうに思えました。難しい試験かもしれないが、そのときは見方を修整して取り組み方のレベルを上げればよいと考えました。

 専門学校の入学が決まると、授業で使用する教科書が事前配布され、関連図書の案内もされました。教科書は冊数が多く、それなりの分量がありましたが、2年先の試験の大元がこれで全部であるはずはないと思い、教務課に問い合わせました。福祉系の大学など専門課程を設けている各学校でどのような教科書が使われているかを聞くと、中央法規出版で発行している精神保健福祉士の養成講座というシリーズが標準テキストであると確認できました。その学校では、この養成講座については科目によって購読が推奨される仕組みになっていました。

 すぐに全巻を取り寄せ、専門学校の入学前に一通り目を通しました。当初に感じたのは、科目によって科目独自の内容のものと、科目は違っても似た分類に属するものがあることでした。なぜそのような分け方がされているのか知りたいと思いました。それと、共通科目については、科目によって国家試験では出題を予測しづらい問題が出るのではと感じました。社会保障や保健医療サービスなど、国の施策や社会情勢が反映されやすい科目は基本となる知識を元にしながら、よりビビッドな教養を問うほうが問題にしやすいし、この科目で試される知識を測定もしやすいと想像しました。それなりに難しい問題が出題されうるとも考えました。

自分の探究心を刺激する

 そうした全体への読みを行った状態で、通学が始まりました。授業はなかなか楽しく、このあたりは教員が学生の興味関心を惹くためのさまざまな工夫が講じられていると感じました。学生は私と同年代と思われる比較的若い年齢層が多く、すでに福祉の職に就いていると思われる年配の方がまばらにいるようでした。授業について少し手厳しいことをお話しすると、もう少し周辺の事情まで含めて話してくれると、より身に付いた知識になってくれると思いました。たとえば、それが起こった時代背景として何があって、そこと関係するこの出来事がこんなふうに作用して一連の経過にこんな影響を与えているというようなつながり、構造としてとらえるための知識や情報です。それらがあると、想像する楽しさが出たり、基本がわかっている者にとっては応用力が養えたりと、学習に広がりが出てきます。ただし、教科書に書いていること以上の踏み込んだ内容にふれると、それが公式の見解から外れていたときなど、教員には教えた責任が問われることになるでしょうし、難しいのかもしれません。ご自分が精神保健福祉士の仕事をしていたときの事例が紹介されるのは良し悪しで、そこに私見が先に立った情報が付加されると逆に弊害になってしまいます。それが感じられることもありました。

 レポート作成や学内のテストは苦になりませんでした。レポートは課題に応えるだけでは何か物足りないと思い、自分がそのように考えた根拠をさまざまな文献から集めたり、そこへ独自の分析を加えたりと、たとえそれが的外れであっても純粋な探究心からそれが出てきたとする志向性だけは明解にしておき、かなり自由に進めました。失礼ながら、教員がご存知ないと思われる文献や民間が行った調査研究なども援用して、独創的かもしれないが改めて読むと自分でもこじつけにとれる論も張ったりしていました。私がこういうことへ積極的に取り組んだ理由は当然あり、それはこうしたことにチャレンジすることで、どのような形にせよ、自分自身のそのテーマへの習熟が進んでいくと体験的に知っていたからです。調べて、自分なりに考えて、それを示すということにより、自分自身のコンディションを引き上げていくことを大事に考えました。

目標の特性に対応させる

 このようにして、学校で得ていく勉強は至極順調に進んでいきました。先に紹介したように、実家は家業を営んでおり、その仕事をごく軽めでも手伝うという一事で、実際には無職状態であることを自然にカムフラージュしてしまえる環境には支えられていたと思います。両親はなぜか私のことをあまり心配しておらず、むしろ実家に戻ってきてくれている今を喜び、精神保健福祉士という資格取得を目指しているということについても、息子はまた何か難しいことを始めているようだくらいにしか思っていないようでした。何をしているわけでなくても、かけらほどの疑いもなく信用してくれていると感じられるのは、子としてうれしいものです。

 さて、試験対策の勉強法です。私が経験してきた進学受験、また入学した学校での学業がまさしくそうであったように、試験やその後に必要とされる学業というものは、その特性にきちんと対応した形で行うことがいちばん重要です。いわゆる難関校の受験を経験されてきた方は同じように感じることであろうと思います。基本的に試験対策は、ねらう学校によりまったく異なります。そのときに対策の王道となるのは、やはり過去問です。それだけでは足りません。しかし、まずここは通って行くことが必要な道です。

 というわけで、精神保健福祉士国家試験の「過去問」は、試験対策というステージで勉強を行っていくときに初めに取り組むテーマであると私は考えます。精神保健福祉士の資格取得を考えたとき、初めからそれは組み込んでいました。資格取得だけが目的なら、極論してしまうと、過去問から始めて、過去問に特化してトレーニングを積んで、過去問だけは完璧になって、そのあとにそれのみでわからないところ、過去問で養った知識では想像もできないところだけを補えば、この精神保健福祉士の試験については合格できると思います。こんなことを言ってしまうと、それまでの勉強は必要ないのかと思われかねないですが、試験に合格するという一点で言えば合格できるはずです。勉強が極端に苦手で赤点以外採ったことないとか、人生で文字をほとんど読まずに現在に至っているとか、そのようなことがない限りは、それほど難しい試験とは思いません。ここまでに紹介した内容を読まれて、自分じゃ今からでは間に合わないと思った方がいたと失礼ながら推察しますが、大丈夫です。11月、12月からでも上手に進めれば間に合います。

過去問の取り組み方

 過去問にはできれば早い時期に取り組むのが理想です。国家試験のイメージを早い時期に持てるからです。やり方はいくつかあり、本コーナーのバックナンバーを拝見すると、どなたも効率的・効果的な方法で目標を達成されているようです。そこで、ちょっと変わった方法をご紹介します。編集担当のYさんから、ほとんど勉強していない人でも自信を失わずに取り組める方法がいい、それで試験日までに間に合う方法がいいと注文されているので、そういうことでご紹介します。

 中央法規出版の過去問解説集で説明します。まず、ページ上部の問題の部分を紙で隠してしまいます。そのうえで赤シートを使って解説部分を隠し、○×が見えない状態にします。そこまでしたら、問題を見ずに解説だけを読んでいきます。問いの内容がわからず、○や×もわからず、問題によってそれが誤りである理由が書かれている。その後ろに補足的に解説が書かれているものも書かれていないものもある。これらを通読します。読み続けるストレスは大きいと想像します。しかし、構わずに読んでください。真面目に読んでほしいところですが、問いの内容すらわからないのに真剣に読めないし頭にも入ってこないという方は、その状況での本気ということでけっこうです。読み終わったら次のページへ移り、読み終わったらまた次のページへと進めていき、1科目分を終えます。そこまでやったら、1科目分の問題を解いてみます。

 さて、どうでしょう。不思議に思う方が少なくないと想像します。各問題の選択肢の文章を読んだときに、数分~数十分前に読んだ解説の内容が、「あれ?さっき出てきたあの内容とつながってくる」とよみがえってきます。全部ではないと思いますが、これほど多くの情報が実は記憶の中に残っているんだと気づかされるはずです。断片でも問題文を見せられないと思い出すのは難しいと思います。でも、問題の文章を読むことでスイッチが入り、先ほど読んだ解説へアクセスできます。

 通常、過去問というものは、解説部分を初めは見ずに、問題を解くことに集中し、答え合わせのときに読むということをします。しかしこの場合、解いた人の思考は合っているか間違っているかに比重が置かれ、解説の内容を頭の中にインプットすることは二義的なものに後退しているように思います。私の推論は間違っているかもしれません。しかし、頭に取り込みたいことをできるだけ効果的に取り込もうと考えたとき、この方法はかなり使えます。第一に、過去問を解く最初のトライでそれなりの得点をたたき出せるのですから、気分だっていいはずです。

 さて、大事なのはその次です。答え合わせをして、そこでも解説文章を読むことになりますが、一通りそれをやった後に、まったく同じ手順で1科目分を行ってください。すると、解説の文章を読んだときに、今度は問題文そのものを想起できるものが出てきます。この問題の選択肢はこういう文章だったと記憶に再現されてきます。数は少ないと思いますが、この現象を体験できると格段にその問題への理解が増します。

 ご紹介した方法は、事例問題など直接的には馴染まないものもあります。そうであっても、やってみると、これを問いに出してくる元の設計図(事例)はそもそもどんな内容だろうとの想像が働きます。それがあると、実際にストーリー(事例)を読んだときのあらすじの頭への入り方が違ってきます。情報を与えられる前に、想像してみる・考えてみることの威力がいかに大きいかを感じてもらえるでしょう。

合格できる試験と思えること

 試験対策の勉強法については、過去問の取り組み方に絞ってお伝えしました。あまりに長いのもなんですので、このあたりで収めたいと思います。国家試験を受けたときの感触としては、想像していた以上に簡単でした。正確には、努力を怠らずに自分にとって簡単なレベルまで持っていったというところでしょうか。繰り返しになりますが、精神保健福祉士の国家試験は、本当に取ろうと思って準備して受けるのであれば、それほど難しい試験ではないと思います。こういうものにチャレンジするときにだめだろうなと思っていたら、だいたいだめなはずで、となると大切なのは合格への手応えを持てることです。先にご紹介した方法は、勉強がうまく進んでいない方、成績が上がってこない方に特効する可能性があります。騙されたとは思わずに、ぜひ試してみてください。

 私は今、精神保健福祉士の資格を活かすという意味では、障害者雇用に取り組み始めたある企業の支援員を不定期でボランティアとして行っています。もともと、資格を取ろうと考えたきっかけが就職した職場のメンタルヘルス事情にありました。精神科病院や就労関係の事業所でソーシャルワーカーとして働くのでなくても、この資格はとても有用で大事なものであるのだと、資格を取った後に感じています。大きな可能性を持った資格だと思います。皆さん、がんばってください。

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